ルンガ沖の閃光 ラッセル・クレンシャウ著 岡部いさく訳・監修、岩重多四郎訳

日本海軍駆逐艦部隊 対 アメリカ海軍巡洋艦部隊

大日本絵画、2008年9月、253頁

随分前に英文の原書を読んでいたが、兵庫県立図書館蔵書にあったので日本語訳も読んでみた。

感想は同じ。

『筆者は駆逐艦Maury (DD-401) 砲術長として1942-1943年の一連のソロモン海戦に参加。この本は、表題のルンガ沖夜戦に参加した著者が暗闇の中訳が分からないまま自軍の4隻の巡洋艦が雷撃を受け大破(うち一隻沈没)し、日本軍にもそれ相応の被害を与えた(当初巡洋艦二隻、駆逐艦四隻撃沈と報告、実際は駆逐艦高波一隻沈没)と思われたが、実際の戦闘は具体的にどうだったのか不明な為、両軍の戦闘記録を丹念に調べ上げ再構築を試みた物。

参加した両軍の全艦船の、時間ごとの航跡を辿って、米軍が発射した魚雷の航跡、日本軍のどの駆逐艦の発射した魚雷がどの米軍巡洋艦に命中したのかを推測している。大変な労作である。その上で、極めて優秀な酸素魚雷を開発し実戦配備、その武器を有効に活用する戦術を編み出し、それを実践すべく厳しく鍛えて訓練し戦闘に臨んだ日本海軍水雷戦隊を素直に高く評価。一方で、欠陥魚雷を1943年半ばまで放置し、雷撃戦術を一向に改めなかった米海軍上層部を、慢心が原因として厳しく糾弾している。

実際に戦闘に従事した前線指揮官らしい指摘だと思う。

艦船同士の戦闘としては日本軍の勝利であったが、日本軍の作戦目的は、敵艦船破壊ではなく、ガダルカナル島日本陸軍への補給物資運搬であった。残念ながらそれには失敗しており、戦略的には敗北であった。ドラム缶にロープを括り付け沖に投下、陸上部隊が引っ張っていく作戦の最初の試みであった。以後この方法も効果が上がらず、司令部は撤退を決意する。筆者はこのルンガ沖夜戦がガダルカナル戦の米軍勝利を決定づけたと高く評価する。

海戦のプロとして相手方の日本軍を同じくプロとしてフェアに扱った優れた戦史だと思う。』