いつみても隣の芝生は金色
暑い。
風はあるのに
肌にまとわりつく感じがして
「ああ…来たな」
と
思う季節である。
夏。
いや
まだ梅雨なのか?
もう夏なのか?
最近は境目が雑すぎて
よくわからない。
ただ
ひとつだけ確かなことがある。
蚊である。
やつらは
毎年きっちり現れる。
気温だの
湿度だの
気圧だの。
細かいことは知らないが
「そろそろか…?」
と思った瞬間には
もういる。
気配もなく。
音もなく。
いや
耳元では鳴るな。
あの
「プゥゥゥゥゥン…」
という
絶妙に腹立つ羽音。
何故あんなにも
人をイラつかせるのか。
しかも夜。
眠気と疲労で
意識が落ちそうな時に限って
現れる。
叩く。
逃げる。
電気をつける。
見失う。
諦める。
消す。
するとまた
「プゥゥゥゥゥン…」
もう
精神攻撃である。
こちらは
仕事や家事や
気温差や湿度で
すでにHPが削れているのだ。
そこへ
追撃の蚊。
容赦がない。
しかも
刺された後が
昔よりしんどい。
子供の頃は
掻いて終わりだった気がする。
今は違う。
痒い。
長い。
腫れる。
そして
無意識に掻く。
気づけば
変な跡になっている。
治りも遅い。
年齢を感じる瞬間が
こんなところにもある。
だが不思議なもので。
蚊が出てくると
「ああ。今年もこの時期か」
と
妙に実感するのである。
扇風機。
半袖。
麦茶。
汗ばんだ首元。
アイス。
夕方の湿った風。
子供達の
「かゆいーー!!」
という叫び声。
夏の風景には
なぜか蚊もセットでいる。
いらないのだが。
本当に
いらないのだが。
とはいえ
完全に排除できるほど
こちらも徹底できない。
網戸を閉めたつもりが
開いていたり。
玄関を開けた瞬間
当然のように侵入されたり。
どこから入ったのか
わからないのに
しれっと壁に止まっている。
お前
いつからいた?
みたいな顔で
こちらを見るな。
そして始まる
蚊との戦争。
スプレー。
蚊取り線香。
ベープ。
ラケットみたいなやつ。
人類は毎年
蚊に対してだけ
妙に装備が豊富である。
それでも刺される。
結局刺される。
たぶんもう
夏の通過儀礼みたいなものなのだろう。
嫌だけど。
暑いし。
痒いし。
だるいし。
それでも
窓の外から聞こえる
子供達の声や
夕焼けの色を見ると
悪いことばかりでもないな
とは思う。
蚊は嫌いだが。
そこだけは
一切ブレないけども。
運動会。
風強くて
小雨で。
肌寒い。
去年との差な!!
激しすぎるやろ。
どうなってんのよ。
梅雨なんか夏なんか
もうデタラメじゃあないかと
空を見ながら思う。
まあ
開催されたから良いけども。
延期や中止になるよりは
子供達も嬉しかっただろうし
親としても
なんとも言えない安心感はあった。
しかしながら。
ふくらはぎ、腰、腕。
ついでに背筋。
全身が
「お前、普段そんな動きしてないだろ」
と
訴えかけてくる。
猫背なのも
なで肩なのも
全部が逆効果。
長時間立ちっぱなし。
微妙に前屈み。
荷物持って。
場所探して。
変な角度で撮影して。
筋肉痛確定と
ハンコを押されている状態である。
普段は
立っているより
歩いているか
座るかがほとんどで。
ずっと同じ場所で
立機してることなんて
案外少ない。
結果である。
辛いなあ。
運動会自体は
良かったんだけどなあ。
相変わらず
めちゃくちゃ見にくいし。
遠いし。
「あれうちの子か?」
「いや違うな?」
を
何度も繰り返す。
ビデオ越しに探すのか
肉眼で見るのか。
親たちも皆
妙に真剣で。
そして何より。
人多い、、、、。
これがまた疲れる。
座る場所。
通路。
譲り合い。
待機列。
気を遣うだけで
体力が削られていく。
嫌になる。
体型も加齢も。
はあ。
と
