『死刑囚』 | てこの気まぐれ雑記帳

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グータラ婆が気ままに、日々の出来事や思ったこと、感じたことを、適当に書き綴っています。なんでも有りの備忘録的雑記帳です。

昨年読み終えた本の5冊目は、7月17日の『死刑囚』(アンデシュ・ルースルンド&ベルエ・ヘルストレム、ヘレンハルメ美穂訳。ハヤカワ文庫)本

ジョンと名乗るカナダ籍の男がスウェーデンで暴力沙汰を起こして逮捕された。グレーンス警部らの捜査で、ジョンの国籍は偽造されたものだと判明。さらに彼の正体は米国の死刑囚なのではないかという疑惑が浮かぶ。だがその囚人は、数年前に刑務所で命を落としたはずだった―ありふれた傷害事件は各国政府を巻き込む大問題へと変貌する。ジョンを待つ運命とは?極限状況から人間の罪と罰に迫る警察小説シリーズ第三作。(裏表紙「粗筋」)

 

死刑廃止活動が活発に行われているなかで、死刑存続を公約に掲げて選挙戦を戦った知事が当選、米オハイオ州で死刑が再開された。

州政府に人間の命を奪う権利はないとする主張は、遺族には償いを受ける権利があるとする主張にかき消され、犯罪防止のためのさまざまな政策よりも、死刑による見せしめの方が効果があるとみなされたのだ。

娘エリザベスを殺したジョン・マイヤー・フライの死刑執行を強く望んできた、知事の顧問を務めるエドワード・フィニガンは、ようやく娘の復讐ができると狂喜、速やかに執行されるよう期待した。

当のジョンは、逮捕された17歳の最初から10年以上経った今も、無罪を主張している。そして、ジョンの無罪を信じている人たちも…。

永い死刑囚監房生活で体調を悪化させていたジョンが、死刑を待たずに死んだ。エドワードにとって、ジョンの死刑執行を見ることで完結するはずだった復讐心は、不完全燃焼のまま。

 

あれから6年余、ストックホルムで傷害事件が発生。

捜査に当たったストックホルム市警のエーヴェルト・グレーンス警部は、このごくありふれた傷害事件が、実は遠いところではるか昔に起きた事件の続き、残虐な殺人事件と、それに続くはずだったさらなる殺人の続きであり、異様な事件に発展するとは、思いもしなかった。

 

重傷害罪の容疑で逮捕・勾留されたのは、カナダ国籍のジョン・シュワルツ。

しかし、パスポートが精巧に偽造されていると分かり、捜査を進めるにしたがって、どうにも辻褄の合わないことが……謎が謎を呼び……。

 

たった1人の男の身柄を巡り、スウェーデン、ロシア、アメリカ3か国が体面を掛けて動く。本人の意思はもちろん、真実さえ無視されて。

死刑執行前に死んだ男は、もう一度死刑が執行されねばならない。

 

なぜ死んだはずの男が生きているのか。

被害者遺族と囚人・加害者家族や、囚人を看取る刑務官、犯罪捜査に当たる刑事たちの心理描写がよく書き込まれている。

しかも話は、ジョンという名の青年の悲劇的な生き死にと、死刑についての疑問に終わらず、衝撃のクライマックスが待っているのだ。

 

子どもの質問「人を殺した人は、逆に殺されることになっているのなら、その人を殺すようにと決めた人たちは誰が殺すの?  人を殺すと決めることは、人を殺すのと同じだから、じゃ誰がその決めた人たちを殺すの?」

 

アンデシュ・ルースルンド=1961年生まれ。スウェーデンの作家・ジャーナリスト。スウェーデン公営テレビの報道記者として10年以上勤務。刑務所に関するドキュメンタリー番組制作時にベリエ・ヘルストレムと出会った。2004年、彼との共著で発表した「制裁」で第14回ガラスの鍵賞(最優秀北欧犯罪小説賞)を受賞し、作家デビュー。09年「三秒間の死角」で英国推理作家協会賞インターナショナル・ダガ―賞受賞。日本ではステファン・トゥンベリとの共著「熊と踊れ」が14年の「このミステリーがすごい!」年間ミステリランキング1位を獲得した。

ベリエ・ヘルストレム=1957.9.25~2017.2.17。スウェーデンの作家・評論家。服役した経験から犯罪防止団体KRISを設立。取材に訪れたアンデシュと知り合い、共著「制裁」で作家デビュー。

 

 

            ◎―今日(6日)の桜🌸

 

           John-Hoonの生歌で聴きたい曲「カシナム~茨」 音譜