(その1から続き)

「へえ、撃たれちゃうのか。怖い怖い」
「侵入者発見!!男子粒子反応アリ! 破壊!!」
「わああああ!」

 紫蘭の銃から放たれた銃弾が男の頬を掠め、背後の石壁が砕け散った。
 男は顔面を蒼白にして叫んだ。

「本当に撃つなよ! 殺す気か!?」
「ふん。話を聞いていたのに、わざわざ姿を現すから、殺して欲しいのかと思ったぞ」

 紫蘭は不敵に笑うと、へたり込む男を見下ろしながら銃を突きつけた。

「何しにきた、ファルス」
「いいじゃないか、遊びに来たって。潤いがないんだよ、男子寮は」

 クランは男子寮と女子寮に分かれている。
 繭期は人間の思春期とは逆に性的なことに対する意欲は減退しがちだ。しかし、何せ本人たちも自分を制御できないのが繭期である。各家庭から預かっている子どもたちの間で、何かの『まちがい』を起こすわけにはいかないのだろう。
 竜胆も実際に男子寮を見たことないが、恐らく似たような暮らしをしているはずだ。

「確かにむさ苦しい男どもが集まった臭い動物園のような場所にいるのは、さぞかし苦痛だろう。この甘い匂いがする楽園に来たくなる気持ちはわからんでもないが、私の可愛い天使たちに手は出させんぞ」

 紫蘭が撃たないのを見て、苦笑しながらファルスが立ち上がる。

「ムチャクチャ言うねえ。だいたい、女の子はキミのもんなのか?」
「無論。可愛い女の子が戯れる姿は、見るだけで心が癒やされるものだ。このクランを作った御館様は趣味が良い。お会いしたことはないが、その点では気が合うと思うぞ。ただし、男子寮も作るという最悪の罪を犯しているからな。その好感度も相殺はされる」
「あー、そう」

 ファルスが何か言いたげにしていたが、諦めたようにガックリ肩を落とす。そこまで男の存在を否定されると立つ瀬がないのだろう。

「冗談はともかく、だ」
「どこまでが冗談だ?」
「聞け」

 紫蘭の声色が険しくなり、ファルスはギョッとして口をつぐんだ。竜胆も驚き、思わず身体が硬直する。

「他の女子もだが、竜胆にだけは、絶対に近寄るなよ。会話をすることも許さん」
「えー」
「これは警告だ。次は弾丸をお前の脳天に撃ち込む」
「……」

 あまりにも一方的な通達に、さすがに気色ばんだ表情になるファルスを見かね、竜胆が恐る恐る声をかける。

「紫蘭、何もそこまで……」
「ダメだ。それとも竜胆、おまえは平気なのか?」
「……ううん」

 平気かと言われれば、そうではない。のだが、しかし。

「なんだ、君たちは付き合ってるのか?」

 ファルスが顔をひきつらせながら、それでも軽口を叩く。

「そうだ。私の竜胆だからな」

 ニヤリと笑う紫蘭に、竜胆は赤面して慌てた。

「ちょ、ちょっと、紫蘭!? 何を言い出すのよ!」
「あら、こんな道の真ん中でおしゃべりしてるの?」
「え?」

 虚を突かれ、竜胆が振り向くと、たおやかな黒髪の少女が優しく微笑んでいた。

「あ、スノウ……さん。それに」
「あ、ごめんねー、話の邪魔しちゃって。もー、スノウったら、人が集まってるとすぐ首をつっこむんだから」
「うふふ、だって、楽しそうだったから」

 スノウと同じく長い黒髪をなびかせた涼やかな目の少女が、スノウの袖を引っ張ってたしなめる。それを見て、紫蘭は少し苦々しげな表情になる。

「リリーとスノウ。我がクランきっての才媛コンビのお出ましか」
「そんなことないわ。紫蘭さんの方がずっと優秀だもの」
「止めろ。おぬしに言われても素直に喜べん」
「うふふ」

 ふてくされる紫蘭に、微笑むスノウ。
 スノウは黙っていると凄みさえある美人だが、物腰が柔らかくいつも微笑んでいて、また人の世話を焼くのが好きなので、クランでも一、二を争うほど人気がある。また、人と関わるのが好きで、毎日のように各グループのお茶会に参加しているようだ。口数が多い方ではなく、おしとやかに会話を聞いて笑っているだけなのだが、それが本当に楽しそうで、印象に残っている。

