第二の壁 | 女を口説く術

第二の壁

 恥ずかしそうに下を向いたその女性が言った。「忙しいんで」
 「そうですか?」と言ったか言わないかは覚えていないが、反応してくれたことに感謝する気持ちと嬉しさに満たされて、女性を追うのをやめた。
 「忙しいんで」という言葉を聞いた時、無念さよりも、むしろほっとしたという事実には気づいていた。それは、この先の夢の実現までの道のりがどれほど長いかを示していた。通りがかりの女性に声を掛けるという第一の壁は越えたが、それから先、女性を立ち止まらせ、説得し、安心させて、ついていきたいと思わせるようになるまでには、無数の壁があるはずだった。殻に閉じこもりたがる自分をそのたびに鞭打たなければならないはずだった。目の前の壁をひとつひとつ破っていくしかない。第二の壁は、断られた後、もう一ねばりすることだった。
 三人目は、ギャル風の綺麗な長身の女性声を掛けて、完全無視されて、家路についた。