茂木健一郎先生が脳科学について講義をする「脳科学講義」(ちくま文庫 2008年10月刊 2004年7月柏書房より出版された「脳の中の小さな神々」に加筆して出版)を読んでいる。この本は速読できない。そんな予感がして、じっくり一つひとつの章をマインドマップに書き写しながら読んでいる。
今日の日本で脳科学という分野を最もポピュラーにした立役者の代表が茂木先生だ。しかし初期の出版物、例えば2005年度小林秀雄賞を受賞した画期的論考集「脳と仮想」 (新潮社 2004年9月刊)の頃の専門用語満載の論文では、素人が簡単に読み進めるほど分かりやすい内容ではなかった。
その後、対外試合というマスコミなどへの登場によって、脳科学を日常の中で分かりやすく語る出版物が茂木先生自身の手によって矢継ぎ早に登場し、脳のテーマが急激に身近になつたのは嬉しかった。
本著の中で、特に印象深いのは、脳科学という分野が、まだまだ始まったばかりの研究分野であり、解読不明な諸問題を沢山かかえている現実と、科学的検証の領域が人間心理、いわば「心」の問題抜きに研究できない要素があること、そして、文化、芸術、心理学、哲学、音楽など多様な研究分野との関係性の中で脳科学の課題は解明されていくだろうということでした。
科学というからには、数学的な答えが求められる。しかし、脳の科学的解明のためには、数値だけで解明できない領域や不可解な現象は沢山ある。そのあたりにこの講義の面白さがあるようにも思えました。
とはいえ、学校の講義ノートのような形態をもって構成されている本書ではありますが、聞き手の歌田明弘さんの聞き出し方が上手で、まったく退屈することなく楽しく学習することができます。
それが本著のクオリアなのでしょうか?
さて、後半の授業を受けに行かなければ‥‥。