『検事の本懐』 | てこの気まぐれ雑記帳

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グータラ婆が気ままに、日々の出来事や思ったこと、感じたことを、適当に書き綴っています。なんでも有りの備忘録的雑記帳です。

読了後、数カ月も経ってしまった読書歴。もうどうでもいいようなものだけど、一応このブログは「備忘録としての記録帳」なので、せめて読了日と粗筋だけでも記しておくことにした。

23年21冊目の読了小説は、12月5日の『検事の本懐』(柚月裕子。大沢在昌解説。角川文庫)本

ガレージや車が燃やされるなど17件続いた放火事件。険悪ムードが漂う捜査本部は、16件目の現場から走り去った人物に似た男を強引に別件逮捕する。取調を担当することになった新人検事の佐方貞人は「まだ事件は解決していない」と唯一被害者が出た13件目の放火の手口に不審を抱く(「樹を見る」)。権力と策略が交錯する司法を舞台に、追い込まれた人間たちの本性を描いた慟哭のミステリー、全5話。第15回大藪春彦賞受賞作。(裏表紙「粗筋」)

 

 

佐方貞人シリーズ第1作の「最後の証人」では弁護士として活躍したが、2作目の本作では、佐方がまだ新人検事だった頃の話。

全5話で構成されるが、どの話も周りにいる人が見た佐方を描いているので、彼の人間性がより客観的に理解される気がする。

 

「第一話 樹を見る」

連続放火事件――米崎東警察署長・南場輝久と、彼の同期で学生時代から彼を敵対視している県警本部長・佐野茂の確執。

放火犯・新井友則は17件の放火は認めたものの、死者の出た13件目については頑なに否認。取調担当となった佐方は……

 

「第二話 罪を押す」

佐方の上司である米崎地検刑事部副部長・筒井義雄が3年前に起訴した小野辰二郎が、出所した当日にディスカウントショップから腕時計を盗んだ。

本人は犯行を認め目撃者もいるにもかかわらず、佐方は不起訴にすると……

 

「第三話 恩を返す」

佐方のもとに、高校時代の同窓生・天根弥生からSOSの電話が。昔のビデオを餌に、現職警察官である勝野正平から強請られているという。

佐方は12年前の約束を胸に、故郷へ……

 

「第四話 拳を握る」

財団法人「中小企業経営者福祉事業団」(中経事業団)と、ある与党議員の贈収賄容疑の捜査のため、東京地検特捜部から各地検に応援要請が入り、山口地検から赴いた加藤寿朗事務官は、米崎地検からの佐方とコンビを組むことに。

佐方の取調のやり方に戸惑う加藤だが……

*このところ話題となっている「政治家の裏金問題」では、佐方のような検事に担当して欲しいと切に願ったのだけど。

 

「第五話 本懐を知る」

10年以上前に、弁護士が実刑判決を受けた珍しい事件があった。優秀だったと言われるその弁護士なら示談や起訴猶予に持ち込めただろうに、何故か彼は控訴もせずに実刑判決を受け入れ、服役中に亡くなった。

ライターの兼先守はこの事件に興味を抱き、独自に調べ始めたが……

弁護士の名は佐方陽世、佐方貞人の父親だ。‟この父親にしてこの子あり‼”

 

どんな事件も丁寧に検証し、納得できるまでとことん調べ尽くす佐方の姿勢。こんな検事ばかりだったらどんなに信頼できることか、きっとこの世は住みやすいに違いない。

 

ゆづき・ゆうこ=1968年5月岩手県釜石市生まれ。08年『臨床心理』で第7回「このミステリーがすごい」大賞を受賞し40歳で作家デビュー。13年『検事の本懐』で第15回「大藪春彦賞」を、16年『孤狼の血』シリーズ3部作の第1作『孤狼の血』で第69回「日本推理作家協会賞」長編及び連作短編集部門を受賞。『最後の証人』(23.1.09記)、『慈雨』(23.2.28記