「私は紫蘭と竜胆の二人が並ぶ方が絵になると思うな。いつも目立ってるもん」
「やめてよ、リリー。私は……ちょっと背が高いだけ」

 竜胆は前向きにその言葉を受け止めることもできず俯いた。女子にしては少し高い身長は、竜胆にとって決して美点ではなかった。

「背の話じゃないよ。竜胆は綺麗だってこと」
「あ、ありがとう……」

 リリーはいつもまっすぐだ。そして優しい。
 良いことを良しとし、悪いことを悪しと判断して行動できる子だ。それはそれで胆力がいることである。

「いやー、すばらしい。女の子の会話は華やかだなあ。どう?一緒に5人でお茶でも飲もうよ」

 ファルスが両手を広げながら、わざとらしく割って入ってきた。紫蘭が犬でも追い払うようにシッシと手を振る。

「結構だ」
「つれないねえ」
「では、我々は遠慮する。おまえの本命は、どうせリリーとスノウであろう。貴様のお気に入りだからな」

 ファルスは毎日のように女子寮に顔を出し、手当たり次第に女の子に声をかけているが、結局のところ、リリーとスノウにちょっかいを出しにきている印象だ。
 ファルスは挑発に乗るでもなく、満面の笑みを浮かべながら、リリーとスノウの間に身体を滑り込ませて、二人を片方ずつの手で抱きかかえるように肩に手を置いた。

「ははっ、こんなに可憐で美しい二人だ。当然だろ」
「あらあら」
「ギャー!馴れ馴れしい!」
「いってえー!蹴るなよ!」

 さして嫌がるでも喜ぶでもないスノウと、悲鳴を上げてファルスの太ももに蹴りを入れるリリー。こういうやり取りもいつものことだ。
 
「はぁ、バカバカしい。行こう、竜胆」
「え、ええ……」

 言われるままに紫蘭に従い、少し離れたところで振り返ると、ファルスは、三人はこちらをもう気にするでもなく、和気藹々と騒いでいた。なぜだか疎外感のようなものを感じ、胸が締め付けられる。

「竜胆?どうした?」

 立ち止まった竜胆に気づき、紫蘭が訝しげに尋ねてくる。竜胆は、何と言っていいかわからず、代わりにまったく違うことを口に出していた。

「紫蘭は、あの二人のこと、あんまり、好きじゃない? とても可愛くて、華があって……。二人とも、理想の女の子でしょう」
「だからだ」

 紫蘭は吐き捨てるように言った。

「嫌いではない。可愛い女の子は好きだからな。だが、あの二人は華がありすぎる。あいつらがいると、私の存在が霞む。主役にはなれない。だから……、面白くないのだ」

 あまりにも身も蓋もない物言いに絶句する竜胆。しかし、真理ではある。

「竜胆にはわからんだろう」
「ううん」

 竜胆は首を振った。

「わかる、気がする。……私もあの二人が眩しいから」

 この気持ちは羨望なのか、嫉妬なのか、それとも。
 竜胆は、遠くにいる三人の姿をしばらく眺め続けた。

(その3へ続く)
「で、君たちはどうするの?」

 ファルスは笑いながら、からかうように尋ねてくる。

「僕を殺すかい? ムダだとは思うけど」
「そんな! 殺すだなんて……」

 血なまぐさい言葉に、竜胆は顔をしかめて否定する。血盟議会の幹部の家で育てられた箱入りのお嬢様だ。お屋敷の箱から、クランという違う箱に来ても、その育ちの良さは失われるものではない。
 
「ふん、私はムダなことはしない主義だ。それで? では、貴様は我らを殺すのか?」

 紫蘭が不敵にファルスを睨み付ける。右手に握ったマスケット銃の撃鉄を起こす音が竜胆の耳にも届いた。

「やめて……紫蘭……」

 一触即発の緊張感に声が掠れる。紫蘭も精一杯突っ張ってはいるが、顔を強張らせて余裕はなさそうだ。自分の虫の羽音よりも小さな声など、耳に届いてはいないだろう。
 このままでは万に一つも勝ち目はない。

