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第13章
調  整

 シューティングドックの調整という主題についての以下の提案や、観察は実際的な経験の結果であり、決して犬の栄養学の形式的な勉強の影響によるものではない。この問題に関しては、多くの議論の余地のある考え方や慣習があり、又厳格に守られている秘密の方法等がある。色々な犬について、そのコンディションの調整の方法が如何に違うかという点を注目するのは大変興味のあることである。フィールド・トライアル愛好者の説は、橇を引かせる犬のそれとは可成り異なるし、同様にグレイハウンドのそれとは又、異なっている。又、犬のコンディションの調整は年と共に如何に変って来たかを学ぶのも又興味のある事である。約100年前、イングランドの獣猟犬は、肉食は筋肉を固くするだろうという考えから、完全に肉を無くした食餌を与えられていた。

 今日では、肉は犬のコンディションを適切にするのに大変重要なものと考えられている。偉大なシューティング・ドッグがナショナル・チャンピオンのタイトルを争うような場合は、時に調整は栄冠を左右する。チャンピオンは、その完璧な努力を演技の窮極における迄耐えなければならない。フィールド・トライアルチャンピオンの調整は、他の如何なる立派なシューティングドックとも多少異っている。

 それは仔犬の誕生から始まる。幼犬は立派な生育の状態に保たれねばならない。彼の骨格は良く発育し、しかも尚脂肪はつき過ぎてはいけない。肋骨の開きは成犬と幼犬とでは明らかに異りがある。幼犬の骨は軟かく、もし彼等が過剰の体重を持っている場合は決して適切に発育しない。成犬の圧し潰された肢は、生れつきの、或は遺伝的のものであると誤って考えられがちであるが、殆んどの場合、発育時期の過剰な体重に負うものである。

 仔犬達は殊に寄生虫に傷つき易く、それはもし、何度も感染したり、長期間放置されたりすると、生涯に残る打撃を受ける事がある。この状態は腸管内における慢性の刺戟の結果によるもので、これが犬を最良のコンディションに到達するのを妨げている。寄生虫は全ての犬にとって尽きることのない疾病であり、これによって彼等を最良の状態外にさせてしまう。

 犬は大抵一つや二つの寄生虫の侵襲を受けているので、犬の完全無傷な状態を来すのは仲々難しい。内外よりの殆んどの寄生虫に対し、直に有効な薬が出来ているが、貴方の犬を少なく共6か月毎に検査をし給え。もし南部の方に猟に行ったら、殊に心糸状虫(フィラリア)や、鈎虫(十二指腸虫)等に注意し給え。この寄生虫は、貴方の犬の演技に可成りの害を及ぼし、場合により致命的なものである。耳に寄生する「チーズダニ」も他の一般的な寄生虫である。多くの所有者はこれを、酷くなる迄無視してしまう。そうこうする内に犬は、何か月も不愉快さや苦痛に耐えなくてはならない。あなたの犬が頭を振ったり、耳を掻いたりするようであったら、自身で診てやるか、或はかかりつけの獣医さんに連れて行き給え。

 運動は発育期の犬にとって大変重要な事であり、十分な運動を与えられている仔犬達は早くから落着き最高に調整され、立派な成犬に発育するだろう。多くの訓練者達は、犬は年に数カ月休まなくてはいけないと信じているが私は自分の犬を一年中を通じて何時も働かせるようにしている。最も理想的な運動は、積極的な野外運動であるが、もしこれが不可能なら車に乗って田舎道を走らせるか、馬に乗り背負革をつけて道を走らせる事により、これが出来るだろう。私は車のフレームで作られた四輪の手押し車を考案した。フレームを露出し、短くした後に、ブレーキとハンドル機構を変更し、丁度四輪軽馬車が走るようにしてある。16頭位の犬を縦に並べて引張らせ、田舎道を素的な具合で走り回わることが出来る。それは殊にシーズンオフの訓練に良く適しており、僅かに2頭でも用いることが出来る。

 犬を運動させる場合、彼の身体の限界を越して迄強制してはいけない。或る犬は異常な決意と、猟欲によって、永久に自分を壊す程迄に走る事がある。暑い季節におけるオーバー・ワークは殊に注意して欲しい。夏の運動は未だ露が地上にある内の夜明けに行なうべきである。シーズン中を通じて、殊に犬の肢の裏が未だ柔らかい始めの頃は、あなたの犬の足が負傷したり裂けたりしていないか検査し給え。或る道路の表面は他のものより余計早く犬の肢の裏を傷つける事がある。霜が降りるような季節には、貴方の掌をしっかり圧し乍ら2・3回、彼を働かそうと思う場所の地面を擦ってテストして見給え。もし掌が傷つくようなら、犬の肢の裏も傷付くだろう。こんな時に彼に休みを与え、より良い気候を待つ事だ。又、あしのうらの爪も検査する。もし磨り減っていなかったなら短くするのが賢明である。

 食事は一般的な調整にとって大切な要素である。今日宣伝されている食物は、食餌の問題を非常に単純化している。良く知られている製品の殆どは、品質調整管理の許に試験され製品化されている。多少蒸気でむした骨や肉、そして自然のタラの肝油を加えることによりカルシウム、リン、そしてビタミンA、ビタミンDを十分に保証することが出来るだろう。犬は烈しく運動するにしても、1日に2回食事を食べれば良い。通常は食品製造者の指示は妥当である。カン詰の肉は、彼の食事に味をつけ、烈しく働く犬が必要とする他の動物性蛋白質を供給することになる。2・3オンスのラード或は羊脂を彼の毎日の食事に加えることは、寒い冬の期間に必要なエネルギーを供給する事になる。

 全ての食事は食物の味と香味をもたらす為に温くしてやらねばならない。冬には殊に温い食物はエネルギーの追加になる。もし貴方の犬が、艶々と良く育って行かぬような時は、貴方が用いているドッグフードを分析して見る方が賢明であろう。幾らかのドックフードメーカーは、彼等の製品を説明するのに多少不注意なことがある。暫く前、ドッグフード・メーカーは彼等の製品について大変誤った説明をしていたものである。それによる食事の結果は唯単に、その犠牲となった犬のコンディションが目に付くだけでなく、幼い仔犬達がクル病に罹ったり、或はコンディションが改善される前に何頭も死亡したりした。何カ月かの研究の結果、その製品は必要な分量より可成り少ない蛋白質しか含んでおらず、完全なドッグフードとして重要な他の成分にも不足している事が分った。更に多くの月日をかけた訴訟の結果、メーカーは莫大な、そして完全な賠償を為した。この実例はドッグフードのあらゆる品種のメーカーに、彼等の製品についての適切な説明をすることの重要さを警告した。もし貴方が、食事による良い結果を得られなかったら、用いているドッグフードを調べるのみでなく、評判の良いメーカーの製品と変えると良い。

 犬を立派に調整する為には貴方は、時に応じて犬の体重を調整するが良い。これには犬は適切に食べる事を覚えなくてはならない。犬は1日に2回か3回給餌する事により、適当に食べる事を訓練する事が出来る。彼の食欲が烈しくなるにつれて、次第に食物を増してやる。もし彼が如何なる理由にせよ食べるのを止めたら残っている食餌を取り去る。やがて彼は貴方が与えた食餌の全てをいち早く食べる事を学ぶだろう。1回ずつ手で給餌してやる間は彼に決して食べ過ぎさせたり、どんな食物でも犬舎に残してはいけない。彼がこのような食事の習慣を会得した後に、犬の体重を食事の増減によって調整することが出来る。働かない犬種に対して好きなだけ自分で食べさせる方法は良い。もし貴方の犬があまり烈しい働きをしないならば、自分で好きなだけ食べさせる方法は大変便利であり、又、全く安全である。殆んどのメーカーは、この自分で食べるだけ食べる方法を取っている人の為の製品を持っている。最初の数日食べ過ぎるからと心配する必要はない。彼は間もなくこのような給餌法に馴れ、稀な例外を除いては良いコンディションを保つものである。骨付きの肉や、天然の肝油は給餌者によりドックフードに掛けて与える。ラードとか羊脂は手で与えてよい。自分で好きなだけ食べる方式を用いる際は、新鮮な水を十分与えるよう注意する。食卓の残りは商品のドックフードと一緒に与えて良い。然し骨はあまり効が無く、場合により、大変な故障を来たす事があるが、犬達はそれを噛んでいる時は喜んでいる。

 犬を調整する場合、貴方の要求する事が、犬にとって身体の限界内かという事を注意すべきである。犬の完璧な演技を妨げる二つのむしろ一般的なハンディキャップがある。一つは通常成長期における不適当な栄養による結果のクル病である。カルシウムと燐の比率のアンバランスやビタミンDの不足等が最も普通の原因である。クル病に侵された犬の骨はカルシウムの不足により軟らかくなり変形し、そのまま固まって半不具犬となる。このような犬の症状は普通趾とか脚に出現する。他の不調としては股関節の生来の或は遺伝的の奇形と言われる股関節発育不全や亜脱臼である。もし犬が歩調の不規則や後肢や臀部を労わるような傾向が見られたら、直に犬の骨盤のX線写真を撮った方が良い。殆んどの獣医師は左程困難なくこの疾病を診断出来る。股関節発育不全は普通進行性に悪化する。犬にとっては後脚を使うのが次第に苦痛に満ちたものとなって来るだろう。非常に難しい事であろうが、この病気の診断が確実となったら、直に犬を取り替えなくてはいけない。

 犬の輸送について一言申上げたい。何故ならば、これは彼の仕事の出来映えの上に大変重要な関連を持っているからである。自動車のトランクは犬を運ぶのに決して良い場所ではない。もし貴方が、この提案に疑問を持たれるなら、貴方が試みにトランクに入り友人に蓋をしめて貰い、2~3時間田舎道を走ってみる事だ。その後で外に出て2~3km走って見給え。犬は自分で景色を見、そして快適であるならば車で走ることを喜ぶだろう。普通の旅では空腹の状態の方が良く、猟を始める前にカン詰の肉に少量のブドウ糖を混ぜた軽い食事を与えた方が良い。猟野で寒い日であった後には温い食事を与えるよう気をつける。何人かの狩猟家はこれをしようとしない。

 要するに貴方の犬を健康に、気分良く、楽しく、保たせるようにすれば、彼は演技を素晴しくしてあなたに酬いてくれるだろう。



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第12章
成犬の訓練の保持

 今迄述べて来たことが適切に遂行されるならば、その結果は完全に訓練された紳士用のシューティング・ドッグが出来上る筈である。彼のマナーは完全であり、彼は貴方の意のままに、完全な支配下にあるべきである。彼は猟に対し強い熱心さを示し、又それを興味と、大胆さと、決断力を以て為さねばならない。彼の天賦の猟欲は高度に発展しておらねばならず、彼は貴方の支配下にあるとは言え、対称物を選択し、ゲームを積極的に追求する事において、頭脳的に狩る自由を持たねばならない。彼のグランドランニングとパターンは、望まれたものとあまりかけ離れていてはならず、常に気持良くハンドルされねばならない。彼はゲームに大胆に積極的に近寄り、崇高さや、強烈さ、激しさ等の全ての天賦のスタイルを以てポイントしなければならない。飛翔と発射に対するマナーは完璧であり、運搬の指示がある迄は当初のポイントした姿勢のまま留っていなくてはならない。

 彼の性質は大胆であり、傷ついていてはならない。彼は偉大な自信を持つ一方、常に貴方に反応し、従がわなくてはならない。彼の猟野における態度は他念なく熱中し、その他の時は温く、情愛の籠ったものであるべきだ。彼は貴方の全ての命に直に応じ、次の言葉を理解している必要がある。彼の名前、ノー、ウォー、ステイ、カムイン、グッド・ボーイ、オーライ、ヒール、シット、ダウン、アップ、イン、フェッチ、そしてデッド・バードである。

 彼はホイッスルの短い二吹き、又それの長い、柔らかく転がすような音、そして貴方のボッブホワイトの鳴声を真似た口笛に応じなくてはならない。今や貴方は犬を、この段階に迄進歩させて来た。あなたはこの状態に良く訓練されたまま、犬を保つ事が出来ると私は信じている。貴方を助ける幾つかの示唆を差上げよう。

 一つの重要な事は、彼をブレーキングのしていない、或は未訓練の犬と一緒に狩ってはいけないという事である。これにより老練の犬を壊す事がある。貴方は今や未訓練犬や、ブレーキングのしてない裏切者を許す事により、努力して来た月日や費用を投げ捨てるにはあまりにも犠牲が大きすぎる。もし友人が猟に誘ってくれ、しかも彼がそんな犬を持っているのを知っていたら、アジア風邪に罹るか、或は貴方の犬を持たないで猟に行くか何れかをお奨めする。
 決して不意に現われた鳥を撃ってはいけないし、友人にも撃たせてはいけない。これを撃つという事は鱒を釣る為の虫とりか、ビーグルでグラウスを撃つような部類に堕する。不意に現われた鳥を撃つことにより、貴方の犬を駄目にする。もし彼が鶉の群や、1対の山鴫を蹴出したような場合、彼の反応は貴方のそれと全く同じであろう。これは今迄彼の心に植え付けて来た事柄とは全く反対のものであり、犬にとって悪い事であり、遂にはゲームを蹴出した事により却って威勢がついてしまう事になると思う。
 
多人数の猟は出来るだけ避けるが良い。1・2頭の犬の後に、3人を越す人数は何によらず多過ぎる。他の言葉で言えば、3人は仲間であり、4人となると群衆である。こうなると犬にとっては、あまりにも混乱させ興奮させるものである。もし彼が良く訓練された犬なら、彼は発砲者に向くようにパターンを画くだろう。しかし、4つも5つも銃口が取り巻いているような場合に、貴方はどんな種類のパターンを彼に期待するのであろうか?

