武田信玄(晴信)の説得話法 風林火山の場面転換の一話を見て | 考える道具を考える

考える道具を考える

The instrument which I think

 昨夜のNHK大河ドラマ「風林火山」は、信玄が自らの父親 信虎を追放するシーンと、家臣への告知のシーンが描かれていた。

 起承転結の「起」から「承」に移るタイミングが、この父親信虎追放に焦点を当てたものになっていましたね。

 そして、圧巻は、信玄が家臣を集めた最高会議の場面で、最も反旗を翻すと思われる弟の説得の場面だ。ここで信玄は、弟に対し、このような行為に及んだことを素直に侘び、

 「わしを助けてくれないか?」

 と問うのでした。この最も緊張した場面で、しかも、その答え一つで、更なる分裂の危機を迎えている場面で、居丈高になるのでもなく、力ずくにするでもなく、毅然としかし心を込めて問うこの一言こそ、信玄のリーダーシップの優秀さを示していたと思えたのですね。

 緊迫した場面では、相手に「聞く」という姿勢は、実はコミュニケーションでは最も高等な手段であるといわれています。その短い対話で家臣たちは、信玄のリーダーとしての資質をオーソライズしたといえるように思えました。

 さて、それに反して、昨夜で無事完結した「華麗なる一族」の、万俵大介と鉄平の会話はどうであったでしょう。この番組も、親子の対立の構造を底辺に流しながら、銀行の再編成というストーリィの中で、二人の心の確執を描いていましたね。

 しかし、この親子の会話の中には、相手に対する疑心暗鬼が引き起こす台詞だけが際立っており、心の余裕は感じられませんでしたね。常に攻撃的であり、言い切りであり、「聞く」という姿勢は皆無でした。むしろ、そうした心の暗い渦をバネにして、競争社会を勝ち抜いていく、いわば古い動機論の中で展開されたドラマでしたね。

 それが、この華麗なる一族という番組の際立った特徴だったといえるのではないでしょうか? 実は台詞を話ながらも、まったく交流しない場面がどこまでも展開していく、実に重苦しいドラマにしていたのでしたね。

 ‥‥‥

 それにしても、風林火山は、これから一年間、さらに楽しみになってきたといえるかもしれません。台本がしっかりしているからですね。