(ううん、勝つ必要はない。それに私は……)

 竜胆は全身を震わせながら、半ば無意識に、右手を挙げた。

 
 【数日前】
 
「今日もしみったれた雨が降ってるわね。あー、晴れてたらお弁当持ってピクニックにでも行くのにー」
「紫蘭。クランの外に出て、人間に見つかったらどうするの」

 竜胆が軽くたしなめると、窓から身を乗り出していた紫蘭が振り返って、げんなりとした顔を見せつけてくる。

「わかってるのだ。もー、竜胆は真面目じゃのう」
「紫蘭が真面目じゃないだけよ。ううん、あなただけじゃない。このクランの子はみんなのんびりしすぎなのよ」

 繭期、人間でいう思春期を過ごす12歳~18歳ぐらいまでの彼女たちは、若さだけを持て余し、日がな一日おしゃべりをしたり、お茶会をしたり……とにかく生産的な活動をしている者は極端に少ない。本を読むなんてことだけでも、優等生の仲間入りだ。

「そうじゃなあ。一日中、寝て、食べて、遊んでるだけでは、そりゃ締まりもなくって当然だ。いくら繭期は精神的に不安定な時期だからといって、保育園ではない。学校のように授業があった方がいいかもしれんな」

 指導者もおらず、上下関係もなく、では規律も何もあったものではない。自由とは洗練された規律の上にこそ成り立つ、と考える竜胆にとっては、緊張感のなさがストレスになる時もある。自然とため息が出た。

「ふぅ……自分が何でここに来たかすら忘れてる子もいるからね」
「あはは、繭期だからってそりゃシャレにもならん」
「笑い事じゃないわ」

 そういう竜胆も同じ繭期を『こじらせて』ここに来たので、他人のことをとやかく言えるわけではないのだが。
 
「ま、いい。私たちだって、遊んで時間潰すしかない。散歩でもしよう」
「そうね。身体も動かさないと」

 竜胆は、ずっと部屋にいても苦痛に感じない性質ではあるが、しかし、一日中動かないでいては、それこそ若くしてボケるか寝たきりになってしまいそうである。サッサと階段を下りる紫蘭の後について、クラン内の広場に出た。
 すると、タイミング悪く、赤みがかかった茶髪で短髪の少女が大声で喚きながら、目の前に倒れ込んできたので、竜胆は悲鳴を上げて飛び退いた。
 
「な、なに?」
「あーーーーー!もぅ、退屈で死にそうだーーーー! と言ったそばから、裏返って、大文字焼き!」

 腕と足を広げて『大』の字になった少女を、追いかけてきたふくよかな少女が怒鳴りつける。

「ちょっとカトレア!そんなところで倒れたら邪魔になるでしょ!」
「わー、踏んじゃえ踏んじゃえー」

 ぼんやりとした目の少女が気のない声でけしかけるのを聴いて、カトレアと呼ばれた子が慌てて起きあがる。

「え!? ローズに踏まれたら、私ぺしゃんこになっちゃう!」
「まさにその様は、国道で車に牽かれた蛙……」
「なるかー!ナスターシャムも煽るなー!わたしゃダンプか!」

 いきなり丁々発止のやり取りを繰り広げる三人のノリに戸惑う竜胆。最近入った新人たちだが、最初からずっとこんな調子だ。クランの規律のなさを代表するかのような子たちである。

「あの……もう少し、静かにできませんこと?」
「あー、竜胆先輩っすね、ちーす。いやー、もう退屈で退屈で……あああ!」

 カトレアは頭をかきむしりながら、身体を回転させた。

「退屈すぎて、いきなり竜巻旋風脚!」
「ぐはっ、何すんじゃ貴様ー!ドッコイ!」

 カトレアの回し蹴りをすんででかわしたローズが怒りで顔を真っ赤にして脳天から飛びかかる。

「おお、スーパー頭突きだー。じゃあ、私はヨガファイヤ~!」
「うぉちゃあーー!って、なんで炎出せるんじゃおまえ!ヴァンプにそんな特殊能力ないわ!」
「って、あー、もう、うるさいわ!!」