心の中でため息を吐きながらも。
横になる時間もなく
子供達は遊ぶ。
元気すぎる。
懸命に走ってた徒競走も。
リズミカルなダンスも。
ワイワイとこなした玉入れに
ぐるぐる回る台風の目も。
大変そうなのに。
終わったあとも
普通に走り回っている。
体力あるんだなあと
変な感心をしてしまう。
過ごしやすい気温だったからか
テンションも落ちにくいのだろう。
こちらはもう
湿布と休憩のことしか
考えていないのに。
でも。
頑張ってる姿を見ると
なんだかんだ来て良かったなと
思うのである。
普段の生活では見えない顔。
友達と騒いでいる姿。
真面目に並んでる姿。
ちょっと照れながら踊る姿。
家とは違う空気の中で
ちゃんと過ごしているのを見ると
不思議な安心感がある。
疲れるし。
人混みは嫌いだし。
筋肉痛は加速するし。
帰宅後は
「もう今日は動きたくねえ」
状態なのだけど。
結果。
普段の不摂生ながらも
とても良いリフレッシュなのだと感じた。
他者の悪意も。
天気への文句も。
老いへの嘆きも。
強い風に
少し飛ばされた気がした。
近づいてくる
子供達の運動会。
学校から帰ってくるたびに
今日はこんな練習しただの
誰がリレー選ばれただの
踊りがどうだのと
少し浮ついた空気を
家の中に持ち込んでくる。
それを聞きながら
「ああ、そんな時期か」
と
カレンダーを見る。
そして同時に
天気予報も見る。
曇り。
雨。
曇り時々雨。
もう少しこう
なんとかならんものかと
思わなくもない。
梅雨の湿気と
運動会シーズン。
昔から仲が悪いのか
妙に噛み合っているのか
毎年ヒヤヒヤしている気がする。
とはいえ
秋開催よりはまだマシか
という空気もある。
最近の夏は
容赦がない。
昔の「暑いですねえ」
では済まず
生命維持の話になってくる。
炎天下のグラウンドで
整列しているだけでも
体力が削られるし
子供も大人も
「根性論」でどうにかなる温度を
とっくに超えてしまった。
だから春開催に
流れていったのもわかる。
わかるのだが。
春が短すぎる。
ちょうどいい時期が
ものすごい勢いで通り過ぎて
気づけば湿気。
そして夏。
なんなんだこれは。
季節が雑である。
朝はまだマシでも
昼には蒸し暑く
夕方には変な疲労感。
大人ですら
ぐったりしているのに
子供達はその中で
走って
踊って
声を出して
練習しているらしい。
帰宅後の
投げ出された水筒や
汗の染みた体操服を見ると
頑張っているのは
なんとなく伝わってくる。
ただまあ。
親側としては
楽しみと同じくらい
天気が気になる。
弁当はどうなる。
延期なら仕事はどうする。
駐車場は。
場所取りは。
雨具は。
考え始めると
だんだん
イベントというより
作戦会議みたいになる。
それでも
当日が近づくと
妙にソワソワしてくるのだから
不思議なもので。
自分が子供の頃も
似たような感覚だった気がする。
夜にテルテル坊主を吊るしたり
朝起きて
カーテンを開けて
空を確認したり。
グラウンドの状態次第で
「ある」「ない」が決まる
あの独特の空気。
延期になれば
少し嬉しくもあり
残念でもあり。
開催されたらされたで
妙に疲れるのに
終わった後は
少し寂しい。
たぶん
運動会そのものというより
その前後の
落ち着かない空気ごと
記憶に残っているのだろう。
だから今
子供達の姿を見ながら
「ああ、これ毎年やってるな」
と
苦笑いしてしまう。
季節に振り回され
天気予報に一喜一憂し
汗だくになりながら
なんとか形にしていく。
行事というより
日本の初夏の風物詩みたいなものである。
願わくば
当日くらいは
曇りくらいで
勘弁してほしい。
晴れすぎても地獄。
雨でも困る。
親というものは
実にわがままである。

