今回は長年イスラエルでの滞在を願っておられた、Sさんご夫妻にインタビューしました。障害者施設で働くことで2年間のボランティア査証が与えられ、今はエルサレムでいきいきとお過ごしです。

ご主人(Jさん)と奥様(Nさん)へのインタビューです。

 

1.なぜイスラエルへ行きたいと思ったのですか?

Jさん:

 何度かイスラエルを旅行したことがあったのですが、聖書に出てくる場所を訪ね、ヨシュアやエリシャなど、いままで文字でしか知らなかった人物が実際に活躍した場に立つと、聖書の物語を体感できるような気がして、いつか「イスラエルに行ってゆっくり滞在したい!」と思いました。

 しかし、観光ビザだと長くても3ヶ月しか滞在できません。もう少し長くイスラエルに滞在する方法がないかと考えていたときに、友人からイスラエル社会福祉省が募集するボランティアで2年のビザが取れると話を聞き応募しました。

 

Nさん:

  数年前、観光ビザで3ヶ月ほど滞在しましたが、イスラエルが大好きで第二の故郷のように思っていたので、もっと長く生活してみたいと思い、このボランティアビザを取得しました。現在1年4ヶ月滞在中です。

 

2.現在働いている場所をご紹介ください。

Jさん:

 現在ボランティアとして働いているところは、エルサレムにあるケレンオール(「光線」の意)という養護学校です。


 視覚障害に加えて、さらに1つ以上の障害がある子供が通う学校です。イスラエルでも、この学校の様に重度の障害児を教える施設は数が少なく、わざわざ介護タクシーで遠方から通学している子供もいます。

 

 

Nさん:

 3歳から21歳までの子供が通っています。そこで週4日ほどボランティアとして働いています。主な仕事としては、先生やスタッフのお手伝い、食事介助、散歩に出る時の付き添いなどです。

 

 3.イスラエルらしいな、と感じることはありますか?

Jさん:

障害者のお世話をすることが初めてで、日本の施設の状況はよく分からないのですが、こちらでは、教師が「不可能」ということを感じてないなーと感じます。重度の子供に対しても真っ向から授業をして、子供と対面する姿に驚きました。


 私は、子供たちにテクノロジーを教える先生の手伝いをしていますが、先日は車椅子でしか移動できない子供たちに、ネットの便利さと怖さを教えていました。日本でも養護学校の先生は一生懸命教えていられると思いますが、こちらの先生は、先ほど話した様に可能か不可能か考えずにどんどん教えていく姿は、ある意味無謀に見えるくらいです。

 

[コンピューターでコミュニケーションを取る]

 

Nさん:

 障害者という見方でなく、一つの個性として一人ひとりを見ているな、と感じます。一つでも出来そうな事があればマンツーマンで対応して、どんな小さな変化も見逃さない姿勢に学ばされています。1年あるいはそれ以上のスパンで、生徒の成長を学校あげて見守っている感じがします。はたから見ると、とても無理と思えることでも、トライする精神はすごいです。

 ボランティア施設以外のことになりますが、安息日があることはやはりイスラエルならではですね。毎週金曜日の日没から土曜日の日没まで、全公共交通機関は停止し、お店もすべて閉まり、特別な時間が流れます。

 聖書に従って、肉と乳製品は一緒に料理する事が禁じられているなど、聖書の掟が現代にも生きています。


 それと、町の至る所でイスラエルの国旗がはためいています。国の重要なお祭りは国あげて行われ、話だけでなく実際に体験して次代に伝えていくところは、すごいです。

 

 

 4.辛かったことや、嬉しかったことはありますか?

Jさん: 

 言葉が通じにくいのが一番辛いことでしょうか。

 あと、障害がある子供の中には、体力や免疫力が弱い子が多く 長期入院する生徒も珍しくありません。ちょうど1年前、私がよくお世話をしていた10歳か11歳くらいの子供が、突然天に帰ってゆきました。つい先日まで元気だったのに、とショックで頭が真っ白になりました。

 嬉しかったこととして、こんなことがありました。

 私はヘブライ語がほとんどできないのに、ある先生から「この子はお話がすきなので、聞かせてあげて」と言われたので、苦し紛れに絵本を見ながら簡単なヘブライ語を並べて話を創作して子供に読んで聞かせました。そうしたらその子が大喜びで、そばで見ていた先生が「この子がこんなに喜んでいるのを見たことがない」とびっくりしておられました。その子の卒業までの半年間、ほぼ毎日絵本を読んで聞かせました。

 

Nさん:

 辛かったことは特にありませんが、強いてあげれば、ビザ申請の時に必要な書類の一つである「犯罪経歴証明書」の取得が煩雑だったこと。

 嬉しかったことはいろいろあります。

 ボランティア先でいろんな人と出会えて、観光だけでは味わえない体験ができたことや、イスラエルの人は日本が大好きで、とても好意的に接してくれたこと。ある方に招待されて、ユダヤ教の結婚式に出席したこと。エルサレムマラソンに2年連続で参加できたことも
貴重な体験です。

 


[ユダヤ教の結婚式]

 

 

5.これからのこと、願い、希望などはありますか?

Jさん:

 今まではエンジニアの仕事しか知らなかったので、自分では障害者のお世話などとてもできないと思っていました。けれども、この施設で働くことを通して、子供たちに自分の中に隠れている愛情を引き出してもらった気がします。日本に帰ってからも、ケレンオールと同じ様な仕事ができれば、と思うようになりました。

 

Nさん:

 現地で過ごしていると、日本の報道では知り得ないリアルなイスラエルを、肌で感じることができます。一人でも多くの日本の方に、こちらに来てそのことを感じて欲しいと思います。例えば、ユダヤ人とアラブ人は共存していて、助け合って生活していることや、エルサレムは夜女性が一人で外を歩いてもいいぐらい、治安がいいことなどでしょうか。


 世界のいたる所から自国イスラエルに帰還してきた人たちが、たとえ戦時下であっても自国に戻れた喜びを身体いっぱい表しているのを身近で見ると、今の日本人にはなかなか理解できない感情だなと感じます。自分の国がある事がどんなに幸せなことかを感じる事が出来たら、生き方が変わるのではないかと思います。

 

[Sさんご夫妻:障害者フェスティバルの売店にて]

 

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