 バーン!と、突如高らかに響いた銃声に、さすがにずっこけ三人組も動きを止める。

「うあわわわー、この人、撃ったー!!」
「空砲よ空砲」

 紫蘭は悪びれるでもなく、銃の先から出る煙を息で吹き消した。

「話が進まないだろう。もうすぐ薬の時間だ。部屋に戻りなさい」
『……は~い』

 明確な上下関係はないとはいえ、年長者の言うことを渋々聞くぐらいの分別はさすがにあったらしい。3人は「あんたのせいよ」と互いに責任をなすりつけあいながら、宿舎へと去っていった。

「紫蘭!また銃なんか持って!」
「いつ人間に襲われるかわからん。それに、男子寮から女子寮に侵入してくるような不逞な輩がきたら、これで撃退してやるのだ。竜胆みたいな可愛い子いたら、性欲が減退してる繭期の男子だって興奮が収まらぬだろう。罪な女だ」
「もう、下品なこと言わないで!」

 竜胆は怒って紫蘭を睨むが、むしろニヤニヤと笑うばかりで、何の効き目もない。長い付き合いである。一見無愛想で表情も言動も硬く、厳しい印象を持たれがちな竜胆だが、実際は怒ってもまるっきり怖くないことは、悲しいかなきっちりと理解されてしまっている。

「へえ、撃たれちゃうのか。怖い怖い」
「だ、誰!?」

(その2へ続く)
リリウムネタバレ感想シリーズ第4弾。

昨日のTRUMP解説を見てもらえれば



こんな誤解もなくなると思います。
思いもよらぬところで泣いてるのはTRUMP観た人だよ!w


さて今回は昨日の記事で書き漏らしたところを少しだけ。


<リリウムと「TRUMP」の共通点>

★イニシアティブの説明

リリウムでイニシアティブの説明をする時に

「友だちを噛んではいけません」と
竹内(カトレア)と石田(チェリー)が実演して

チェリー「犬になれ」
カトレア「わん!」
チェリー「お手」
カトレア「わん!」
チェリー「(何か指令を出す)!」

という流れがありますが、

「TRUMP」でも
ティーチャー(先生)の2人が同じように実演します。
こっちも最初は「犬になれ」で、あとの無茶ブリが少し長めです。


★ドブネズミの臭い
妄想姫マーガレットがマーガレットに向かって言う「ドブネズミの臭いがするー!」

「TRUMP」では主人公のソフィ・アンダーソン(ファルス)がダンピールであり、
貴族のアンジェリコから「ドブネズミの臭いがするんだよー!」と
ボコボコに殴られるというシーンがあります。

ヴァンプからすると、ダンピールはドブネズミぐらい不快な臭いがするということですかね。

マーガレットはファルスにも言ってます。
なるほど、ファルスが元・ダンピールであることを見抜いているのでしょうか。

……あれ? では、チェリーにも「ドブネズミの臭いがするー」と言っていたのは?

単なるマーガレットの妄言で深い意味はないのか、
それともチェリーも……?

話がややこしくなるから
「マーガレットの言うことは気にしちゃダメ」なのかも。


★「我は守護者なり」
リリウムの劇的なシーンの一つ、

御館様とクランの秘密を守ろうとする紫蘭
過剰な執着でリリーを守ろうとするマリーゴールド

二人が交差しながら宣言します『我は守護者なり!』


「TRUMP」では、
ファルスの友・ウルの兄であるラファエロが
弟を何があっても守ろうと一人誓うシーンがあります

「おまえは俺が守ってみせる 
・・・我は守護者なり」


★アレンとクラウスのダンスシーン
 ファルスとスノウがダンスを踊るシーンがあります。

 妙になまめかしいこのシーンですが、
 「TRUMP」でもダンスシーンがあります。

 TRUMPであるクラウスが、100年前にアレンに完全に惚れたシーンであります。


★抱きしめて噛みついて(未遂)
マリーゴールドがリリーを自分のものにしたいあまり、
抱きついて、噛みついてイニシアティブを握ろうとするシーン。
結局、ファルスが「あぁ~貧血がぁぁ~」といきなり入り込んできてそれは阻止されるわけですが

