原口統三 二十歳のエチュード 再読 | 考える道具を考える

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原口 1946年(昭和21年) 10月25日深夜、神奈川県逗子海岸にて入水。19歳10ヶ月。

 この本の後半に記載されている原口統三の年譜の最終行には、このように記されている。二十歳を目前にして自殺した天才の、その僅かな生涯の中に残されたのは、ほんの僅かな詩と、遺書として吐き出されるように書きつづられた二冊のノート「エチュードⅠとⅡ」。

 10代のころの私が最も影響を受けたこの若き天才のアフォリズムが、「定本 二十歳のエチュード」として、ちくま文庫から発行された。

 私の手元にあるのは、既に25年以上も前の、古ぼけた初版本だったが、見事に体系化されて再登場されたことは、本当に喜ばしいことだと思った。

 ‥‥

 ブログを初めてから、一度は書かなければならないと思っていた原口統三の「二十歳のエチュード」。一体何がそんなに私の心に響いているのか‥。

 17歳で書き記した一編の詩がある。「海に眠る日」という小品だ。


   海に眠る日

   かれは真昼の海に眠る
   茫洋たる音楽のみどりに触れあふ  はるかな
   蜃気楼の奥深くかれは眠る
   あふれる香髪(においがみ)のみだれ巻いて溺れるあたり
   とほく水平線の波間にさ青の太陽は溶け込む。

   さうして  はるばると潮の流れる耳もとちかく
   かれは一つのなつかしい言葉をきく
   お兄さん! お兄さん! お兄さん‥‥

   ああ こんな恍惚の夢のやうな日は
   どこの海辺で待ってゐるのか

 17歳の少年が書き記したこの詩は、私の中に、「言葉の音楽の響き」として強烈にインプットされたとでもいおうか‥。以後、私の感性の中には、常に、この詩が息づいているのを感ずるのですね。

 エチュードに書かれている数々の箴言については、明日から書いていこうと思います。