読書:南風に乗る 柳広司著

小学館、2023年3月、401頁

前回の「太平洋食堂」に続く筆者のシリアスもの。今回は終戦後の沖縄復帰に向けた戦いがテーマ。前回と同じで旧長州閥(吉田茂、岸信介、佐藤栄作等)が、戦後米国側に卑屈なまでに忖度し、いかに沖縄を犠牲にしてきたか、を、政治家:瀬長亀次郎、詩人:山之口貘、文学者:中野好夫等の活動を通して描き出した。いまだに治外法権の米軍基地が多く沖縄に残っている。また現在の旧長州閥系政治家は米国に過度に忖度し続けており道半ば。辺野古問題もその一つ。

去年から2年続けて沖縄に旅しているが、伊江島を眺める度に、又、基地関係者家族と思われる米人が我が物顔で街中を闊歩する様子を見るにつけ、そう思う。

 

読書:宝島 HERO’s ISLAND 真藤順丈著

講談社、2018年6月、541頁

前に読んだ「南風に乗る」の米国占領時代の沖縄、および沖縄を差し出した日本政府(旧長州藩系政治家等)の米軍に対する過度の忖度による悲劇を、もっと一般住民の視点から描いたもの。創作ではあるが、それなりにリアリティが強く感じられ、グイグイ惹き込まれた。神聖な場である御嶽(ウタキ)の存在が重要な意味を持つ。沖縄の住民は米軍のみならず、日本軍からも言葉に表せない非道な扱いを受けたという事実は重い。

 

今なお米軍に多くの土地を支配されている沖縄。最近の辺野古問題に対する政府の一方的な判断、態度を聞くにつけ、恐ろしいほどの密約が存在するとしか考えられない。米軍基地あっての現政権。