 他に避けなくてはならないのは、貴方の猟友が貴方の犬に話し掛けたりハンドルしようとする事である。これは猟のエチケット以前のものだと思う。誰か他の人の犬に対して(勿論要請があった場合は別であるが)話し掛けたり、ハンドルしようと試みる事は貧しいエチケットの現れである。これが如何に犬を混乱させるものであるかは言う迄もあるまい。もし貴方がそのような立場に置かれたら、逡巡することなく敢然と難局に当り、違反者が貴方の犬を駄目にする前に機転のきいた方法で彼に説明してやり給え。

 次に貴方の犬を短期間で駄目にするのは友達に貸す事である。これが如何に犬にとって混乱に満ちた事であるか今一度考えても見給え。もし事情がどうしても犬を貸してやりたいような時には、その人に貴方が犬をハンドルするのを見て貰い給え。そしてその人が貴方以上にうまく犬をハンドル出来るようになる迄それを見てやり給え。

 更に彼がしてはならぬ事を注意してやらなくてはならない。犬が自分で悪い癖をつけて来る事も勿論あり得る事である。例えば兎を追うような事や、何百という癖があるだろう。悪癖を直すのは、それを芽の内に摘み取ってしまう事が重要であり、悪癖に気がついたら直にそれを矯正してやらねばならない。この例の場合、彼が兎を追うのを見付けた最初の時に「ウォー」を命じ、彼が最初に兎に出会った場所に連れて来て「ノー」の一語を以てムチで彼を打ち給え。一貫して彼が失敗した場合は何時でもそれを行う。程なくその癖は直るであろう。勿論、貴方は犬が狩っているゲーム以外の如何なる獲物も、彼の前で撃ち獲ってはならない。犬が既に理解している命令語は、彼が如何なる悪癖を生じた場合にも皆必要である。

 貴方が多分出会うであろう色々な場合の詳細については省略するが、しかし積極的な解決の背景は与えよう。鶏を殺す事は、ごくありふれた苦情である。この場合僅か1グラム程の一寸した予防により、100キログラム程の大きな治療となる。換言すれば、決して鶏達に近付けない事により、犬に鶏を見付けさせないで済むという事である。しかし彼が常習的な鶏殺しであったら、「ノー」の命令語に訴えムチで叩き給え。

 このようにして大体彼を良く訓練された状態に保つ事が可能である。勿論彼が間違った場合は、何時もそれを正してやる事を継続する。そして彼が何才になろうが、如何なる不作法にも決してさせてはならない。犬は一度訓練されたら、何時迄もそのままでいると思っている人が多い。普通のハンターが一生に持つ犬の数よりも更に多くの、訓練の行き届かない犬を持っている人を私は知っている。彼等は驚くような高い値段で素晴らしく訓練された犬を買って来て、数週間の内に、またたく間に犬を完全に壊してしまい、何時もこれを、犬を売った人のせいにして非難している。



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第11章
追加訓練の仕上げ

 現在の時点において、この犬が一般の狩猟家達には良く適合するだろうとは言い乍ら、もし貴方が眼識のある猟人の殆んどの人を満足させるような犬を望むならば、尚補い得る幾つかの追加訓練がある。彼を現在の段階に迄完全に進歩させて来た後(殊に貴方が犬の訓練は如何に容易く、且つ面白いものであるかに気が付いた後)には、貴方は疑いもなくこれらの幾つかの追加事項の完成を続けたいと望むだろう。もしその犬が、並の智能と性質を持ち、貴方が一緒にここまで遙々と到達したのであるなら、既に貴方達二人の間に存在する緊密な友情があるので、彼に追加を教える事については左程難しい事はないだろう。彼の心は今や貴方の教育を非常に受け入れ易い状態にある。

 この追加的な仕上げの中で最も重要なのは、他の犬がポイントしている時にバックするのを教える事だろう。バッキング或はオーナリング(同じ意味)とは、犬が他犬のポイントしているのを見るや否や、ポイントのポーズを示す事を言う。この目的は他の犬が狙った鳥を、彼が不用意に翔たせないようにする為である。私は不用意と言ったけれども、或る犬は嫉妬や対抗意識から他犬が狙った鳥を翔たせたり、ポイントを盗んだりする事がある。バッキングの際は、その犬は自身がポイントしているかの如くに余念無く炎のように烈しくあらねばならない。鳥が飛翔し、銃が火を吹いても彼はその儘で残り(ステディネス)、オーライの命令がある迄は動いてはならない。

 もしポイントしている犬のハンドラーが、鳥の居場所を犬に再度指示するよう犬を前に出した場合には、貴方の犬もそれに続いてゲームを再指示するよう試みるのは大変結構なことである。ときには、バックしている犬がイライラして来て、その場面に近寄ろうとする事がある。これは許してはならない。ポイントしている犬が動くか、貴方が彼に動くように指示するかの何れか以外は、不動のまま留っていなくてはならない。彼にバックを教えるには、既にゲームに対してブレーキングの出来ている他の犬と一緒に働かせ、彼に約8mの長さのチェックコードをつけて走らせる。他の犬がポイントに入ったら、あなたの犬に「ウォー」を命じ、チェックコードを手にとる。そしてコードを手に持ち乍ら、ポイントしている犬の方向に働かせる。彼がポイントしている犬を見付け、自発的に止ろうとしなかったら、「ウォー」を命じ、彼が最初ポイントし始めた時と同じような方法で彼を扱い給え。優しく話しかけ、彼をさすり、ポイントしている方向に後から圧し出してやり給え。もし、動こうとしたら、コードをグッと引っ張り前肢をムチで叩き「ウォー」を命ずる。彼が貴方に引き止められないでも立ち止っている場合は、他のハンドラーに彼の鳥を翔たせるよう頼み給え。貴方の犬は不動のまま残るだろう。もし動いたら飛翔と発射の際、ブレーキングを破ったと同様に扱い給え。即ちチェックコードで急に彼を引き戻し、必要あらばムチで打つ。それから彼を最初の位置に戻し、ポイントのポーズをとらせ、少なくとも5分間はそこに留らせる。彼が自分自身でこれをやる迄繰り返したらチェックコードを外しても良い。もし貴方がこの仕事を言われた通りに従うならば、あまり難しいことはない。

 多くの犬は極く最初からバックを自発的に行なうものである。バックは明らかに或る犬達が、他の犬より非常に高度に持っている遺伝的の素質である。繰り返すが私の系統のポインター達には、殆んどバックを教えなければならない事が少ないので大変幸運である。昨年の春であったが10週目の仔犬8頭と竿につるした鳥の翼を持ち乍ら歩いている時、全部の仔犬が、或る1頭が翼にポイントすると残りがそれにバックし合い、何度もこのように、お互にしていた事がある。これらはエルフユー・ジャングルの娘から生れたエルフュー・ハックルベリーを父に持った仔犬達である。2・3頭の素晴らしいシューティングドックがお互のポイントにバックし合っているのを眺めるのは、誠に感動させられるものである。

 貴方が、追加を希望されるであろう今一つの仕上げ訓練は、貴方の犬をホイッスルで狩らせるようにする事である。私達は今迄、ホイッスルを訓練に用いるのは犬を走らせる時以外には考えなかった。しかし、それは犬を猟の捜索に指示するのに有益な道具である。この段階までは私は、犬を近寄らせるのに犬の名前を用いる事で行なって来た。もし彼を或る狭い場所に持って来ようと思った場合は、「カムイン」と共に彼の名前を呼ぶ事にしていた。この目的に笛を用いることは大変便利な事であり、且つ更に効果的でさえある事を貴方は見出すだろう。今やホイッスルは犬を貴方の所に呼ぶのみでなく、彼の走行パターンを貴方が居る場所の前の方に合わせるべきものである事を犬に知らせるようにしよう。この目的にホイッスルを使用する場合、貴方が何処にいるかを彼に十分知らせられるように、それをしばしば長く、柔らかく、転がすように鳴らす。これは彼にコースを案内するのみでなく、貴方がどこにいるかと思って戻って来るような犬の持っている傾向を制限する役目も果すだろう。勿論もし貴方が、犬のレンジを貴方のフィールドで制限しつつある時には、不必要な事かも知れないが、レンジの狭い犬でも深い繁みに入っている時には大変に必要な事であろう。

 ここで一寸彼に教えるべき事がある。それは貴方がホイッスルを用い出すと、彼は間もなく、ホイッスルを吹いているのは貴方だということを覚える。これが彼が知らねばならぬ全てである。今一つ彼に教えたくなる事は、狭く狩らせる事である。狭く狩るとは、唯単に特別に小さい林を狩るとか、鶉猟で単鳥を狩る時とか、或はポイントされた鳥が動いた時、再度場所を指示するとかいう事を指す。これは貴方が、何のゲームの猟をやる場合でも大変重宝な事だろう。時にあなたは偶然の鳥が降りるのを見、その場所を捜して欲しいと思う事があるだろう。もし貴方の犬が狭い場所を捜すように訓練されていたら、こんな時なんの問題もないだろう。この際の合図は「ワーク・クロス」(狭く捜せ)の命令語か或は、ボブ・ホワイトの鳴声と同じような優しい口笛で出来る。私はボブ・ホワイトの鳴声の方が良いと思う。この口笛で、犬に狭く捜すよう教えるのは積極的な訓練よりむしろ連想の結果の方が多い。

 貴方は犬がゲームに出会った時は何時でもこの口笛を用いる事によって、彼の心の中にしっかりとこの事を覚えさせる事が出来る。彼がゲームに出会ったり、ポイントした時に、この優しい口笛を用い給え。又、貴方が鳥を翔たせに行く時も用いる。間もなく彼は、この口笛を聞くと、ゲームを発見しようと思うだろう。彼がこれを覚えたと思ってから、ゲームが居るのを知っている場所に近付き犬を呼び寄せる。そこで笛の短い二吹きで走り始めさせる代りに「オーライ」と言い、ボブ・ホワイトの鳴声を発する。彼はまさしく貴方の前方の鳥を見付ける為に直ぐ捜し出すだろう。もし彼がその場所から離れて行ってしまうようなら彼を呼び、又上のようにさせる。私の所有している一番広いレンジを持った犬達は、私がこの口笛を用いると2000㎡(2反歩)程の所を5分か10分も捜す。彼等がそれを聞いた時は「オヤジは鳥が近くにいるのを知っているな」と悟り、鳥を捜そうとする。

 もし貴方が、ジープに乗ったり馬に乗ったりして猟をするのに興味を持っているなら、この点について短い命令語の幾つかを作るのが良かろう。馬に乗って犬を働かせたり、或は射撃したりする場合も同様の事があてはまる。最初の内の訓練の殆どが徒歩で行われねばならないとしても、時に応じて馬に乗り、若犬の猟野訓練をするのも良い事である。これには彼等に、若い内から馬に馴れさせる事である。この小さい仔犬が最初に大きな四足の馬を如何に感ずるものかを考えて、彼等を細心の注意を以て扱い給え。馬が彼等に向って進んで来ないよう注意し、突然踏みつけたり、蹴ったりしないよう更に倍の注意を払い給え。仔犬が馬は親しい仲間だと一度び悟ったら、貴方の問題は実際には終ったようなものである。彼が更に馴れたら馬を用いてやり給え。どれ程馬を用いるかという事は個人的の好みであり、条件にもよることである。馬を使用する事は犬のグランドパターン(特に貴方が広いレンジの犬を望む場合は)の進歩に大変有益である。又馬は少々荒ら過ぎる仔犬が何か失敗したようなときに捕えるのに便利である。若し馬に乗って走っている場合は貴方が徒歩でいる時に比べて、犬と同じようについてゆく事が出来る。この事は馬から降りる事なしに、彼をヒール、カムイン、ウォーせしめる事を意味している。

 私は外の訓練の始めや終りに、犬が馬の横から私に飛び掛かるのを鼓舞するようにしている。これは彼等と私の結びつきを強める結果となるようである。同様な事がジープにも言える。ジープを彼の訓練や、或はそれに乗って猟を始める時など、機会ある毎に用い、貴方が歩いている時と同じように彼に命令に服するようにさせる。

