ビジネスの話を一つ。
CRM‥カスタマー・リレーションシップ・マネジメントという言葉がありますね。顧客の満足度を上げることによって、企業や製品に対する強い支持意識をもつ顧客を獲得し、事業の成功基盤を創るものです。
しかし、この考え方で難しいのは、人間の満足度というのは、千差万別で、同じランチを食べても「満足」する人と「物足りない」人が同時に存在するという差異性に対してアプローチしなければならないということでしょう。
顧客が満足するには、顧客のニーズやウォンツに対応したサービスを提供すればいいのでしょうが、必ずしもニーズ調査や声の収集によって得られた「解答」を、新サービスにすれば満足度が上がるかというと、そうならないところがさらに難しいところなのですね。
例えば、ビッグカメラ、ヤマダ電機、ヨドバシカメラなどの大型低価格家電店を考えて見れば分かります。これらの低価格家電店に対する顧客のニーズは、「高級な品質のものをより安く!」にあるわけですね。より安くするには、必要以上のコストを削っていくことが大切ですが、この必要以上のコストの中心には「顧客サービスコスト」が入っているわけです。
自社の取扱商品やサービスに対する満足度調査は必要なものですが、価格で勝負する低価格家電店がこうした顧客調査に大金を当てることはできない。コールセンターやカスタマーセンターに対するコストは、売値の割引に影響を与えかねないという根本的問題があります。
従って、低価格家電店は、価格によって徹底して「差別化」を図ることで、顧客の満足度を上げることが企業の収益に貢献する戦略となるわけです。
このように、企業は顧客に対して、応対の品質や対話に対する改善が重要だとは知りつつも、顧客の心理的満足を排除してでも自社のポジションを確保しようとする場合もあるわけですね。
但し、顧客はとても我儘ですから、低価格商品を購入する場面でも、ある程度の自分に対するホスピタリティを要求する潜在的心理は働いています。そこでの対応が悪ければ、別のショップで買えばいい。この心理が競争を激化させ、利益を圧迫する原因を作り出していくのも、一方での事実ではあります。
いわば、利益と顧客満足という二律背反の関係の按分をどのように調和させるか、そのメソッドが必要になってくるのですね。