よいボーイングの、ただ一つの秘訣 | ヴァイオリンへの身体作り

よいボーイングの、ただ一つの秘訣

スカスカ~な音を出している方がレッスンにいらっしゃいました。
           弦の張力(上向きの圧力)に対して同等の圧力を、弓で与えてやらなければならない話から始めました。
 弦と弓が対等の力関係になったときに良い音がします。(これを“無重力”と呼んでいます)

           次に、弦は弓に摩擦で引っ張られて→戻る、の繰り返し。
つまり弦は縄跳びのような動きです。しかし、縄跳びよりも複雑で多種多様な回転をしています。
          
受講生には『あなたは弦と弓の関係が、釣り合っていない。弦の方が強さが勝っています。だから うまく弦が回転させられていなくて
その結果、核の太い音=良い音にならないのですよ。



などなど。物理的な面からまずお話をしました。

ここで『なるほど』と納得して いい音を出し始める生徒が多いのですが
今日の受講生は もう一段階ありました。
     
さて、興味深いのは受講生の質問
『でも、右手をしっかり弾こうとすると、力が入ってしまうのです』



…力?!




力が必要だなんて話は、ひとつもしていないのに。

しかし、この反応に『なるほど』とも思いました。
多くの人が行き詰まっている問題かもしれないと思いました。
『弓の圧力』=『全身で力をかける』→『全身の力み』
という構図になっているのでしょうね。

リラックスのため受講生と一緒に大笑いをし、弓の加減について2、3お話をすると、彼女は急に『あ、わかりました』と表情を明るくして、よいボーイングをし始めました。
私が教えたことは、右手の親指と人差し指の角度です。

実はこのヴァイオリンの右手、合気道の、ある『型』そっくり。
ある型とは何かと申しますと、相手に寝技をかけられたときの反撃に使います。

脚の力がとても強くなり、相手に寝技をかけられて身体を押さえ込まれたとしても、手はこの型にさえしておけば、相手を蹴り飛ばすことが可能です。


そうです、この『型』とヴァイオリンの弓をもつ右手は、原理的に同じ。

お話をヴァイオリンに戻しますが、よい右手の形は、これは 足腰の強く使える型であるということ。
ヴァイオリンは全身で弾いているという説明にも繋がりますね。
それがよいボーイング=よい音の秘訣です。