突然ですが、皆さんに質問です。
イスラエルの領土、面積はどのくらいかご存じでしょうか?
答えは日本の四国程度の面積で、約22000㎢です。
そんな国土の狭いイスラエルですが、南へ行きますと、本当にイスラエルなの? アメリカのグランドキャニオンみたい!?なんて思ってしまうような、広大な場所があります。
それがミツペラモンです。
ミツペラモンは町の名前ですが、人口約5,200人程度の小さな町です。ミツペラモンは、展望などの意味がある「ミツペ」と、巨大なという意味のある「ラモン」という2つのヘブライ語から来ています。そのラモンというのは、ミツペラモンの町南端から見ることができる広大な景色のことです。世界では類を見ない、自然の力、雨や風などの浸食によってできたクレーター、ヘブライ語で「マクテシュ」と呼ばれ、その中でも最大級のクレーターが、ミツペラモンなのです。ラモンクレーターの大きさは、長さ約40㎞、幅約9㎞、深さ約350mです。
ミツペラモンは直接聖書の舞台としては、関係ないようにもみえますが、エジプトを出発したモーセ率いるイスラエルの民が、シナイ半島のカデシュバルネアから当時カナンと呼ばれていたイスラエルへ、ヨシュアなど12部族の代表を斥候として遣わし、その地域を探らせます(民数記13章15節)。その際、ミツペラモンの北側に位置するツィンの荒野やヘブロン、ブドウなどが実っていたエシコルの谷までたどり着いているので、もしかしたらミツペラモン付近も通ったかもしれませんね。
イスラエルには、ラモンクレーターの他にもマクテシュ・カタン(小さなクレーター 長さ約8㎞、幅約6㎞、深さ約400m)とマクテシュ・ガドール(大きなクレーター 長さ約14㎞、幅約6㎞、深さ約410m)と呼ばれているものがあり、どれも隕石などの落下による穴ではなく、自然の雨や風などの浸食によってできました。“マクテシュ”はイスラエルのネゲブ地方やエジプトのシナイ半島以外では見られないので、今では世界的にも公的な用語としても使用されているようです。
ミツペラモンは個人的にイスラエルの中で好きな場所の一つです。私がここを初めて訪れたのは、20歳になったばかりのころで、今から約28年前の1993年ですが、イスラエル南部のネゲブ地方を1週間ほど一人旅をしたことがありました。イスラエル南部最大の町ベエルシェバをスタートし、ミツペラモンを最終目的地に選び、路線バスに乗りながら、次のバスが来るまで時間があれば、歩き、時にはヒッチハイクをしながら荒野の旅を楽しみました。
そんな行き当たりばったりな旅でしたので、ホテルに宿泊するなんてことは考えていませんでしたが、最終目的地のミツペラモンだけはユースホステルを事前に予約しておきました。
かなりの距離を歩いて体力も消耗していましたから、事前に予約しておいて良かったと思いましたが、その他にも良い点が一つありました。
宿泊したユースホステルはミツペラモンの町外れで、断崖絶壁のすぐ近くでしたので、日の出を見に行きやすいという利点がありました。
翌朝早く起きて日の出を見に行きましたら、同じように日の出を見ようとしていたのか、人の目を避けて出てきたのか、沢山の野やぎの群れに遭遇したのです。以前エンゲディの記事でも紹介されていたアイベックスです。
今はミツペラモンに数件のホテルが建っていますが、そのホテル周辺をまるで自分の家の庭のように、アイベックスたちが群れをなして、歩く姿を見ることができます。
“荒野と、かわいた地とは楽しみ、さばくは喜びて花咲き、さふらんのように、さかんに花咲き、かつ喜び楽しみ、かつ歌う”(イザヤ書35章1~2節)
の聖句のごとく、2〜3月の頃にミツペラモンの近くにある自然保護地区に行くと、こんな環境でも花が咲くのかと思いますが、小さなデザートチューリップなどが見られます。それもオススメです。