 完成された演技犬を更に一段と飛躍させる訓練は、空中を飛んでいる偶然の鳥を見てポイントさせる事である。もし彼が捜せなかった鳥を貴方が踏み出して、それが犬の上を飛び、犬がそれを見たら、その瞬間そこで止るべきである。もし彼が止らないようなら、多分鳥の後を追い、結果においてブレーキングを破ったと同じ事になる。これを彼に許す事は逆行する事になり彼の訓練に矛盾する。こんな時は簡単に「ウォー」を命じ、彼にストップさせねばならない。彼の訓練中、このような状況下に、彼が自然に止ったような時は大変良い、しかしもし彼がこれを為さなかったら、「ウォー」を命じ、彼が最初鳥を発見した位置につれ戻し、飛翔のブレーキングを破った時と同様に罰する。

 もし貴方が、以上の事柄を上手に完成したならば、貴方は十分資格のある犬の訓練者であり、貴方の仔犬は真に高級なシューティングドックであると考えて良い。


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第10章
放したゲームの使用(置鳥訓練)

 犬を訓練する為に養殖した鳥を用うる事は比較的新しい考え方であり、若しそれが適当に用いられたならば大変素晴らしい事である。この技術の要点は、野原の中で囲いの中に放した鳥を犬にポイントさせるのにある、或る人々にとって養殖した鳥を使用する事は議論の的である。或る訓練者は、ほんの足しにしかならないか或は全く効果が無いと思い、ゲームに対し甘くなるが故に、良い犬を台無しにする事があると考えている。ゲームに対し甘くなるという意味は、ポイントに際し強烈さを失う傾向があると言う意味である。他の人はポイントに際し尾を振ったり、知って居て知らぬ振りをしたり(ブリンキング)、見落したり(ドロッピング)するのを養殖鳥のせいに帰する。殆どの場合、これらの意見は経験の不足か、噂か、或は養殖鳥を使用する際の誤ったテクニックの結果によるものである。

 一方、養殖鳥の使用は貴方の犬に狩猟の事については教えもしないし又、目的物を探し求め、或はゲームの位置を正確に指示する天賦の素質の進歩にも寄与はしないが、犬に如何にゲームを扱うかという事を教えるのに大変有益である。それは又、彼を飛翔と発射に対し不動を足らしめるブレーキングの狙いもある。私は養殖鳥や放した鳥の一般的な使用は革命的な犬の訓練法であると思っている。

 今日では殆どの訓練者が一つの方法や他の方法で放した鳥を用いている。アマチュア訓練者にとって限られた時間内で、彼の犬をゲームさばきに適当に訓練出来ると言う事は素晴らしい事である。若し(鶉のコールペン、鶉を入れる檻)があなたの犬舎に都合良く設置されたならば、貴方の犬をゲームに当てて3回か4回ポイントさせ、しかも15分か20分後に犬舎に戻って来られる事が可能である。これは朝仕事に行く前でも良く、夕方仕事が終ってからでも良い。冬の烈しい月日を除いて鶉のコールペンは一年中を通して快適な結果を与えてくれるだろう。これの一番良い季節は晩夏か初秋である。早春に生れた仔犬からこれを始めて、その秋鳥猟のシーズンが開始される迄には、かなり良く訓練されたシューティングドックを期待するのは無理ではない。最高のシューティングドックを希望し乍ら、時間の無い忙しい人々にとって鶉のコールペンは最高のものである。狩猟家達がしばしば良いシューティングドックが欲しいのだが訓練する時間が無いと私に告げる。これは大変不幸な事である。何故なら狩猟において、その最高の味わいを楽しもうとする為には、如何に犬をハンドルするかを知る事が必要であるからである。犬を上手にハンドルする事を習得するのに私が知っている唯一の方法は、犬を訓練する事である。犬をハンドルする事を学ぶ前に、既に訓練された犬を購入するのは、水泳を習う前にアクアラングを買うのと全く同じである。1週間の中3・4日で良いから1日に15分位犬に時間を裂く事の出来ない人はむしろ犬を飼わない方が良い。如何に素晴らしい動物であるかとか、飼育者にとって努力する価値のある結果を得られるだろうという点に関して無関心であっては犬にとっては誠に有難くないだろう。

 一方若しあなたが猟を楽しみ最高の犬を所有するのを望むなら、犬の進歩や訓練に使った比較的少い時間は立派に報いられる事だろう。鶉のコールペンを用いたり、少しの家庭訓練に用いるのに必要な時間は通常平日に得られる。猟野運動は更に時間を要するので週末とか日の長い夏の夕方に行うのが良い。一年中を通して私はナショナル・チャンピオンを含めたこの国の最高の幾つかの犬を訓育しているが、それでも尚仕事で大変忙しい。訓練時間はどうしても普通の働く日の残り時間になり易い。私は時間が無い為に無視された犬達に済まながっている人々に、いささか同情をしている。

 一般に犬を働かすのは一日の始めの時間か暗くなる前の時間である。私が提案する放し鳥を用いる方法の何れを使うにしても最低限度の時間で、しかも、ハンドラーも大変楽しく犬を訓練し、熟練させ、既に訓練した猟芸を保持する事が可能である。

 私は各地における多くの訓練者達によって養殖鳥が用いられる沢山の方法を目にして来たが、私は自身の方法を遂行するのに興味を持っているし、放し鳥を用いている誰もが、それぞれ秘伝を持っているのを承知している。各人はそれぞれ自分の方法が一番良いと思っているだろう。或る場合には、レストラン・アントニーが、かき料理の秘伝を厳重に守るようにその秘密が守られている。ここで先ず最初に、私は自分の苦労して獲得した養殖鳥を用いる独得の秘法を公開しよう。若し私がフィールド・トライアルの私の役割以上に一つの最高の事柄を獲得し得たとしたら、それは養殖鳥の一般的な応用であろう。公平なところ私は、それによって永年の間楽しんで来た犬の素質を割引きする事は出来ない。しかし彼等は確かに、この秘法のお蔭を沢山受けている。

 今迄の章で、放し鳥を用いないで、貴方の犬を如何に訓練したら良いかを示して来たが、次に述べる事柄も決してそれに矛盾するものでなく、好ましい結果を生む筈である。養殖鳥を用いる仕事には普通それに先立って準備が必要である。若し貴方が沢山の自然鳥に恵まれているなら、この方法を用いたり又この章を読んだりする必要はない。

 しかし私の考えでは、今日ではシューティングドックの訓練に興味を持っている人々の殆んどが、自然鳥の十分な供給を持っていないと思う。幾つかの州においては、シューティングドックを夏の期間ゲームに当てる事は非合法である。だがしかし秋の狩猟シーズンに備えての訓練や、ブレーキングの大半はこの夏の期間になされておらねばならない。

 他の如何なる方法よりも養殖鳥を用いる方法は、貴方の犬を高度の段階に完成させ、或は磨きをかける事が出来ると私は思っている。私はその過程を出来るだけ簡単に記述してみよう。所詮私のプログラム(計画)は長く複雑なものとなるが……。先ず鶉から始め、次に雉に進み、最後に鳩で終るが、各々の場合によってそのやり方は違っている。鶉は多分最も費用もかからず且つ最小の場所で、うまく育てる事が出来るだろう。最初の課題は先ず鳥の訓練である。貴方も知っているように鶉は自然には群をなして生活している。若し群が離れ離れになった時には出来るだけ早く一緒に集まろうとする自然の傾向を持っている。彼等はお互いに鳴き乍ら群の残りに場所を知らせ合う。彼等の鳴声は非常に遠くまで達し、歩き乍ら、或いは飛び乍らそれを信号として用い、彼等が如何に遠く離れて居ようが頓着なく再び群を型づくる。この性質が以下の方法の根本である。先ず基本として私達は鶉の群を作る。そして針金で作られた隣接した檻に二分する。私達は群の一部を解放してやり、彼等が又戻れるように檻に工夫をして置いてやる。このようにして群は又一緒になる事が出来る。

檻は5㎝角の骨組みで建てられ、それは金網で覆われている。全体は約2mの長さ、横1m、高さ約1mに建てる。床と屋根は厚い布地で覆い、今一つの床は、50cm程上げ、それによって実際には一つの艦を他の艦の上に置く事になる。一方の端はしっかりと閉じ、もう一つの上下の端にはそれぞれドアをつける。下の方の檻には図に示したように両側に檻の中に入れるような小さな金物で覆われた管をつける。この檻を貴方が犬を働かせようと思う場所に置く。これを例えば高い木の下とか、繁ったトゲのある隠れ場の繁みの近くとか、天然の或いは植えた牧草の近く等のように自然の鶉の居そうな場所に設置する。鶉は空中の略奪者がある為に、自分達を空に暴露したがらないので、彼等が生け垣や木の遮蔽物を使って檻に帰って来ることが出来るなら最適である。生れて12週目位の鶉を買って、晩春から初夏に檻を外に置く事が出来たら一番結構である。上・下段の檻にそれぞれ15羽位の鶉を入れ給え。新鮮な水、砂、砕いた穀粒、ゲーム鳥用の食物、そして砂浴びの為の可成り大きい皿に入れた砂を与える。鶉にヒヨコ大の花崗岩のかけらを十分に与えるよう注意する。この状態の許に、鶉は良く育つだろう。若し彼等がお互いに突き始めたら、中に緑の豆科の葉(例えばムラサキウマゴヤシやクローバー)を入れてやる。彼等が自分の糞で汚れないよう注意し給え。金網の床はこの為である。然し檻の一部の少しの所に彼等が寝むる為に木の床を用意してやる。檻に12週目の鶉を入れる際には、彼等は既に群を作っているのを見出すだろう。そして、それは2・3週間の内に切り離せなくなる。

 彼等をそこに入れてから2・3週したら、下の檻のドアを開いて鶉が外に歩いて出るのを許す。決して飛び翔たせてはならない。そしてドアを閉め、そこから立ち去り給え。これは朝にした方が良い。このようにして彼等に一日中檻への帰えり道を捜させ、管を通って中に入る事を覚えさせる。若し貴方の檻が適切に作られ、又良い場所に位置していたら、鳥達は僅か1・2時間の内に中に帰っているだろう。これを1・2週間毎日繰り返えす。その後に彼等を外に出してやった時飛び翔たしてみる。彼等は多分100mか或いはその前後、飛び去るだろう。常にドアを閉じ、それ以上追わないで離れる。彼等が檻に帰り管を用いるのを覚える迄、これを6~8回繰り返えす。彼等がこれを規則正しくするように覚えたら、犬の仕事に当てられる準備が出来たことになる。若し鳥達が檻に近付き難い所や、犬の仕事に向かないような所に飛んでゆくようであったら、檻を動かす必要があろう。草地は鶉を留らせ、又、犬の素晴らしい働きの両方の観点から最適の場所と思われる。若し耕地や並木のある広場等に飛んで行ってしまうと、鶉達は遠く走ってしまうので立派な、きれいな犬の働きを難しくしてしまう。檻を動かす時は、新しい場所で何回か鶉を翔たせて、犬をかける前に自分の所に帰る道を覚えさせる機会を与える。犬に檻を騒がせたり、鳥をおどかしたりさせてはならない。これは、「ノー」で止めさせ給え。一度彼が覚えれば、檻に対してはほんの少ししか、或いは全く気にしなくなる。

 鶉を用いる場合、檻からあまり遠くに追いやってはならない。私は大抵一度しか翔たせず、彼等が、あまり遠くに行かなかったら今一度翔たせる。若し、彼等が呼び檻からあまりに遠くに移動した場合は、或いはもう帰って来ないかもしれない。貴方の犬が彼等に対し如何に良く働く事が出来るかは、鶉達の訓練次第である。悪い気候の時や、夕方あまりに遅くには決して鶉を用いてはならない。自分達の檻に帰るのに十分な明るい時間を常に与えなくてはならない。鶉は犬の訓練にとって理想的な鳥であり、殊に若犬において然りである。彼等は強い体臭を持ち、走ったりする傾向はない。(少なく共雉程早くには)。彼等は非常に素速く飛翔ち、若し正しく育てられたら、強い飛翔者である。犬達は鶉に当ることを非常に喜ぶ。鶉に当ててどんなにたくさん犬を働かせても、鶉にポイントするのに倦きたり、興味を失ったりするようなことはない。鶉を用いるには、先ず最初に彼等を放してやる。次に普通の方法で犬を暫く走らせた後、鶉が居る場所に向け、自然鳥に対すると同様に働かせれば良い。

 もし、貴方が1対程の鶉を特別な場所で欲しい場合には、これも可能である。小さい20㎝四方位の木の箱を作り屋根にハンドルをつけ、底に滑り落ちるドアを着ける。呼び檻の下の段から1・2羽の鶉を取り、この箱に入れ、貴方が鳥の欲しい場所に置く。鳥を隠すのに十分なボサのある場所を選び、箱をそっと置き、ドアを取り去る。その儘、1・2分そっとしておき、鶉を草の中に放して注意深く箱を取り去る。正しく置いた場合は、鶉は暫くの間そこに留り、少なく共、貴方の犬をその鶉に当てるのには十分な時間があるだろう。

