『盤上のアルファ』 | てこの気まぐれ雑記帳

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グータラ婆が気ままに、日々の出来事や思ったこと、感じたことを、適当に書き綴っています。なんでも有りの備忘録的雑記帳です。

2020年11月4日、『盤上のアルファ』(塩田武士。講談社文庫)読了本

「お前は嫌われてる」。神戸新報県警担当記者・秋葉隼介は、たった一言で文化部に左遷され、将棋担当を命じられる。そんな秋葉の家に、突然転がり込んだのは、やけ酒の席で大喧嘩をした同い年の不遜な男・真田信繁だった。背水の陣でプロ棋士を志す男が巻き起こす熱い感動の物語。小説現代長編新人賞受賞作。(裏表紙「粗筋」)

 

 

 

*私の読書録は備忘録としての感想文。完璧ネタバレですm(__)m*

 

 

 

自信過剰で傲慢な故に、仕事はできるが嫌われ者の「神戸新報」記者・秋葉隼介。

社会部から文化部に左遷されて怒り、不貞腐れていた。

「言論の自由を声高に叫ぶ新聞記者が、先輩や上司に媚びへつらうようであってはならない」が秋葉の持論だったが、組織・会社の人事は所詮、好き嫌いで決まる。

右も左も分からず興味もない将棋の対局などを取材し、記事にしなければならないのだが、面白くない。

 

子どもの時に母が蒸発。以来、定職に就かない遊び人の父と2人暮らしだった真田信繁。

最低な父親だったが、なぜか将棋だけは真面目に教えてくれた。

ある日、父が借金取りに拉致されて独りぼっちだったところに訪ねてきた別の借金取り・林鋭生は、弁当持参で1週間、真田に将棋を教えてくれた。

 

社会に対して‟斜”な態度で生きている2人が出会い……。

職無し、家無し、一文無し‥冬でもタンクトップ姿の真田の、将棋にかける熱さ、真剣さに、いつの間にか引き込まれて応援するようになる秋葉や静たちと同じように、読んでいる私も真田を応援し、秋葉に声援を送っていた。

 

とんでもない状況で始まる3人(なぜか、その他も加わるけれど…^^;)の同居生活。

キャッチボールのように飛び交う関西弁の会話が、実に生き生きとしていて、楽しい。

そして、「新世界の昇り龍」林の再登場。真剣師・林の容赦ない教えに、なんど叩きのめされても音を上げずに付いていく真田。背水の陣でプロ棋士を目指す男の折れない強さ、格好良いなぁ。

 

将棋に関しては全く無知の私。藤井翔太氏がTVで話題になったので、少々興味を持った程度。

多分、将棋好きの読者にとっては、興味津々、ドキドキする駒の動きと解説なんだろうけれど、さっぱり分からず……(;^_^A

なのに、駒を打つ音、しなやかな手指の動き‥ピーンと張りつめた緊張感が伝わってきた。

TVの情報では伝わらなかったプロの世界の厳しさと、その世界に飛び込む人たちの裏にある様々な人生に想いを寄せた。

ちなみに、「アルファ」とは、狼の群れのボスだそうだ。

 

しおた・たけし=1979年4月兵庫県尼崎市生まれ。関西学院大学社会学部卒後、神戸新聞社入社。『盤上のアルファ』で、10年第5回「小説現代長編新人賞」、11年第23回「将棋ペンクラブ大賞(文芸部)」受賞。12年神戸新聞社を退社し専業作家に。『罪の声』(20.8.24記)が16年第7回「山田風太郎賞」受賞、16年版「週刊文春ミステリーベスト10」第1位。『歪んだ波紋』で18年第40回「吉川英治文学賞新人賞」受賞。