
‥あなたの近くにも彼はいるかもしれません。きっとあなたも何度か、いや何十回何百回となく彼の姿を見たことがあるはずです。世界でもっとも有名な裸の男・・・。本日の作品、オーギュスト・ロダン、『考える人』。
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今年の1月にテレビ放映された「考える人」ロダンの特集の最初のナレーションです。
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‥深い思慮の中で孤立した男の像です。眉を寄せています。口には右手の拳が強く押しつけられています。腰掛けながらも、筋肉は張り詰め爪先に至るまで力がみなぎっています。沈黙し、体中に緊張をはらんで、彼は、いったい何を考えているのでしょう。
‥‥ちょっと面白いナレーションなので、もう少しそのまま引用します。
‥彼が何を考えているか、それを知りたければ、彼がもともといた所に行くべきでしょう。そして、彼が座っているその背景も見るべきでしょう。
何故なら、彼は最初から5メートル下から見上げるように、作られているのですから。彼の座っているのは、扉の上。しかもその扉は、地獄への門。地獄への入口は、彼の左上。今、まさに一人の女が、地獄に突き落とされてきました。それから、欲望に取り憑かれた女たちは、ホラ、あの男の方へ行列する・・・。
でも、ここは、まだほんの入口。彼の右側を見てみると、女達の行列は、バラバラになり、骸骨たちが登場する。彼の左側はまだこの世の続きのようなもので、右側から本物の地獄が始まる。だから、そう、彼は地獄に墜ちた霊魂の審判者なのです。「この人間を地獄に墜とそうか、それとも助けてやろうか」、彼はそれを考えているのです。
‥‥むむむ、そうだったのですか?
ウィキペディアを読んで見ると、つぎのようなことも書いています。

‥‥そしてロダンは、1889年、『地獄の門』を覗き込む男を一つの彫刻として発表した。はじめこの彫刻には「詩想を練るダンテ」と名づけられていたが、発表するときは「詩人」と名づけられた。この像は誰を表しているのか、ダンテであると言う説もあるが、ロダン自身であると言う説もある。その姿は地獄の中を覗き込み、苦悩している姿であり、その地獄の中にはカミーユ、ローズとの間に出来た息子(この子のことをロダンは認知せず、世間にも隠していた)の姿がある。なお『考える人』と言う名はこの像を鋳造したリュディエがつけたものである。
‥‥なんだか、全部引用になってしまいましたが、考える人は、地獄を覗き込んでいる男の像だったのですね。何かを熟慮しているわけではない。過去と現在と未来の時間が入り混じった壮絶な世界が、その眼下にあったとは‥。
しかし、私たちの思考の奥底には、絶えず地獄はあるのかもしれない。‥
私は、今、どんな世界を覗き込んでいるのだろうか?