 このような檻を用いて、犬をどれ位鳥に当てられるかは一寸考えられないだろう。1シーズンに私は檻の下の段に17羽の鶉を入れ、8週間の間1羽も失わないで利用出来た。鶉は使えば使う程良く訓練されるように思える。私は1日に約3回程用い、すべての鳥を日没迄に檻に戻すようにしている。貴方が、もし鶉を交配時期に用いようとした場合は、一時オスとメスの何れかを離した方が良い。私はメス鳥を離しオス鳥を呼び手として上の檻に入れて、良い結果を得ている。もし一緒に放置した場合は、それぞれ対を作り自分の巣籠りをして決して再び群に戻せない。

 鶉を或る場所に置くことにより、特別な課題についての仕事が出来る。例えば貴方の犬にバックさせるのが難しいような場合は、貴方は先ず鶉を置く。そして成犬をその鶉に当ててポイントさせ、若犬にチェック・コードを付けて連れて来て、成犬にバックさせる事が出来る。またこの方法は、大に飛翔や射撃に際しブレイクさせるのに殆んど完璧な方法である。何故ならば、貴方は鳥が何処にいるかを知っており、犬を扱うのに可成りの時間を持てるからである。

 放し鳥を使う場合、貴方の犬を暫くの間ポイントさせるのを気にしてはいけない。「暫くの間」とは、少なくとも5分間を意味している。私は放し鳥に犬を20分か30分ポイントさせておく。一例として、私は犬に1時間40分ポイントさせておいた事がある。彼がポイントした後に、犬舎に帰り、他の2頭の犬を訓練し彼の所に戻ったが、私が離れた時と同じように完全にポイントしていた。その犬はエルフュー・マークスマンであった。このような訓練は犬に対して非常に良いことである。色々な場面が実猟においては起り得る。特に繁った林の中ではそうであり、貴方の犬を見付けるのに10分も15分も要するような時、貴方の犬は何処か見えない所でポイントしている筈である。犬を暫くの間捜し求めたあげく、彼がポイントしているのを見付けた時には、私は大変なスリルを感ずる。これは完成された犬の話である。

   雉

 雉は唯単に檻に帰るように訓練するのが難しいという理由で、仕事をさせるのが大変困難である。必然の結果として損失は時により高価につく。その主な原因は、雉が鶉のように安価でないということである。雉を仕掛けで飛翔させる原理は同じ考えに基ずいている。つまり、類は友を呼ぶのである。もし、鳥達が良く訓練され、また、貴方が一時に何度も追わなければ、貴方は多分そんなに多くの鳥は失わないであろう。

 雉は犬を働かすのには、非常に優れた猟鳥である。私はこのような積極的な言明をする理由を持っている。殊に鶉を用うるのに馴れた訓練者は、雉を用いないようである。知識の乏しい雉の扱い方ばかりしている殆んどのものは、雉に馴れず、如何にそれを扱ったら良いかも知らずにいる結果なのである。丁度この過ぎた冬に私が、ナショナル・アマチュア・クウェール・シューティングドック・チャンピオンシップに随行していたときに、1人の競争相手が、「もし私が思い通りにやったならば、この地方の残った雉は皆とられてしまうだろう」と私に告げた。私の答えは唯簡単に、彼が私の好きな鳥について話していたのだという事を彼に知らせるに留めた。私が、もし次の点を取り上げたなら、それは可成りな議論となったと思われた。即ち彼は経験の不足か、或はそうでなくて、彼の犬が唯単に、雉を扱い得なかったのを悩んでいたか、何れかであると推測した。殆どの犬が雉を良くさばくが、或る小数の犬にとっては、それに馴れる迄或る期間を要する。他の大部分の犬は直ぐさばき方に馴れる。雉のチャンピオン戦に初めて出走して、ナショナル・フェザント・チャンピオンを獲得したのは雉をやったことのない鶉犬のポインタ・ホームアゲイン・マイクであったと記憶している。雉の檻は犬を働かせようと思う場所(出来れば典型的な雉場)の中に正しく設置されねばならない。理想的のフィールドは、数年間ほったらかしてあるような小麦の切刈の所等で、来年芽を出すような草木等はこの目的に適切である。檻は6m四方で、高さ2mあり、2.5cmの六角形の家禽用の金網で完全に囲われておらねばならない。金網は、20㎝か25㎝地下に入れるよう注意する。骨組みは、5×10cm角の材料で作られる。檻の高さで横幅1mの一対の大きなドアを用意し、それぞれ反対の側にとりつけ、4つの管を四面それぞれの側に1つずつ付ける。管の大きい方の口は約45㎝の直径を持ち、檻の傍に地面に水平に置き、約60㎝檻に入って行き、小さい方の口は、約20cmの直径に次第に狭められている。檻の中にあるこの小さい口は、地面から45㎝程持ち上っていなくてはならず、それは針金か棒で支えられている。新鮮な水、食物、砂、そして松の枝、穀物の茎、或は繁ったトゲのような隠れ場を檻の中に用意し、それによって雉が外から彼等を脅かす、如何なる迷い犬や動物に対しても身を隠す事が出来るようにする。何処に置くにせよ、孵化後25~50週、又12~15週の雉達をこの檻に入れるが、早ければ早い程、鳥達は晩春か初夏に利用出来る。

 幾つかの家禽用バンドと長い柄のついた網を買って来て、雉を放す時に、この網で2・3羽を捕え、それぞれにバンドをつけ檻の外に放す。このようにすれば、彼等は飛ぶ事が出来ないので、歩いてその場を離れる。これ等のバンドをつけた鳥のみを毎日か或はそれ位、放すようにする。次第に遠くの距離から放し、放した時飛ばせるようにし、彼等が檻に帰り、管を通って中に入ることが出来るようになる迄続ける。8回か10回程この方法で訓練する。放鳥訓練で捕える際あなたは、彼等につけたバンドで見分けることが出来る。

 今や貴方は、自然の鳥を狩ると同じように訓練された雉に犬を当てる事が出来る。しかし、ここで私が強調したいのは、私達が好きな場所で積極的に鳥を放す事が出来る点である。これを為すには、鳥を檻から取り出し、少し離れた可成りボサの繁った場所に置く。その際鳥の頭を翼の下に入れて両手で鳥を掴み、腕の長さ位の弧を画いて10回から15回振り回す。それから注意深く叢の茂った所に鳥を置く。鳥は眩惑されてどこに置かれても10分から1~2時間そこに居残っているだろう。雄雉も雌雉も両方が使用出来る。鳥を置く場合には、出来るだけそこを掻き回したり、又人の臭いをつけたりしない方が良い。綿の新しい手袋の使用はこの目的に良い。雉を用いる場合、決して1回より多く使ってはならない。もし飼ってある檻からあまりに遠く追いやられると帰って来ないだろう。若い雉は大変使い易いように思える。それは雉が次第に成熟すると、飼育檻にあまり帰りたがらなくなるように思えるからである。鶉や雉を用いる場合、鳥を犬達の為にしばしば撃落してやる事は良い事である。既に自然鳥について記述したと同じような方法で行ない給え。猟野訓練を、鳥に対し良い演技を以て完成するのは良い事であり、鶉も雉もこれをより早くするのに大変有益である。もし貴方の犬が、自然鳥に対し立派な演技を示してくれるのならこれは素晴らしい事であり、その時は訓練を終えても良いが、もし彼が、如何なる自然鳥をも正しく位置を指示する事が出来ず、且つゲームに対する態度に混乱が見られるようなら訓練を止める前に、放し鳥で訓練しなくてはならない。この訓練により、そのような犬に非常に良い結果をもたらし、彼等は熱意と精神を高度に調整しつづけることが出来る様になる。

 養殖鳥に対して犬を仕事させるのは、訓練にとって驚くべき程の助けであるにしても、それは常日頃の猟野活動の補足としてのみ用いられなければならない。この中には猟野における実地経験を否定する色々な誘惑物がある。何故なら、この仕事は素速く、又多分より面白いからであり、しかも、それをやり過す事がある。あまりしばしばこれを用いると、あなたの犬が放した鳥に倦きてくる事があり得る。他のものと同様に、この変化は個々の犬によって異る。もし貴方の犬が、興味を失って来たようであったら、彼の為に何羽かの鳥を撃落してやり、彼をより多く自然鳥に当てるようにし給え。

 これらの放し鳥を用いて働かす場合、貴方の他の犬達にその活動の状景を見渡す事が出来るように犬を繋げる場所を使い給え。もし、貴方が1頭以上の犬、或は犬を持った友人と一緒にこの訓練をする場合、貴方が使わない犬を繋ぎ動作を見守らせるようにする。これは普通犬達を興奮させ、彼等の欲望をかき立てる。殊にゲームに対して少々甘かったり、シャイのある犬にとって刺激的である。放し鳥を用いる場合、私は4~5頭の犬を棒につけた鎖に繋ぐのを常としている。これは10m~12mの可成り重い鎖で両端をしっかり棒に固定してある。鎖にする理由は、時に犬が興奮して、革や綱だと噛んでしまうからである。犬を繋いだ後、鎖に繋がれている犬が見えるように鳥を放したり置いたりする。そして一度には一頭の犬を用いる。もし彼が未だ野外運動をしてなかったら、先ず20分か30分彼に狩らせた後、鳥のいる処に廻って来てポイントさせるようにする。彼がポイントしたら、時に他の犬をバックさせる為に鎖から連れて来る。これには勿論時間を要するが、この間ポイントしている犬はポイントを保持していなくてはならない。次に鳥を翔たせ、犬を鎖の所に戻す。この間鎖に残された犬達は全ての過程を注目する事が出来、時に非常に鼓舞されるが、勿論これは私達の正に望む所である。このような興奮させる状況下で、良く犬に制御させることは時に難しい事があるが、如何なる環境のもとにおいても貴方の支配に従うという訓練に、非常に良い事である。実猟において興奮の度合が非常に高調する時があるだろう。突然沢山のゲームにあったような時は興奮が高度となる。こんな時こそ、コントロールと訓練が必要な時である。外見完成されたように見えるガンドックがこのような状況下で、すっかり混乱してしまうのを何度も見た事がある。

   鳩

 飼い鳩は猟鳥ではないが、犬達にポイントさせるような非常に良い臭いを持っているし、訓練の目的にも大変うまく使用出来る。鳩の使用は多くの訓練者の間でも大変な議論を呼んでいる。しかし繰返すが、私はこれ等の鳥を使って成功裡に犬達を訓練しているという点を指摘したい。鳩を用いての立派な結果は、その方法に依存するところが大きい。これらの鳥を用いて行なう仕事が好都合なのは、安価であり巣を作り育てるのが簡単であり、又、鳩が巣に帰る自然の本能を持っていることである。彼等は何んな種類の檻でも良く、例えば屋根、ガレージの二階、或は納屋等でも良い。この檻はレース鳩のファンが用いているような普通の引戸を持っていなくてはならない。これは針金の入口で巣箱の中に入れるような戸を持った台で、中には入れるだけになっている。このように放された鳥は巣箱に戻れるが、外には出られない。鳩も犬達を働かす前に鶉や雉と同様に訓練されて置かねばならない。

 彼等が巣箱の中で6~8週間程経ったら、ほんの暫く外に出し始める。皆巣箱に帰るのに馴れる迄これを続ける。先ず最初にそこで巣ごもり出来るようなら最高である。巣箱で育った鳥は更に良く適している。

 犬の為に鳩を放す際には、雉の時示したと同様な方法で行なう。鳥の頭を片一方の翼の中に入れ、腕の長さに弧状に何回も振る。それから鳥を隠すのに適当な、かなり茂ったボサの中に置く。鳥を置く前に鳥でその周囲の草をこすり、可成りな臭いを残す事は良い考えである。その際は貴方の人間臭を消すために手袋を用いる。これは放し鳥を扱う時は何時でもやらなければならない。置く場所は出来るだけ荒らさないようにし、犬をゲームに当てる時は、どんな些細なものであっても常に風向きに注意し、又、犬にポイントさせる際は決してゲームの風上に立たぬよう注意する。あなたは鳩が他の猟鳥程早く翔たないのに気がつくだろう。彼等は催眠術からそれ程早く回復しないように思える。何故なら、このようなタイプの養殖された老鳥は、更に申し分なく働くように見えるからである。
 この段階から後は、貴方が他の養殖鳥について働かせて来たと同じように行なう。鳩を非常に申し分なく働かせるもう一つの方法は、ミシガン州ハリソンのラッカス・スペシャルティー製作所で作られたスチュワートの放鳥器を用いる方法である。これは電気かコードによって開く事が出来るスプリングの開き戸を持った小さい鳥籠である。この放鳥器を適切に使用するには、2m位のかなりの茂みで相当下草の繁った所を選ぶ。放鳥器を良く茂みの中に置き、自由に器械が作動出来るよう確実にしておいた上で、出来るだけ隠す。そして茂みの中に3・4羽の鳩(成可くなら未だ飛べないような若鳥)を入れる。次に成鳥を放鳥器に入れる。これにより、若犬を働かすのに相当の臭いを与える事になる。

