今回で[B1]の分析は終わりです。今回問題としたいのは[B1]の最後のコードであるD7です。このコードは[B]の後半、[B2]の調であるKey of G(すなわちこの曲の主調)のドミナントです。
 
一見なんてことのないコードで、転調時に後続調のドミナントがでるなんて当たり前じゃないか、そのように思われるかもしれません。しかし、私は[B1]の最後に登場するD7にポールの天才性を感じます。その理由は次の二点に集約されます。
 
・これまで一度もV-Iの全終止が用いられていない点(変格終止を中心としていた)。
 
・D7が鳴り響く直前に"I love you"と歌われる点。
 
和声法において、V-Iの進行は「調を確定させる」という調性音楽において極めて重要な役割を担っています。 Key of Gである[A]のセクションには一度もV-Iの進行が登場していません。すなわち、主調のKey of Gは[B1]の最後に初めて確定されると言えます。
 
曲頭のC#m7-5が悲痛、あるいは不安に響くのはそれがマイナーコードでもメジャーコードでもなく調を確定する要素がどこにもないからです。
 
そしてすでに述べたように冒頭ではKey of Gらしさは隠蔽され「君」のいない損失感を表現するかのようなkey of Gmの色が強く感じられました。
 
それが[B1]ではkey of Cに転調することで、「君」との思い出の輝きが表現され、2つのマイナーコード VI-IIIにより涙がこぼれます。
 
そしてその直後です!"I love You"と歌われたまさにその直後に D7-Gの進行が鳴り響き key of Gが確定される。この巧みさ、この天才性!!! 
 
ともすれば陳腐な、稚拙ともとられがちな"I love you"という表現にある種の崇高ささえ覚えるのはその直後に鳴り響く D7-Gの効果にほかなりません!!!
 
ポール天才!!!!!