本日(13日)、ハヤカワ・ミステリ文庫『解雇手当』読了
解雇でこそないが、失業ってことでは同じ~!
でも、手当もらえるんだよね、いいなぁ~!
しかし、タイトルになるからには、単なる手当ではなさそうな…!
と読み始めた『解雇手当』
確かに、ただの手当てじゃなかった
金融サービス会社「マーフィー・ノックス&アソシエイツ」のメディア関連担当つまり広報担当のジェイミー・デブルーは、1ヶ月間の育児休暇明けの土曜の朝、管理職会議に出席するようボスのデイヴィッドから指示された。
管理職でもないのに何故かと会社に行ってみれば…。
会社はボスの他には、実質的な仕事をしているクリーク(排他的集団)6人とジェイミーだけ。
会議室に、二日酔いがひどくて来るなりトイレに駆け込んだイーサン・ゴインズ以外の全員が揃ったところで、ボスが言った言葉は「我が社は廃業されることになった」
クビ? 青天の霹靂の社員に追い打ちをかけるように、37階建ての高層ビルの、オフィスのある36階を全面封鎖したという。
通信機器は一切使用不能になり、電源を遮断したのでエレベーターもストップ。非常階段のドアにはサリンを仕掛けた。
ここから出ることは不可能で、みんなを解雇するのではなく死んでもらうのだ。最後に自分も自殺する、と
クリークでないジェイミーには知らされていなかったが、ある意味ではクリークでさえも正確には知らなかった会社の事業は、政府の情報機関CI-6のフロント企業で、テロリストと疑われる人たちの財政ネットワークに浸透して資金源を叩き潰すことだった。
そんな秘密を知った以上、誰一人生きて帰すなという、上層部からの絶対命令を受けたボスの、用意周到にたくらんだ計画
しかし、1発の銃声が…
ボスの計画は大幅に違ったものとなり、疑心暗鬼と生存本能をかけたサバイバルゲームの様相に。
しかも、裏にはまた裏があり…
クリークにとっては、ただの文書作成屋にすぎないジェイミーの、心の葛藤に同感
「小さな日刊紙での報道の仕事では、編集者と記者は緊密な関係を保っていた。両者はともに、新聞の支配者―数字をいじるだけの非人間的な存在(サイボーグ)―をほとんど無視していた。仕事が終わって、ビールを飲みに行くときに、彼に声をかけるか?そんなのは、クランベリーソースをかけた七面鳥料理が待つ家に、ビン・ラディンを招待するようなもんだぜ。(略)いまはジェイミーがサイボーグのようなものだった。プレスリリース書きのビン・ラディン。」
記者や編集者は、サイボーグになってはいかんのよ
アップテンポで展開するアクションは、映画にしたら面白いだろう
著者のドゥエイン・スウィアジンスキーは「フィラデルフィア・シティペーパー」の編集長を務めるかたわら、大学でジャーナリズムを教えているそうな。2005年作家デビュー。翌年発表の『メアリー・ケイト』が評価されたそうだが、いまだ読んでいない。