 貴方の犬がポイントに入り、少しの間彼をハンドルした後に、予め貴方が鳥に近寄ろうと思った方向の地面に置いてある放鳥コードを引き、鳥を翔たせる。これにより1羽の鳥が空中に飛び翔つ。そして空砲を発射し、その間犬はポイントの姿勢を1・2分間保つ。その後犬に引綱をかけ捕まえる。こんな風に犬を働かせる間は、犬が完全にブレーキング出来る迄は常にチェックコードを用いる。地面の上の鳥を犬に捕えさせるのは常に避ける。もしあなたが望むなら、若い鳩達をそこに残し、放鳥器に再び他の鳩を入れ、引き続き他の犬や同じ犬を働かせる事が出来る。もし終了したら若鳥を巣箱に戻してやる。同じ放鳥器を鶉に用いる事が出来、多少大きなものを用いて、雉でも同様な方法で同じ良い結果が得られる。

 養殖鳥を用いる際は、何時でもそのゲームが、十分長い時間犬の為に臭を発散させるよう注意し、人間臭は何んなものでもそれを減らすよう注意しなくてはならない。人間臭は、その臭いの状態を変化させてしまうから。或る日の臭いの状態は、又別の日のそれとは大変な違いがあるように思える。暑い乾燥した日は悪い。同時に又、放し鳥は常に見えないように隠さねばならない。犬にとってゲームが見えないという事は、殊に若犬にとって非常に大切な事である。一方ゲームをあまりに深く茂みの中に隠してしまうと、全ての彼等の臭いを閉じ込めてしまう。

 上述の事は、貴方に養殖鳥を用いるのに十分な知識と基礎をうまく与えるだろう。以上の鳥達について説明した中の一部でも、或は全部でも試みられるようお奨めする。


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第9章
運  搬

 幾つかの犬は自然に運搬をし、時にそのような犬が立派な運搬犬になる事がある。しかし若し犬が運搬をするように要求された場合は、彼は強制的に訓練されねばならない事は意見の一致をみている。強制訓練とは、彼が命令により、又かりに彼が気が進まない時でも運搬をしなければならない事を意味する。殆んどの犬は若犬の頃、煽てられたりすると、自然に運ぶものである。しかし或る犬は満足すべき結果に達するには強制訓練しなくてはならない。運搬を要求しているトライアルで、競技している殆んどの犬は強制訓練を受けている。

 若し貴方が強制する事なしに、彼に運搬を教える事が出来るなら、あらゆる意味でそのようにし給え。あなたは彼の運搬しようとする自然の傾向を進歩させる事を楽しみ、結果として大変良い心を持った犬を獲得する事になる。アマチュア訓練者にとって、この仕事には必要な懲罰を含んでいる為に、犬の個性を傷つける事なしに強制訓練をする事は大変難しい事である。

 犬に運搬を教え始める際には、成可く運搬具を用いて彼と遊び乍ら始めると良い。大変都合の良い運搬具を作る簡単な方法は約60 cm四方の麻布の切れ端を出来るだけ堅く巻く事である。この巻いたものは直径約5㎝、長さが約20 cmあれば良い。針金を輪状にかけて結び、或はしっかりと縫いつける。私は何時も沢山の雉の香料を、巻く前にその中に入れる。彼がこれを銜えたり、一緒に跳ね回ったりした後に、それを数m先に投げ給え。普通彼はそれを銜える為に走って行きそれと遊び続ける。このゲームをたっぷり遊ばせた後、運搬具をくわえた彼を、チェックコードで貴方の方に引き寄せる。同時に「フェッチ」(持って来い)の命令語を与える。彼があなたの処に来たならば、優しく言葉をかけ、若し彼が菓子で応ずるようなら、それを与えて報いてやる。常に命令語とチェックコードを用いてこれをしばしば繰り返す。何時も彼に面白く仕事をさせるように注意し給え。昔し彼が少しでも興味を失ったように見られたら、彼を走らせたり、或は他の訓練に切り替えた方が良い。彼が進歩するにつれて運搬は更に複雑にしてゆく。彼が「フェッチ」の命令に良く応ずるようになったら、貴方が運搬具を投げる間、彼をシットとステイせしめ、貴方が「フェッチ」を命ずる迄ステイさせる。

 さてここで私共は強制的な方法を用いて、これと同じ段階に犬を持って来る事について論じて見よう。繰り返すが、強制訓練には色々な方法があり、多分それぞれ皆有効であろう。しかし次のような方法が最も一般的な方法と思われる。この主題に入る前に、彼等の全てが受けて来た家庭訓練において、私達が論じて来た要点を思い出して戴きたい。犬に運搬を教える事は決して易しい事ではなく、大変な期間を要するだろう。一時期に一段階ずつ決して急いではならない。この期間中は立派な訓練と言われるものの全ての必要な要素、殊に忍耐、一貫性、そして繰り返しという事を銘記する事は大変重要である。

 この訓練を始めるには、貴方が今迄家庭訓練で用いて来たのと同じ場所を用い給え。何時もの家庭訓練のおきまりの命令の幾つかをざっと行い、犬を落着かせた気分にさせる。最初の数教程は犬に馴れさせる為に運搬具と遊ばせると良い。そして運搬具には予め用意した香りをつけて置く方が良い。彼が運搬具と遊び始めて間もなく、彼を手許に来させ「シット」を命ずる。犬の口を開け、運搬具を唇を噛まないように注意してやりながら口に入れてやる。

 彼の口の中に運搬具を入れたと同時に「フェッチ」の命令をかける。少しの間そのままにさせて置き、運搬具を彼から取り上げる時は「オーライ」と言い優しく話し掛け、賞めてやる。若し彼の口の中に運搬具を入れるのが難かしかったら、貴方の右手で彼の前肢を握り、左手で口の中に入れる事が出来るように彼が口を開ける迄締めつけ給え。この方法により、彼が正しく運搬具を銜えたら直ちに前肢を離してやる。彼は間もなく運搬具を口の中に入れた方が良いと学ぶだろう。

 彼の口の前に運搬具を持って行ったら、直ちにくわえるようになる迄これを続け、貴方が「オーライ」を以て受け取る迄そのままで居させる。若し彼がそれを落したら、この動作を繰り返し、アゴの下を右手で軽く叩き「フェッチ」を命ずる。常に貴方の左手は方向の指示とか運搬具に用い、右手は犬を働かすのに使うようにし給え。犬がそれを充分に銜えたままでいるようになったら、直ぐ数m程歩き、運搬具を受取る為に左手を延ばし乍ら「カムイン」を命ずる。彼が運搬具を命令によって銜え、貴方の所に持って来るようになる迄続け給え。しかる後彼を一寸離して「ヒール」を命じ運搬具を運ばせる。

 次の段階は、彼に運搬具を銜え上げるのを馴らす事である。ここで再度強制を用いる。彼が坐った姿勢でいる前に運搬具を置く。そして彼の前に立ったまま「フェッチ」を命ずる。若し彼が命令に従うようなら良いし、そのまま次の階段に進む事が出来る。しかし若しくわえ上げないようであったら(それは最もありそうな事であるが)私達は次のように進めなくてはならない。貴方の一方の足を彼の体の上を一跨ぎし、彼の両脇に足を置いて同じ向きになる。(丁度箒をまたいで両足をひろげ、柄を手で持ったと同じように)。次にそっと彼の後肢の先に貴方の踵を乗せ、同時に彼の首をしっかり握で、彼の頭を運搬具の方に押してやる。貴方が彼の脚をかがとで圧迫してやると、彼は口を開けるだろう。そしたら彼の口で運搬具を一すくいに銜え上げさせ脚を離す。これをすると同時に「フェッチ」の命を与える。彼が命令によって運搬具を銜え上げるよう、必要なだけ多く繰り返す。それが出来たら優しい言葉を与え賞めてやる。

 繰り返すがレッスンは短く興味を持たせて行なう。この命令が完全に習得出来たら、運搬具を数m離して置き、「フェッチ」を命ずる。若し彼がそれに失敗したら運搬具の処に連れて行き、彼が近い距離でそれを持って来る事が出来る迄再度やり直す。貴方がこれを完成したら後は簡単である。しかしこの点に到達する迄が一仕事で、或る犬は運搬を会得するのが他の犬より大変早い事がある。若し貴方の犬がそれを習得するのが遅いように見えた場合でも貴方は何時も忍耐を以て、彼がそれを成し遂げる迄、上述のテクニックを繰り返さねばならない。貴方が運搬具を遠くに投げても尚運搬出来るよう次第に彼を仕込み給え。

 次の段階は今迄より草の丈が高く、運搬具を投げても、彼が直にそれを見付ける事が出来ないような場所に連れてゆく。彼は必然的にそれを見出さなくてはならない。あなたが運搬具に付けた香りが、彼にとってそれを探すのに役立つだろう。そしてそれを見付ける事をフェッチと結びつける事が必要となるだろう。この場合「フェッチ・デッド・バード」(死鳥を探せ)を用いると良い。これは彼にとって新しい言葉であり、又、猟においては貴方が最もしばしば用いる命令であろう。彼が「デッド・バード」と言う言葉から読み取らなくてはならない意味は、この近くに死鳥か半矢鳥が落ちており、それを見出す迄その場所近くを深さなくてはならないのだ……と言う事である。彼が運搬具を見付けたなら、あなたが出発した地点迄戻り、そこで彼から運搬具を受け取る。彼が運搬具を探すのを習得したら、例えば茂った植込みの垣の反対側等のような難しい場所に投げてやる。無理のない条件ならどんな場所でも運搬をするようになる迄これを続ける。繰返すが、貴方が「フェッチ」を命じたら必ずそれを行なわせ給え。「フェッチ」を命ずる前は常に「シット」か「ウォー」を命じ、彼が指示される迄は絶対にフェッチをしないようにする。彼が運搬を良くやったら何時も賞めてやる。彼は間もなく楽しんで運搬をし、問題が彼を運搬に馴らす事ではなくて、むしろ彼が指示される迄運搬しようとするのを押える事なのを貴方は発見するだろう。
 次の段階は彼に運搬具を置いた所を見せないで運ばせる事である。犬を坐らせ、「ステイ」(留まれ)を命ずる事から始める。そして彼の見えない所迄歩いてゆき、運搬具を落す。この際貴方の足跡がそこに真直ぐに導かないよう注意し給え。そして犬の処に帰り、彼の右側に立ち「フェッチ」を命ずる。同時に貴方の左手を運搬具の方向に振る。彼は貴方の臭いに従って運搬具の処に行くだろう。若し彼が出来なかったら、彼と一緒にそこに行き、彼から運搬具を受け取る前に最初の位置に戻って来る。これを2~3回繰り返す内に彼は会得し、喜んでこれをする筈である。これが出来るにつれて運搬を更に複雑にしてゆく事が出来る。

 今度は実際に運搬具を捜索させる事を教える。例えば鳥を翔たせるムチや手袋のような品物を、何百mも離れた森や野原に戻って、持って来るようなポインターを私はかって持った事がある。

 次に私達は運搬の方向を教えよう。これには予め香りのつけられている二つの運搬具で行なう。第一に犬をシットさせる。そして彼の数m前に立ちながらステイを命じ、一つの運搬具を右手2~3mに、今一つを左手2~3mに投げる。ほんの少しの間待った後、右の方に向き、左手をそれに振って右に投げた運搬具の「フェッチ」を命ずる。若し彼が左の方の運搬具に行こうとしたら「ウォー」を命じ右の方に行かせる。これを左の運搬具にも続いて行ない、貴方が左手で指示した方向の運搬具を取りに行く迄続ける。彼がこれを理解したならば、彼に貴方が欲する運搬具を運ばせる前に遠くに後退する。次第にこれを複雑にしてゆき、専用にした腕の方向と共に常に二つの運搬具を用いる。彼が第一の運搬具を運んだ後に第二の運搬具の方にやるようにする。やがて貴方は白分の欲するどの方向にでも彼に運搬を指示する事が出来るようになる。

 さて私達は、この習得を猟野において実際のゲームに当て嵌めてみよう。これは勿論私達の犬がゲームに完全にブレーキング出来る迄は出来ない。何時もの方法で彼の為にゲームを撃ち落してやり給え。彼が発射にも不動であるよう注意する。彼に近寄り優しく話しかけ、ポイントの位置に置き、次に左手で撃ち落した鳥の方向を指して「フェッチ」を命ずる。若し彼が応ずる事が出来なかったら鳥の所まで彼と一緒に行き、運搬具で今迄して来たような方法で、代りに鳥を用いながら、良い結果が得られる迄、必要なだけやり直しをする。これを野外に連れて行った時は何時も行なう。彼が良く出来たなら鳥の頭を与えて報いてやる。若し彼が鳥を仲々見付ける事が出来なかったら彼と一緒に行き「フェッチ・デッド・バード」と優しく話しかけ、彼が鳥を見付け出す事が出来る迄傍に居てやる。彼が死鳥や半矢鳥を見付けるのを会得した後は、彼が運搬した鳥を受け取る為に、常に鳥を射撃した位置に残るようにし給え。若し彼が鳥をあなたに渡すのを嫌うようだったら、普通の方法でそれに手を延し、オーライと合図し、同時にムチで彼の背部を打ち給え。彼は直に鳥を離すだろう。