TRUMPでも
ウルがソフィを「僕がキミを守ってあげる」
と抱きしめてから噛もうとして、
クラウスが転びながら入ってきて邪魔をするシーンがあります。

クラウス「あぶないところでしたね。ウルはあなたを噛もうとしてましたよ」


★その他
ファルスとスノウが手を繋いで逃げるシーンと
ソフィとウルが手を走って逃げるシーン

ファルスがスノウを刺したマリーゴールドを、怒ってイニシアティブで燃やして殺すシーン
クラウスがソフィを殺そうとしたラファエロを、イニシアティブで燃やして殺すシーン

なども似てますね。

あえて類似点を作って、両者が共通した世界であることを示したのと
TRUMPファンへのサービスなのでしょう。


<その他感想>
・TRUMPはやっぱりギャグが女性ファン向けですね。
 リリウムは、逆に少し年齢層高めの、末満氏と同じぐらいの男性向けのネタが多い。
 ドラクエネタとか。

・ガ・バンリのヴァンパイアハンターの戦闘力がそれほど活かされなかったのが残念。
 やはりハンターは男子的には燃えるキャラでありますw

・ミュージカルと演劇の違いを強く感じます。
 TRUMPは最初の方「あれ?歌わないぞ?」と本気で思ってしまったぐらいw
 最近のハロプロは大体ミュージカルですからね。

 リリウムのあの耽美で閉じた世界は、歌によっても構築されているところが大きい。
 歌はハロプロの強みであり、弱い部分をカバーできるところだから
 ミュージカル路線は続けて欲しいと思います。
はい、リリウムネタバレ感想シリーズ第3弾。

リリウムと同じ世界だという演劇「TRUMP」のDVDを購入して見ましたー。

初回特典豪華3枚組仕様でしたw

面白かった! 男性だけの演劇も新鮮ですやね。


それで「TRUMP」ファンからの解説、
「TRUMP」を先に見てから観劇した方からの解説はありましたが、

リリウムを先に見たハロヲタが
ハロヲタ向けに解説や感想を書いてみようかなと。



<リリウムの前に見るか、後に見るか>


先に自分のスタンスを示すため、
この論議を、先に片付けておきます。

気の弱い私ですが、あえて今回は断定しますよ。

結論から言うと、ハロヲタはリリウムから見るべきです。

なぜかというと、まず、大体こういうのは最初に見た作品への思い入れができて
それが主となり核となるものだからです。
後に見た作品はあくまで「続編」なり「外伝」なり「スピンオフ」なり「後日譚」なり
「アナザーストーリー」になる。

ハロヲタなら、ハロプロメンバーの作品を自分の核にした方がいいかもー?
というだけの単純な話です。


もう一つ理由があって、

「TRUMP」とリリウムはテイストが少し違いますし、

リリウムの幻想的な世界に存分に浸るのであれば、
裏設定は知らない方がむしろ良いと思うのです。


ファルス(ソフィ・アンダーソン)は、
「永遠の命を持った吸血鬼で、その寂しさに耐えきれず、
 あのクランという終わりのない少女庭園を作った」だけで成立している。

主人公はあくまでリリーでありスノウでありマリーゴールドであり、
あのクランで過ごすことを余儀なくされた、繭期の少女たちの物語なのです。

だから、これからする解説は『裏設定』と捉えてください。

<ギムナジウムとサナトリウム>

「TRUMP」の舞台は、リリウムと同じく繭期(人間でいう思春期)の
ヴァンプ男子を集めたギムナジウムです。

ギムナジウム、とは

>ヨーロッパの中等教育機関で日本の中高一貫校に相当する学校

寄宿舎で生活しながら勉強する。
イギリスのパブリックスクールとかですかね。

劇中でも、勉学やら剣術やら格闘術、色んなことを学ぶシーンもあり、
登場人物のうち3人が、ギムナジウムの先生です。


対して、リリウムの舞台はサナトリウム。

>長期的な療養を必要とする人のための療養所

こちらは「繭期」を半分ビョーキと捉え、治療の意味合いが強いのでしょう。
「お薬」と一応ある講義の時間以外は、かなり自由に動ける雰囲気です。
指導するお姉様2人はいますが、先生はいませんしね。


