少年が、此方を見ていた。
私は本を読んでいた。
そこが何処かは分からないが、私は本を読んでいた。
ふと、少年が口を開いた。
「いつまで読んでいるの」
「そんな本」
私は黙ってページを捲った。
はて。
本には何が書いてあったか。
心踊る冒険であったか。
胸を擽る青春であったか。
恐ろしい闇夜であったか。
もしかしたら、それは活字でなかったのかもしれない。
鎌を持つ賢明な死神か。
瓶入りの可愛い悪魔か。
眠りにつく清い姫君か。
とにかく、私は本をページを捲った。
読んでいた。
すると、少年が近付いて。
「ねえ、聞いているの」
「いつまで読んでいるつもりなの」
と、舌足らずな声で言った。
私は、黙ってページを捲った。
少年は不思議そうに、言った。
「面白いの、それ」
私は本から初めて目を逸らした。
そして、少年をじっと見た。
金髪で、灰色の目をした美少年だ。
「面白いよ、とても」
私は短く言った。
「そう。なら、いいや」
少年も短く言った。

そして、私は夢の中の読書を続けた。