 彼が鳥を非常に噛み荒すのを見付けたら、約5㎜~1㎝位突き出るように運搬具の一つに、幾つかの釘を突き通し給え。8本か10本もあれば十分だろう。彼を訓練する時、この運搬具を利用すればやがて彼はうまく改善されるだろう。私は実際に卵を運ぶように訓練した事さえある。この仕事は彼の歯(口)を柔らかくする。若し貴方が沢山の卵を入手出来るなら、それを試みるのも良いだろう。最初の内は貴方の犬は卵を壊すが、「ノー」を用いてムチで打つと、次第に自分は悪い事をしたのだと解って来る。最初は彼の口の中に注意深く卵を置くのを手伝ってやらなくてはいけない。後は今迄と同じように進める。

 以上、貴方が家庭訓練の根本法則に従うなら、殆んど困難ではない筈である。


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第8章
シューティング・ドッグのブレーキング
(強制訓練)

 ブレーキングの語が意味するのは、他の指示がある迄、犬は鳥の飛翔や銃の発射(ウイング・アンド・ショット)にも不動のまま留まっている訓練の事である。この事は実猟をうまく行うのに絶対的に必要なものではない。多くのハンターは飛翔には不動のままにさせ、発射の際は動いても良いとしている。或る人はゲームを更に早く運搬する為に、飛翔でも動いて良いと提唱している。

 私個人としては、シューティング・ドッグは飛翔にも発射にも両者共不動のままで、指示された場合のみ動くべきであると思っている。多分最も重要な事は、ゲームに対しては完璧に不動にブレイク(調教)されているべきなのが本質とされるフィールド・トライアルに、私の犬の殆どが出犬されているからであろう。これを別としても私個人としては、ゲームに対しては不動である犬を見るのを好み、それは彼が完全に支配されていると考えられるからである。若し犬が飛翔や発射に際し動くのを許される場合、彼はそれを自分の意志で行う事であり、その時間はあなたの支配を離れる事になるからである。これは正常な首尾一貫した訓練に矛盾する事になる。更に考えられる事として、若し彼に飛翔と発射に際し動く事を許したならば、例えば貴方が犬を見出す前に鳥を叩き出したりするような、色々な悪癖に導く事が出来るからである。私が訓練した全ての立派な犬は、皆飛翔と発射に不動であった。立派な猟野の演技犬にとって、如何にこれが重要であると私が感じているかはここで詳述はしまい。

 これについての犬のブレーキングは訓練プログラムにおいて最も難しいものの一つである。これを行うには多くの方法があるけれども、私はここで唯二つの方法をお奨めしよう、私は両者共成功し得ると思っている。しかし不幸にも両者共軽い懲罰を含んでいる。私は未だ懲罰なしに犬をブレーキングする方法を見出していない。犬をブレーキングする上で最も重要な事は、彼がそれに対し既に確実に準備が出来ていると言う事である。若し貴方の犬が何回も頭上でゲームを撃ち落とされ、あなたが到着する迄ポイントしたりするように上述のプログラムを進行させていたならば、彼はブレーキングの準備が出来ている事になる。第一の方法は助手の援助を必要とする。犬を平常通り猟野で走らせ給え。犬がポイントしたら出来るだけ早く彼を捕まえ、既に記述したように優しい言葉をかけ、犬を不動にさせ、「ウォー」を命じ犬を撫でてやり給え。そうしたら引き綱を彼の首輪に結び、彼と数分間一緒にいた後に助手にゲームを翔たせる。貴方は引き綱を堅く握っているよう注意する。ゲームが翔ち、犬が鳥を追おうとしたら引き綱で強制的にその場に引き留め、同時に「ウォー」を命ずる。ゲームが去った後、出来る限りポイントした位置の近くに犬を留め、優しく言葉を掛け擦ってやる。これを何時も同じ方法で何回も行う。彼が何をするように期待されているかを理解出来たと確信出来た後、彼が尚鳥の後を追おうと試みる場合は、ムチで彼の前肢を叩き、同時に引き綱をグッと引っぱり「ウォー」を命ずる事を続け給え。この仕事を彼がポイントする都度続け給え。常に貴方の助手に鳥を翔たせ、ピストルにせよ猟銃にせよ、このブレーキングの段階では発砲してはならない。彼がブレーキングに応ずるようになった後に始めて射撃し、鳥を撃ち落としても良い。若し鳥を撃ち落してやる場合は彼が正しく演じたかを注意し給え。彼がブレーキング出来始めた後は、彼が正しくゲームに対した時のみ鳥を撃ってやり給え。換言すれば、彼が飛翔に際し不動であった場合だけ撃ち給え。

 この期間には撃ち落とした如何なる鳥も彼の処へ持って帰って来給え。撃ち落とした場合は、貴方か助手がそれを犬の処まで持って帰って来る迄、不動にさせて置き給え。噛ませ、或は頭を食べさせても良いが、この全ての時間の間、彼を元の位置に留め給え。そして猟を続けるよう指示する迄優しく言葉をかけ、彼をさすってやる。この仕事を続ける事により殆んどの犬が間もなくブレイクされる事を見出すだろう。

 彼の天賦のスタイルを損なわないで犬をブレイクする事は大変コツを要する事であり、人々はしばしばこれを分離させてしまう。良いポイントスタイルにおける重要な性質即ち崇高さ、強さ、気迫等については既に記述して来た。これ等の素質はブレーキングの期間中非常な注意と忍耐を払う事により、又貴方の犬がブレーキングに対し既に準備が出来ている事を確かめる事により、犬に保存して置く事が出来る。この時期に忍耐と努力を惜しんで懲戒を与え過ぎる事はたやすい事であり、その結果、貴方は犬の天賦の精神をくじいてしまう。繰り返すが貴方は判断力を発揮しなくてはいけない。或る犬は他のものより沢山の懲戒を必要とするかも知れないし、或る場合には言葉の叱責で充分な事もあるが、望まれた結果を得る為には厳重な体罰が必要な事もある。

 個々の犬の認容力と反応には大変な相違があるので、如何程の懲罰が必要かを規定する事は不可能である。しかし注意深く一貫して犬の精神や個性を観察する事によって個々の懲戒の限度を決定する事が出来るだろう。この時期に、犬がポイントした場合の貴方のマナーについて一言ご注意して置こう。

 それを信じようと或は信じまいと、貴方の態度は直ぐ大に反映するものである。

 若し犬がポイントした時貴方が興奮したならば、彼も又より以上に興奮し、全てを保護にしてしまうだろう。一方貴方が冷静に落ち着いて、優しく犬に話し掛けるようであるならば、犬も又多分冷静であるだろう。これは貴方の声の他全ての動作に当て嵌る事である。彼の処に興奮して突進する代わりに、ゆっくり慎重に歩いてゆき給え。後数mに近寄った時、優しく言葉を与え給え。これが如何に彼を助け、彼のブレーキングの仕事を易しくするか貴方は驚く事だろう。貴方がこのようにして居る間に或はゲームは立ち去るかも知れないが、それは大した事ではない。犬をブレーキングするのにお奨めしたい二番目の方法は、フォースカラー(トゲのように釘が内側についた首輪)を用いる方法である。フォースカラーを用いる場合も、上に記述したのと同じように始める。貴方の犬がポイントしているのに近付いた場合は、優しく言葉をかけ不動のままにさせる。そしてフォースカラーを彼の首に嵌める。6m位のチェックコードを首輪に結び、助手に鳥を翔たせる。そして犬が鳥を追って飛び出したら断固として彼を引き止め、同時に「ウォー」を命ずる。そして彼がポイントしていた場所に引き戻し、そこに立たせ優しく話しかけなぜてやる。これを鳥が翔っても立ち止っているようになる迄続ける。次に首輪なしで試みる。若し彼が飛び出したら又首輪をつける。暫くの野外訓練の間チェックコードがついたフォースカラーを用いた方が大変有効である事を見出すだろう。これは第一の方法で彼をブレーキングするのが難しいような場合にのみ為すべきである。殆どの犬がフォースカラーの使用を必要としないが、或る犬は他の犬より以上に鳥を追いたがるものであり、フォースカラーはこの様な強情な犬に使用する。

 私は特にブレーキングを必要としない犬達を見た事があるが、彼等は飛翔や発射に対し自然に不動を保つように思える。若し貴方の犬がこのような犬の一頭であったら貴方は実に幸運である。只今のところ私は大変幸福である。それは私が持っている系統の犬達はブレーキングするのに大変容易だからである。

 40才台の頃私は現に一頭の台牝をたった一日でブレーキングする事が出来た。この犬は(エルフユー・ミッヂ)非常に進歩が早く既に15ケ月でブレーキングの準備が出来て来た。それは初秋の事であり、私達は夕方遅く猟をしていた。彼女がポイントしたが、そこには雉の一胎が寝屋についているのを私は知っていた。鳥は動かないと感じたので、暫くの間ポイントしている彼女の処で賑やかに喜んであげた。やがて私はそっとフォースカラーをかけ、一人で鳥を翔たせに行った。彼女は鳥が飛び去る迄ポイントを保ってから動き出した。私はチェックコードをしっかりと引戻し、彼女は空中に飛び上りビックリし乍ら落ちて来た。そこで私は彼女をポイントしていた位置に戻し、姿勢を直し優しく言葉をかけ、次の猟を始める前に暫くの間彼女と大袈裟に騒いでやった。彼女はその後の生涯で10回とブレーキングを破らなかったろう。彼女は私か持った中での素晴らしい犬の一つとなった。私は彼女と全種類の狩猟鳥の狩りをし、彼女は40以上のトライアルに入賞した。今日私の所の犬舎の全ての犬は彼女の血液を受け継いでいる。幸運な事に彼女の素晴らしい素質は、彼女の子孫に何代も受け継がれている。一度貴方の犬にブレーキングが出来たならば、如何なる理由があっても、それを破らせてはならない。若し彼を友人に貸してやるような時は、その人に決して破らせてはならない。貴方の犬が未だ2~3才にならない内は、犬を友人に貸したりする事はお奨め出来ない。殊に若犬などで末だブレーキングが出来ていない事を貴方が承知している他の犬と一緒に働く事もお奨め出来ない。

 貴方のブレーキングが出来た犬を、鳥に飛び掛かったり、翔たせたり、又追ったりする犬と一緒に働かせるのは面白い事ではない。若し貴方がそれをさせたなら、貴方の犬は多分競争意識から、視覚によるポイントに基づいた同様の事を為すだろう。殆どの犬がブレーキングの準備が出来るのは普通二年目の終り頃か、或いは第二猟期の中間位であろう。これより早く犬にブレーキングをするのは可能であるが、このスケジュールの年を越えてからの方が良い結果を得るように思う。

 これによって貴方の犬の形式的な訓練は完成される。只今からは彼が今迄に習った事を出来るだけ繰り返し、一般的な猟のコースの中で、彼の悪癖を摘み取りながら、導いて行かなくてはならない。

 運搬は自由選択であるけれども、私は貴方の犬に運搬を教えるようお奨めする。これは次の章でお話ししよう。


Wing and shot


第7章
最終的なヤード・トレーニング

 私達の犬は楽しい狩猟の日々を与えて呉れるとは言いながら、まだまだ完成されたシューティングドックとは申し難い。例え彼によって鳥を撃ち落とす事が出来るにしても、彼の訓練は尚完成迄続けられねばならない。全て訓練のプログラムは一つ一つの堅実な前進であるべきである。一旦若犬が訓練のプログラムを出発したならば、若しこのプログラムが正しく行われた場合は、何等それを妨害する邪魔者なしに、完成迄犬は非常に良くそれを成し遂げるように思える。

 昔の人の言った「老犬には新しい技術を教える事は出来ない」という言葉には確かに何処か真実がある。訓練過程にある若犬は成犬に比してより易しく、そして早く学ぶように思える。そして又、二人或は更に多くの人々の手を借りて訓練された犬に比して、たった一人の訓練者から全部を通して訓練された犬の方がより早く進歩し、そして又より良い結果を生むように思える。唯一人の方法に馴らされた若犬の殆んどのものは、新しい次のハンドラーに順応するのには、かなり調整を要するようである。成犬においてはこの点は大変易しい。

 全く見知らぬハンドラーに対して、何時もの馴れたハンドラーに対すると殆んど同じように良く演技する犬を見た事があるが、これは例外であり、決して原則ではない。彼の訓練の次の部分は、彼の家庭訓練を終え、ゲームに対してブレイク(調教)する事である。今迄の彼の家庭訓練では、彼等にノー、ウォー、カムイン、ステイ、そしてオーライの意味を教えた。

 彼は今やヒール(あとへ)、シット(坐れ)、アップ(飛べ)、ダウン(伏せ)そしてイン(入れ)の命令語の意味を教えねばならない。これらについての一般的な技術は、今迄他の命令語を教えて来たのと全く同様である。家庭訓練では私達がこれらの新しい言葉を一つずつ加えてゆくのみで、あとは今迄と同じように行う。