全然関係ないですが、サナトリウムとギムナジウムというと
「×-ペケ-」のこのネタを思い出します。





「TRUMP」のクランは「おとこ教室」か……(おい)


<ファルスとソフィ・アンダーソン>
リリウムのクランを作った、TRUMP・ファルス。

劇中で「ファルスは偽の名前で、本当はソフィ・アンダーソン」と明かされますが、

「TRUMP」の主人公は、このソフィ・アンダーソンなのです。

つまり、「TRUMP」の主人公が、リリウムの黒幕なわけです。


そりゃ「TRUMP」ファンが動揺するわけです。

「TRUMP」ファンがリリウムを見て、
ファルスがソフィ・アンダーソンだと気づくのかどうか。

想像ですが、演じる人が違う上に、
「TRUMPのソフィはファルスのキャラとは全然違うので、
非常に気づきにくかったと思います。

先ほどの、「TRUMP」とリリウム、どっちが「主」になるか、という話ともリンクするのですが、

ソフィ・アンダーソンとファルス、どれぐらい違うかというと、
例えるなら、スターウォーズ(古い?)

エピソード1が「TRUMP」で、アナキン・スカイウォーカーがソフィ・アンダーソンですよ

エピソード4がリリウムで、ダースベイダーがファルスですよ

時系列的にエピソード1から見た場合、
エピソード1見て、純朴だったアナキン少年が、
エピソード4見て、ダースベイダーになってたら
「どうしてこうなった!」じゃないですか

「TRUMP」の主人公ソフィ・アンダーソン、ひねくれてはいたけど、
生真面目な少年だったじゃないか。

それを理不尽な理由で不死のTRUMPになってしまったからって
今や年頃の少女たちがキャッキャウフフしてるのを眺めて
寂しさを紛らわしてる変態になってるとは!

そりゃ「TRUMP」ファンもショック受けますよ(そこじゃねえよ!)

・・・ジョークです。石を投げないで。
ダンピール差別、ダメ、絶対。

話が逸れましたが、この大きな変化こそが、
ファルスの狂気を表していると言えるでしょう。

あと、スターウォーズもエピソード4から見る人は4が最初だと思うし、
エピソード1から見た人は1が最初だと思うでしょう。
「TRUMP」とリリウムもそういうことです。互いに成立してる。


<ファルスはもともとTRUMPではなかった>

シンプルに一番の肝を書いちゃいました。

リリウム内でTRUMPはすべてのヴァンプの始祖と言われていましたが、
ファルスはもともとTRUMPではありませんでした。

ファルスは、単なるダンピールとして産まれたのですが、
本当のTRUMPに噛まれて、不老不死にさせられたのです。

しかも、本人は不老不死なんてまるで望んでいなかったというのに。

不老不死にはなったものの、真のTRUMPではないため、
実のところ、TRUMPより若干能力は劣るようです。

「TRUMP」では、TRUMPが噛んだ相手は不老不死にできました。
しかし、「TRUMP」劇中でもそういう場面があるのですが、
ファルス(ソフィ)が噛んでも、相手を不老不死にできないのです。

