『割れた誇り』 | てこの気まぐれ雑記帳

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グータラ婆が気ままに、日々の出来事や思ったこと、感じたことを、適当に書き綴っています。なんでも有りの備忘録的雑記帳です。

8月20日(金)、岩倉剛シリーズ『ラストライン』の2作目『割れた誇り』(堂場瞬一。文春文庫)読了本

女子大生殺人事件の容疑者として逮捕されていた田岡勇太が、地裁でまさかの無罪となり、自宅に戻った。近所は不穏な空気に包まれ、田岡への嫌がらせも発生。そんな中、女子大生の恋人だった男が殺される。判決後も田岡に執拗に迫っていたため、返り討ちも疑われたが。一方で今度は田岡が襲われた――。これは復讐の連鎖なのか。(裏表紙「粗筋」)

 

 

 

*私の読書録は備忘録としての感想文。完璧ネタバレですm(__)m*

 

 

 

 

1年ほど前、女子大生殺人容疑で北大田署に逮捕された田岡勇太が、完全無罪判決を受けて自宅に帰ってきた。

「裁判で完全無罪になったからと言って、一度殺人犯の烙印を押された人は、簡単には社会復帰できない。まして(中略)人間関係が密なコミュニティでは、受け入れる方が抵抗するとややこしいことになるんだ。団地だけじゃないな。この辺に住む人は皆、嫌な思いをしていると思うよ。不安と言うべきかもしれないが」

 

犯罪者として顔も名前も知られると、結果は無罪だったとしても半永久的に色眼鏡で見られ、後ろ指を指されるであろうことは、これまでも聞きかじっているし想像もつく。

まして現代はネット社会。

SNSで悪意が呟かれると、確証もないままアッというまに拡散され、否定の言葉は無視されることの方が多い。なんせ人間は、自分の信じたいことにしか耳を傾けない動物なんだから。

 

勇太の場合も御多分に漏れず嫌がらせがあり……家から出られない日々が続く。

特に殺された女子大生の恋人だった光山は、異常なほどに執拗に勇太が犯人だと責め、田岡家に押しかけたりも。

弟・勇太と病弱な母を守って孤軍奮闘の直樹。くそがつくほど真面目で頑固な性格だけど、本当に困った時は、もっと世間に甘えてもいいんだよと言ってあげたい。

甘えられる世間であって欲しいし…。

 

隣の管轄の事件だったけれど、秘かに勇太の様子を見て来るように命じられた岩倉剛は、勇太と事件の関係者の周辺情報収集を開始。

 

そんな折も折、光山が殺された……勇太の仕業かと色めき立つ北大田署の刑事たち。

しかし、その勇太が襲われて大怪我を。

 

前作で、主人公である岩倉があまり魅力的でないと書いたが、今回も慎重に捜査を進めるガンさんが、それなりに興味深くなってきた。

その粘りのある捜査と先入観を持たない姿勢、人の話をきちんと聞く態度が、事件の真相に辿り着かせてくれるのではないかな?

「俺は事実を信じているだけだよ。それに、警察は絶対に間違っちゃいけないと思うんだ。特捜本部の動きには、ある種の勢いもあるから、細かい矛盾を無視して、間違った方向へ突っ走ってしまうこともある。それはまずいんだよな。だから嫌われ者になっても、おかしいと思ったら言うことにしている」←ガンさんの本領発揮。

 

不気味で不可解な川島との関係は、終わったのか、次回作にも続くのだろうか?

やっぱり、実に実里は魅力的な女性だ。ガンさんならずとも、私も惚れたわ^^

 

どうば・しゅんいち(本名:山野辺和也)=1963年5月21日、茨城県生まれ。青山学院大学国際政治経済学部卒。86年読売新聞東京本社入社、社会部記者やパソコン雑誌編集者を務めるかたわら小説を執筆し、2000年『8年』で第13回小説すばる新人賞受賞。12年読売新聞社退社、作家業に専念。相当の速筆で、15年10月上梓の『Killers』が100冊目の著書となった。主な著書に「刑事・鳴沢了シリーズ」「警視庁疾走課・高城賢吾シリーズ」「アナザーフェイスシリーズ」「警視庁犯罪被害者支援課シリーズ」などがある。