 先ず最初に「ヒール」という命令語を考えてみよう。平常の家庭訓練と同じく、今迄の命令語を復習した後に、彼に短い綱をつけ、犬をあなたの左側に引き寄せ、彼の頭が丁度あなたの膝の所に来る位にし給え。そして彼と一緒に歩き、引き綱で彼をこの位置に保たせる。そうしながら、「ヒール」という命令語を優しく、しかも確固たる口調で命じ給え。彼が前に出ようとした時はその都度「ヒール」の令を与え乍ら綱で引き戻す。あなたが7~10m歩き、彼が上手に出来たら、立ち止まり優しく言葉をかけ賞めてやり給え。若し引き綱で彼をその位置に保つのが難しいようならば、ムチを右手に持ち、前に歩きながら穏やかにそれを振り給え。若し必要ならば彼を後につけるために顔を静かに打ち給え。緩い紐や、貴方が方向を変えても彼がそれに従い、後につく事が出来るようになる迄、上述のように訓練を続け給え。但しレッスンは短くするよう気を付ける。

 大体4~5回のレッスンの後に、彼は大変うまく出来るようになるだろう。そうしたら引き綱なしでやってみる。若し彼が先の方に飛び出してしまったら「ウオー」を命じ、後に連れて来て最初から又始める。こんな時は尚2~3回引き綱をつける必要があるかもしれない。しかしなから、彼が如何にこの言葉を早く習得するかに驚く事を確信する。このレッスンを何回も繰り返し徐々に別の場所でも試みてみる。そして猟の前後に野外でも試みてみる。

 繰り返すが、若し彼に「ヒール」を命じたら、それを確実にさせ、若し命令に直ちに服しなかったら、後に付けるようにさせる準備をして置かねばならない。鳥を狩る猟野においては、直ぐ猟を始めたり、貴方から遠く離れてしまうのではないかと心配されるかも知れない。後に付きたくないという犬の性癖は非常に強いものであるが、又、繰り返すが決して妥協してはいけない。一旦彼に「ヒール」を命じたならば、貴方が彼に他の言葉即ち「オーライ」の指図を与える迄は「ヒール」しているのを眺め給え。とりわけ、この指示無しに彼を「ヒール」から解放してはならない。それは、これをすると全体の訓練原則に対して筋道の通らない事になるからである。

 彼に貴方の支配外だと思わせてはならない。仮りに彼を「オーライ」の言葉で「ヒール」から解いてやった場合、そこで彼は自分の好きな事が出来るが、しかし彼は唯あなたの許しのもとにそれをしているのであり、何物とでも一緒には遠くへは行かないのだという事を知っているのである。

 「ヒール」を彼が学び、それを完全に行うようになってから、「シット」を教える。これをするには、彼に「ウォー」を命じ、そっと彼の鼻づらを右手で握り、頭を後に圧してやる。そして彼が坐っている姿勢をとる迄後脚と臀部を左手で押し下げる。同時に優しく、きっぱりとした声で「シット」を命ずる。
 最初の数回はこのままの姿勢で彼を押さえて置く必要があろう。これを余り抵抗しないで2~3回出来るようになった後に優しく言葉をかけ賞めてやる。彼が命令語を理解する迄、何回もこの演技を繰り返す事が必要だろう。何回かのレッスンの後に、彼は何等力を加える事無しに完全に習得する。時にはムチで臀を叩いてやる事が必要な事もあろう。「シット」の命を与える時は常にそれに先立って「ウォー」を命ずる。或るハンドラーは、「シット」の命を与える前に右手を犬の前に挙げるのを好む人もいる。しかし私はこの必要を認めない。

 このレッスンを何度か繰り返し、しかる後他の何時もの家庭訓練を復習として加え給え。坐っている姿勢から解くには「オーライ」を用い、訓練期間中は、それに優しい言葉と賞めてやる事を忘れてはいけない。「シット」の命を解放の指図なしには決して離れさせてはいけない。若しそうしたら彼は何時もその姿勢から離れ、それによってあなたの命に服しなくなるだろう。

 貴方の命令の一つでも彼が服従しないような事があると、貴方の彼への支配力を崩す恐れがある。

 彼が「シット」の命を完全に会得した後に、それを彼の平常のレッスンに加え、更に次の命令の「ダウン」を教える。その原理は「シット」と同様である。「シット」と彼に命じ、右手で彼の前肢を前にはずし、彼が伏した姿勢になる迄、左手で肩を下に押してやる。同時に彼に「ダウン」を命ずる。これは「シット」の時にしたと同じように繰り返す。そして優しい言葉をかけ賞めてやる。この姿勢から解放してやるのは「オーライ」の言葉を以てしてやり、それを決して怠ってはならない。彼が「ダウン」の意味を理解した後に、それを素速く行わせる為にムチを優しく用いるのは大変有効だろう。彼がこれを完全に会得したら、彼のおきまりのレッスンにこれを加える。最後の二つの命令は他の目的よりも特に車や家の中における行儀の為のものである。

 次の命令の「アップ」は猟野において好都合である。若し「アップ」の命が与えられたならば貴方が彼に命じた如何なる障害物(例えば、棘の付いた針金の垣や横木の垣等を含む)であっても、彼の体に可能な範囲ならば、飛び越さなくてはならない。これを教えるには柵を用いる。幅30~40cmで長さ2.5~3mの厚板がこの目的に最適である。これを横に置いて二つの杭棒で支える。先づ犬に対し厚板に向かって「シット」を命じ、貴方が板を挟んで反対の位置にゆく迄そこに留まらせる。そして「オーライ」の命を与え、厚板の上から一かけらの菓子を使って巧く犬を誘い出す。同時に「アップ」の命を与える、これをあなたが「アップ」を命じたら犬が素速く飛び越す迄繰り返す。彼が命令の意味を理解したら、次第に板の高さを増し、60cmから1mまでにする。常に「シット」の位置から行い、出来たら優しい言葉をかけて賞めてやる。若し彼が板の端を回って来てしまうような事をしたら厳しく「ノー」と命じ、元の位置に戻し、始めからやり直す。この場合、繰り返すが唯一言の「アップ」を用い給え。私はこの命令を与える時は指をピシッと弾き、手を障害物の上を飛び越すように振ってやる。幾つかの犬は命令無しに唯単にこの動作だけで良くジャンプするが、これは個人的の好みである。犬が「アップ」の意味を完全に会得したら、他の障害物について試みさせる。この印象を新にさせる為に、時々厚板の所に連れ戻る事が必要だろう。彼が良く出来るようになったら、これを彼のお決まりのレッスンに加え、出来るだけ猟野で用い給え。混み入った垣等に出会った時は、私は犬を呼び寄せるようにしている。そして彼が垣を飛び越した時には、その為に引掻いたり負傷をしないかを見る為に一緒に残っている。

 次に彼に教える言葉は「イン」である。これは彼を犬舎や輸送用犬箱の中や、ドアを通らせたり、或は乗り物の中に入れようとする時に用いる。これは又、彼の行儀の為に行うものである。そして犬が行儀良くするのは何と気分の良い事だろう!犬に「イン」を教えるには、先づ犬舎のドアの前で「ウォー」を命ずる。次にドアを開け彼の左側に立ち、右手で彼の首輪を持ち、犬が入って欲しい方向に左手を振り乍ら犬舎の中に引き入れる。これを為し乍ら、何時もの確固たる口調で「イン」を命ずる。彼が入った後に優しい言葉をかけ賞めてやる。犬舎に帰って来た時にはその都度必ずこれを行うようにする。彼が言葉の意味を理解した後に、例えば車とか輸送用犬箱とかのような他の場所でこれを行い、彼が全く完全に応ずるよう試み給え。貴方が犬を入れようと思う方向に手で指示する前に、必ず「ウォー」の位置に犬を置くようにする。彼が「イン」の意味を理解した後に猟野において、彼の狩のパターンを指示するのに数多く用い給え。例えば或る茂みを犬が狩らないで済ませ、あなたはそれを狩って貰いたいような時、その茂みの一隅に彼を連れて来て、手を用いて「イン」の指図をし給え。繰り返すが若し彼があなたの命に服しなかった場合でも、自然に茂みの中に入らせる事が出来るように心構えしてからにし給え。彼は多分真直に入ってゆくだろう。

 このように繰り返している内に、単に彼の名前を呼んだだけで混んだ茂みの中に、彼を導入する事が可能となるだろう。彼が貴方に連絡をとった際、茂みの方に手を振って「イン」を命ずる。彼の進歩につれて、貴方は非常に遠くの位置から、この方法を用いて犬を茂みの中にやる事が出来る様になる。

 猟野において「イン」の言葉を用いる場合、犬を呼び寄せて先づ「ウォー」を命ずる事は必要ないけれども、犬がこの域に達する迄は、それを用いるのは賢明な事である。

 運搬を除いて、これで大体適切な言葉を網羅した。しかし若し貴方が欲するならば、犬達がそれを理解し、消化し得る能力があるかと言う事を考えながらであれば、尚言葉を追加する事も出来る。あなたは犬の能力の判定者である。彼に如何に多くの命令語を教えるとしても、その家庭訓練のレッスンの度毎にそれを復習し給え。あなたが彼に命令語を教えた順序に用いるのは良い事である。やがて彼がそれを使えるようになって来たら、お互いに混ぜて使い始め給え。我々が網羅して来た命令語はシューティングドックをハンドルする上において、全て必要なものである事に注意してくれ給え。


Wing and shot

第6章
銃声馴致

 私達は今や、かつての幼犬と共に可成りの進歩をして来た。この段階において、若し彼が良く進歩して来ているならば、相当高度の智脳を持ち、良く狩りをし、既に銃声に対する準備が出来ているのである。

 彼の素質は色々な種類があるにしても、未だ傷つけられていない筈である。彼は大胆であるべきであり、貴方と狩りとを愛しているべきである。彼は最早単なる仔犬ではなく、猟に対して色々な態度を示し、貴方や貴方の命令に対して大変な期待を持っている。他の言葉で言えば、彼は今や全てが職務なのである。家庭訓練や猟野訓練の両方において今迄続けて来たように彼を働かせ、ー方、猟野訓練には22口径の空砲ピストルを持って行く。猟野訓練において、彼を銃に馴らす最初の機会はポイントの際であり、優しく言葉をかけ、彼を擦ってやり出来る限り不動のまま留まらせる。その後鳥を翔たせ、或は彼に翔たせ、犬が鳥のあとを力いっぱい追い、約15m貴方から離れた頃ピストルを鳴らす。犬にとり余り高く響かぬように犬と反対の方向に向けて鳴らす。多分彼は一向それに気をとられず、鳥を追うだろう。これなら良い。或は銃声を聞いて立ち止まり、何だろうと振り向くかも知れない。若しそんな時は、知らぬ振りをして狩を続け給え。次に犬が鳥を翔たせ、それを追ったならば、更に遠く追わせてから発砲し給え。若し犬が第一の発砲で真直ぐあなたの処に戻って来て大変驚いた様子をしている場合は、これは問題だ。こんな時は決して彼の頭上で発砲してはならない。

 このような時、次に何をしたら良いかは「悪癖の矯正」の章が貴方に或る暗示を与えて呉れるだろう。若し犬が最初の発砲の際普通の反応を示したのなら、次にゲームに当たる毎に、次第に近付いて発砲をするようにする。間もなく銃声をゲームと一緒に考え、結局は銃を好むようになるだろう。これを何回も行った後に、如何なる場所で発砲しても犬が何等気にしなくなったならば、彼は猟銃えの準備が出来た事になる。犬を銃声に馴らす最も重要な事は、彼が鳥を追うのに心を奪われている場合を除いては、決して犬の近くで発砲してはならない事である。

 新しい犬の所有者は、しばしば仔犬がガンシャイではないかと心配して、猟銃を持って戸外に連れ出し、仔犬が鳥に夢中になっていない時でさえ犬の頭上で発砲する。若しこの犬がガンシャイではなかったとしても、それ以後は確実にシャイとなるだろう。従って犬が鳥に当たっている時以外には、決して犬の方向に向け発砲してはならない。これはどの年齢の犬にも適用出来る。犬の耳は私達の耳よりずっと感度が高いもので、高い空砲の音は彼等に苦痛を与えるのである。

 猟銃の場合は410番口径か20番口径の何れかで、反動防止器の無い銃で始めるのが望ましい。この場合も、彼の為に鳥を撃ち落してやる事以外は最初のピストルの発砲の時と同じ事である。その場合周囲の事情も正しく適していなければならない。犬はポイントをしている。そこで同じく優しい言葉をかけ彼を撫でてやる。例え彼に短い綱をつけても良いから、出来るならこれに数分間を費やすが良い。その後尚彼が立ち止まっているようなら、彼の為に鳥を翔たせ、或は彼自身で翔たせる。彼があなたから15m程離れ、鳥の真下か直ぐ後を追っている時、鳥を撃ち落し給え。そして犬を落ちた鳥の処にやり、若し彼がそれを銜えたら自分の処に呼び、優しい言葉をかけ、大喜びをしてあげる。犬が好きなだけ鳥をかき裂くのを許してやり給え。