だから、リリウムでは「自分の血を飲ませる」という手段を使っていたのですね。
噛んでもダメだからと試行錯誤した、まさに研究結果だったわけです。


<【ウル】>

リリウムでは触れられませんでしたが、
ファルスは、実はリリウム内でいうところのマリーゴールドと同じ、
人間とヴァンプの混血・ダンピールです。

リリウムと同じく、ダンピールは嫌悪の対象であり、
ソフィ・アンダーソン(ファルス)はクラン中の生徒から疎まれ、
バカにされ、虐められ続けています。

しかし、一人だけ、エリートヴァンプであるはずの【ウル】という少年だけは、
ソフィと仲良くしてくれます。

【ウル】
聞き覚えのある単語ですよね。
そう、リリウムで、ファルスが少女たちに飲ませていたお薬の名前です。
後で判明するところの「自分の血液」ですね。

この【ウル】、ヴァンプ社会の貴族の息子なのですが、
TRUMPになりたい夢があります。

後にその理由がわかります。

彼はダンピールだったのです。

【ウル】は恐怖に怯えながら言います

「ダンピールは成人するまで生きていられるかわからない」
「僕はもうすぐ死ぬんだ!」
「TRUMPにならないと…ダンピールのまま死ぬなんてイヤだ…」

リリウムでは語られていない設定です。

マリーゴールドにも、その運命が裏で付加されていたとしたら、
さらに彼女の哀しみが増すわけですが……、ここは一旦おいておきます。


実際にソフィよりも早く身体を病んでいた【ウル】が
探し求めていた伝説のTRUMPは、
なんとクランの中にいたことがわかります。

先生の一人、ティーチャー・クラウスでした。

【ウル】は悲痛な声で懇願します。

「僕をTRUMPにしてくれ!」

しかし、クラウスは、かつての友だち……になりたかった男が人間との間に
残した子孫であるソフィ・アンダーソン以外、興味がなかったのです。

【ウル】はそんなソフィを憎み、襲いかかろうとさえします。

……個人的にはこの場面が、TRUMPで一番哀しかったかもしれません。

永遠の命と対極にある、この【ウル】の生きることへの渇望が、哀れな姿が、
ひたすら哀しいのです。

しかし、クラウスはソフィを噛みます。
不死を望んでいないソフィを。

クラウスが去った後、
ソフィは息絶えようとしている【ウル】を抱きかかえます。
TRUMPにしてくれと願う【ウル】のために、ソフィは【ウル】を噛みます。
しかし、TRUMPにすることはできません。

ソフィは叫びます「頼む、クラウス…【ウル】を助けてやってくれ!」

しかし、クラウスは来ません。

【ウル】は最後にこう言います。

「もし生まれ変わるなら…僕はキミになりたいな…」

ファルスことソフィ・アンダーソンが【ウル】と名付けた薬を少女たちに飲ませて
TRUMPを作ろうとしたのは、彼の願いをどんな形でもいいから
叶えてやりたかったのかもしれません。

何にせよ、この名前こそが彼との絆なのでしょう。


しかし、その【ウル】も
リリーにとっては忌まわしい存在に過ぎません。

ソフィはかつて自分が受けた理不尽で身勝手な不幸を
平気で他人に与えるようになったのです。

同じように身勝手に少女たちを巻き込んで
実験し、永遠の命を与え、都合で殺していく。

何千年も生きる孤独が、あのソフィをこうさせてしまった。
ソフィを知ると、ファルスがいかに狂ってしまった存在なのかわかります。

「TRUMP」ファンは、このソフィの姿を見たら、辛くて仕方ないことでしょう。

そして、リリーに訪れた不幸が、
あの暗闇に響く悲痛な絶叫の意味が、
より深く感じられると思います。


<そしてクランは再び作られる>

「TRUMP」の冒頭とラストは、かつてクランがあった場所で、
不老不死になった後のソフィ・アンダーソンが出てきます。

ラストで「クランが焼け落ちてから、4500年の時が過ぎた」と言ってます。

リリウムの時点で「僕が何年生きてると思ってるんだ!3000年だぞ!」と言ってるので、
リリウムはその間の話になるんですかね、一応。

4500年のうち、2000年~3000年の1000年がリリウム時代。

ソフィはずっとクランを覚えているのです。
自分でクランを作ってしまうぐらいに。


・・・結局、TRUMPのあらすじとファルスの話に終始してしまいました。
他の話は次の記事にて。
リリウムと同じ世界観の舞台「TRUMP」もクランの話なんだね。
DVD買うのでまた見たら感想書きます。

でも、自分はリリウムだけ先に見て良かったかな。
基本は単体で作品が楽しめるかどうかで、
間違いなく「面白かった」と言えるし。



・クランの監督者、紫蘭(福田花音)と竜胆(譜久村聖)。

 クランの思想に賛同し、ファルスに協力しているという。

 以下、妄想。

 ファルス
「竜胆、君はこのクランをどう思う?」

 竜胆(ふくちゃん)
 「(美少女たちのキャッキャウフフを永久保存!?
  私もずっと若いまま!? 真のパライソがここに!)
  私はファルス様……いえ、お館様を支持します。
  ぜひ協力させてください」

