サローヤンが第二次世界大戦のさなかに書いた本。
主人公は12歳の少年、ホーマー君。
父親を亡くし、兄は戦争にゆき。
長男として街の電報配達人として働く。
よその子より早く大人の世界に入らなければならない子ども。
そんな少年と周りの大人たちとの暖かな交流がえがかれる。
ホーマーの弟、4歳のユリシーズ目線のちいさな子どもの世界の描き方もうまいし、イサカの街の人々の暮らしぶりから浮かび出す悲喜劇のエピソードもひとつ一つ味わい深いものです。
ヒューマンコメディ、というタイトルだけれども、コメディが生まれる物語の舞台は大戦さなかのアメリカ。たくさんの若者が戦争に徴兵されて死んでいく時代。
でも、どれほどの悲劇の中でも、どれほど人が不完全で頼りなくとも、人の愛情を信じる、恢復する力を信じていく、そのひとさじの味付けが秀逸で、素晴らしい作品でした。
第二次世界大戦さなかの文学では、ヨーロッパではケストナーがやはりヒューマニズム、人間性と笑いをテーマに描く小品を発表しています。
広い意味で言えば、カミュも、人間性、ヒューマンを追求した作家。こちらはかなり思想的な文学作品ですが。
わたしは、彼らの作品に惹きつけられる。
きっと、人が好きだからなんだろうな〜。
さて。
次はノーベル文学賞記念!
カズオイシグロでも読みますかね。