 ファルス
「あ、ああ……それはいいが、その溢れ出る鼻血は一体……」

 竜胆
 「うふふ、何でもありませんわ(ハァハァ)」


 可愛い女の子大好きなふくちゃんが趣旨に賛同するってこういうこと?
 と、つい笑いそうになりましたw
 まさか宛書きでもないだろうし。

 そういう意味では、一番純粋にクランという秘密の花園を楽しみ、
 そして、壊されたことを一番悲しんでるのは彼女かもしれませんねw


・ツイッターで書いた

>リリウム。舞台の場合、ステージに近すぎると逆に見づらい場合もあるのだけど、
>今回は舞台を見上げる角度になるからこそ、演出の迫力が何倍にも増す場面がある。
>その一瞬、自分は登場人物の視線と同化し、
>その意味に同じように気づき、「あ!」と声を上げそうになるぐらい、ゾクッとさせられた。


これは、ラストのラスト

リリーが全員を自決させ、自身も自決して。

その後、

リリー以外の全員が舞台の2階に上がって、下にいるリリーを冷たく見下ろす場面のことです。

「みんなどこへ行くの!?」
「あなたと私たちは違うから」

前方の席は、リリーと同じように見下ろされる感覚を味わうことができます。

リリーと同じように、その瞬間に、起こった悲劇を本能的に理解するのです。

それは現実ではあり得ない光景なわけで。

その夢を見ているということは、つまり、自分は意識があるわけで。


リリウムは凄惨な場面はあれど、
決してホラーチックな怖さがある話ではありませんが、
彼女たちに見下ろされ、完全なる決別を告げられた時は、
「取り返しの付かないことが起こってしまったのだ」と背筋がゾッとしました。


<メンバーについて>
・めいめいのマリーゴールド。

 末満さんが挑戦させた
 オーバーアクションから内包の演技へ。
 
 その内側に秘められた激情が、いつ爆発するかわからない緊張感。 

 ソロ曲に今回の内包の演技がすべて詰まってると思います。
 強すぎる想いを抑えつけているかのような緊張感を孕んだ始まりから
 溢れ出る想いを爆発させるサビまで。

・2曲目「Eli, Eli, Lema Sabachthani?」で
 めいめいと小田さくらちゃんが互いの手を掴んで顔を見合わせながら回転して、
 競い合うように歌うパートで鳥肌が立った。
 あそこメチャクチャ好き。

・「TRUE OF VAMP」リリー・スノウ・マリーゴールドが三つどもえで歌うところも
 とんでもなく格好いい。
 あやちょのソロ「幻惑幻想イノセンス」も良いし、
 我らジャンヌで覚醒したあやちょの歌声の映えること。
 
・マリーゴールドがリリーに噛みつこうとするときの
 口のカパーッとした開け方と、八重歯が牙のように見えて
 めいめいの八重歯が真の意味で活かされた!と思った。
 八重歯の隙間から見ーつけた(ホラー)

・リリーがファルスに壁ドンされる場面も良いけど
 接近されてボソッと言う「顔近い…」の言い方が好き

・譜久村聖ちゃん(竜胆)は、譜久村ヲタとしてあえて厳しい目で見ると
 やはり演技は不得手であると思う。成長は毎回見られるけど。
 もう一歩踏み込んだ演技ができると、一気に変わるような気もする。
 雰囲気はある。歌は良い。美しい。のだから。

・そういう意味で同じポジションの役柄でありながら
 違いを見せたのが福田花音(紫蘭)。
 美味しい場面が少ない役になってしまい割を食った感はあるけど、
 要所を締めてたと思う。

・マーガレットの取り巻き3人娘の研修生。
 田辺奈菜美ちゃんはやっぱり髪を下ろしてデコ出ししない方が可愛いなと。
 
・パンフレットに「娘。メンバーの選抜はプロデューサーサイドからの提案、
 研修生はオーディション」とあった。

 一番舞台経験値が高く華のある田辺、
 「熱帯男子」「僕たち可憐な少年合唱団」と2作出演経験があり、舞台勘の良い加賀、
 目をひく存在として佐々木。

 台詞は少なかったけど、この舞台に立てたのは良い経験になるのではないだろうか。