 若し彼が鳥を銜えて貴方の処へ来ない場合は、彼の所へ行って頭を撫でてやり給え。若し彼が鳥の頭を食べようとするならこれは良い。この様な犬は猟欲が強いから、将来いい犬になると考えて褒めてやり給え。若し貴方の犬か鳥をくわえたままなら、静かにとりあげて、決して彼を叱ってはいけない。

 この時以後はあなたは出来る限りたくさんの鳥を撃ち落してやり給え。しかし唯彼がポイントし、貴方が到着する迄ポイントを維持していた時だけ鳥を撃つ様にし、決して貴方の踏み出しで翔った偶然の鳥や、貴方が到達する前に彼がフラッシュした鳥を撃ってはならない。貴方が鳥を翔たせる間、出来る限り犬にポイントの位置を守らせるようにし給え。若しこの仕事を続けたら、彼は鳥が欲しい場合はポイントし、貴方が到着するのを待った方が良いのを学ぶだろう。これが注意深く出来たら、彼のゲームに対する訓練を更に容易にし、鳥をフラッシュさせたり、蹴出したりするような事が少なくなるだろう。若し出来得れば、彼の訓練を更に進める前に、20羽から30羽のゲームをこの方法で撃ち落してやり給え。

 小口径の銃を何度も用い、彼が銃に対し何等のシャイも現さなくなった場合、若しあなたがそれを望むなら12番口径の銃を用いても安全だろう。

 若し彼がなすなら鳥を運ばせ給え。多くの犬は落ちた鳥に走って行き、ほんの少し口にした後くわえ上げる。若し貴方が彼を呼び寄せ、大喜びしてやり頭を与えたりすれば、彼は容易く、全てのゲームを貴方の為に運ぶようになるだろう。若しこの銃を持ったプログラムが注意深く行われるならば、貴方はガンシャイに対して何等難しい事は無い事を保証する。




Wing and shot


第5章
猟野訓練

 彼(犬)の次の訓練段階は、彼が家庭訓練で習った事柄を彼の猟野の仕事に結びつける事である。これを試みる前に家庭において命令に完全に応ずるようにして置かねばならない。猟野において比等の命令語を用いるに当たって、彼に何時もの20~30分走らせる運動を与え、しかる後なるべく貴方の近くに来た時に、「カムイン」を命ずる。彼は直ちに応ずるべきである。若し彼がそれをしないようなら、彼のチェックコードを取り、貴方の方に引きよせ、その場で5分か10分間のレッスンを与え給え。その後又運動を続け、命令を再び繰り返し給え。これを完全な反応が見られる迄続ける。同様に「ウォー」と「オーライ」を試みる。彼が正確に応ずるようなら更に難しい環境でやって見給え。しかし彼が何時も直ちに応ずるように注意する。非常に遠くの場所から彼を呼び、又止まらせる事が出来る迄、そんなに時間を要しないだろう。ここで命令語は只の一回しか使わない事を思い出して欲しい。犬があなたの言う事が聞こえなかったと確信出来る迄は、命令語を繰り返そうとしてはいけない。命令語を増して行きながらの野外訓練は、彼が正確に応ずるようになる迄、何時迄も続けなくてはいけない。これは日時を要するかも知れないが反復と一貫性と良き判断力によって立派に前進する事が出来る。

 これらの野外運動の間に「カムイン」の命令語は、彼の猟のパターンを徐々に直すのに用いる事が出来る。繰り返しになるが、シューティングドックのパターンは議論の余地のある課題である。或る人は良いシューティングドックのパターンは、彼の猟野の秩序ある捜索であると考えて居る。犬がしなくてはならぬ捜索とは簡単に言えば、一定の捜索範囲で彼の捜索曲線を常にハンドラーから、そらしながら右から左へ、左から右へ、猟野を捜す事である。それは狭過ぎてもいけないし、遠過ぎてもまずく、彼のリズミカルなパターンを終日保たねばならぬ。私個人としてはそれを犬に要求はしない。彼の狩って居る場所については、私はむしろ犬の方が良く知っていると申したい。これは彼の仕事なのである。若し彼の初期の訓練と経験が適切に進められて来ていたならば、鳥は何処で見出されるかを知っており又それを見出すだろう。若犬の鳥を発見する事の習得に関して一寸横道にそれたいと思う。私は6ヶ月の若犬が秋に数羽の鳥を見出し、次の春、4~5ヶ月前に鳥を見付けた、まさしくその場所を明らかに捜すのを見た事がある。以前に鳥を見付けた事のあるタイプの繁みを狩るのを如何に早く習得する事が出来るか、一寸信ぜられない位である。これらは彼等の習得する能力の良い例である。彼は前方に向かって狩り猟場を完全にこなし私の方に来ないで曲がり、或は走り去るように彼のパターンは調和していなければならないと思う。

 彼は横に曲がって来たり、後の方に回って来たりせず、私が呼ぶ迄は決して帰って来てはいけない。或る犬達は他の犬に比してこれを犯し易いものがある。何故そうなるのか私には分からない。しかし、若し彼が早期に適切に訓練されて居たなら、誤ったパターンをとる事がより少なかったであろう。

 グラウンド・パターン(猟野を捜索しながら走っている態度)に期待する今一つの事は持続的な勤勉さである。即ちゲームを発見しようとする決意である。勤勉さの欠如は不熱心とか、歩度の低下、足臭を嗅ぎ回る、二度も同じ場所を狩る、道を走る、柔かい場所を捜す、或は遂に遊び出す等の事によって示される。

 さて典型的な野外活動に目を通し、私達の仔犬の一般的なグランドランニングの誤りを直してみよう。先ず第一番目に仕事をさせようと思う猟野に引き綱をつけて連れ出そう。全ての気を散らすものを取り除き、彼の気持ちを猟野に没入させる。そして注意深く犬に姿勢を取らせる。そして優しい言葉をかける。引き綱を解き、「ウォー」を命じ、稲妻のように飛び出すべき合図の笛の短い二吹きを彼に聞かせる迄、其処に留まらせる。最初の5分か10分は彼をハンドルしよう等とは全く考えないで走らせる。彼は多分非常に興奮し、血が沸き立っているので、どんな事でも私達の言う事を聞かないだろう。彼がやがて引き返し、私達の方に向かって来たならば、出来るだけ遠くからウォーを命ずる。そして犬に向かって近寄り、又最初から繰り返す。これを彼がカットバックした時にその都度行うと、彼はやがて主人から離れて狩をし続けなければならない事を学ぶ。

 若し犬が私達の前方ある地点でチェックバック(残臭などに執着)したり、立ち止まったりした場合には笛を二回短く吹けば、彼はグルリと向きを変えて狩を続ける。次に彼は側方に余りにも走ってしまうかも知れない、この場合も又「ウォー」を命じ再び笛を二回短く吹いて、彼に狩をさせようと欲する方向に歩き始める。彼は多分私達の歩いて行く方向に向きを取るだろう。この場合彼に狩って欲しいと思う方向に手を振る事は大変助けとなる。若し彼が正しい方向に行かない場合は再び「ウォー」を命じ最初の仕事を今一度繰り返す。この場合彼に「ウォー」を命じ、或は彼に狩って欲しい方向に彼を出発させるのに、チェックコードを用いる事が必要となるだろう。これは何か難しく聞えるかも知れないが、多分非常に易しい事を発見して愉快に驚く事だろう。同じ仕事の最中に犬が或る目的物の囲を曲がって、遂に私達の後に来たと仮定しよう。この場合は彼を「カムイン」で呼び、私達が狩ろうと思う方向に出走させる。若し彼が余りに度々後に来るようであったら、彼が後に来た時に「ノー」を鋭く使い給え。次にあなたが望む方向に彼を出走させる。

 次に彼がするかも知れないのは、ネズミに立ち止まったり、嗅ぎ回ったりする事である。この場合は出来るだけ彼に近寄り「ノー」を鋭く命じ、続けて二回の短い笛吹きして、彼を狩の方に追いやり給え。彼は間もなく、そんな具合に狩猟を中断してはいけないのだ、と言う事を学ぶだろう。彼のグランドパターンが最後にあなたに適するようになったら、彼のレンジを考え始める時期である。

 犬が必ず応ずるであろうと言う見通し無しに命令を用いてはならず、又若し彼が従わなかったら、彼を正さなければならない立場にある事を忘れてはいけない。「カムイン」の命令語は彼のレンジを正すのに用いられるとは言え、若し犬が全速で疾走している時や、捜索に足を延ばしている時には用いてはならない。確かに「カムイン」という一つの命令語は、彼に鎖をつけて引き寄せるものにはならない。私達は彼のレンジを徐々に直してゆかねばならない。

 犬に約15mのチェックコードをつけ、仕事を始める。20分か30分程走り、可成りあなたに近く来た時に、彼の名前を呼び、「カムイン」を命じ給え(例えばジェイク、カムイン)。そしてそれを確実に教え給え。若し彼が正しく行わなかったら、断固としてチェックコードをグッと引き寄せ、犬を手許に来させる。このようにした後、正式に発走させずに「オーライ」の指図で猟を続ける事を許し給え。幾分内にこれを再度繰り返し、何時でも彼がそうしたら「カムイン」を命じ遂には彼に「オーライ」の言葉で、何時迄も猟を続けるように指図出来る迄この仕事を続け給え。

 一部は彼についているチェックコードのせいにしても、彼は間もなく貴方の支配下にいなくてはならぬ事を学ぶだろう。この彼の訓練の間に、彼が貴方の「カムイン」の命令に服すると言う事は非常に大切な事である。勿論貴方が彼をそう出来ると確信の持てる時以外は決して「カムイン」を命じてはいけない。彼がそれを為したら、その都度優しい言葉をかけてやる。若し彼がそれをしなかった時は、その都度チェックコードをグッと引き寄せ鋭く「ノー」と言い貴方の方に来させる。彼が次第に従う事を学んだならば、段々遠くから彼を引き寄せるようにし始める。貴方が望むレンジを走らせるよう命令を度々適用するが良い。「カムイン」の命令語と一緒に彼の名前を用い乍ら、次第に「カムイン」を抜いてゆき、彼の名前だけを用いるようにする事が出来る。やがて彼は自分の名前を呼ばれたら、貴方の方に向かって来る事を学ぶだろう。一度この指図を習得したならば、貴方は彼のパターンを唯彼の名前を用いて形づくる事が出来る。

 この命令によって貴方は犬をより狭く持って来たり、こんもり繁った林に向かわせたり、言葉を換えれば狩猟の捜索を具合良く保たせるのに役立つだろう。今や貴方は彼を自分の支配下に置いた。しかし彼を貴方の足許で猟をするようにさせないで欲しい。少しは彼を延ばしてやって呉れ給え。特に最初の10分位は決して彼のレンジを押さえようとしてはならない。その後には彼と一緒に調和して狩り給え。若しこの時期に、即ち犬が引き綱から離されて、興奮して走り廻る最初の10分か20分が過ぎても尚且つ彼が貴方から飛び出して行ってしまったら、最初の機会に手許に引き寄せ狩を止め、10分から20分位手きびしい家庭訓練を行い給え。彼に「ウォー」せしめ、「カムイン」そして「ステイ」を命ずる、このお決まりの手順を通った後に再び狩を始める。

 若し同様な事が又起ったら、彼が正しく行える迄再度やり直しをする。この過程において忍耐と一貫性と反復は基本的なものである。以上のプログラムは貴方が望む結果をもたらすだろう。若し駄目だったら尚他の方法もある。この事は後の「悪癖の矯正」という章で述べよう。

 良いグラウンド・パターンの進歩は、恐らく他の訓練の部分より、より多くの時間を要するかも知れないが、次の段階の前に良く完成されて置かねばならない。


Wing and shot


第4章
初期の家庭訓練

 さて私達は貴方の幼い仔犬と一緒にどのように進歩して来たか振り返って見よう。彼は家に馴れ、車に乗る事を覚え、名前を知り、そして狩りに熱心になっている。彼はフラッシュポイントをし、主人の優しい呼びかけを理解し、短い笛の二吹きが前に走る事だと連想する。彼は自分の名前とグッドボーイという言葉の意味を習得した。

 「シューティングドックを訓練するには何時頃が一番良いか」という質問が良くなされる。訓練は殆んど完成する迄続けられねばならぬものであり、更に或る場合には、その犬の生涯全部に渉って積極的に行わねばならない場合さえもある。これは成熟した犬でも若し失敗した場合は何時でも直されねばならないという事である。

 積極的な犬の訓練は、丁度正しい時期に行わなくてはならぬ。犬を訓練するという事は、つまり鳥の飛翔と射撃に際して不動のまま保たせるという事である。殆んどの犬が、訓練を受ける以前は鳥が翔つや否や、その後を追い掛けるものである。鳥が翔ち去ってもそのまま留まり、銃が発射されてもそのままポイント位置に留り、更に他の指示がある迄不動のままでいるように訓練するのは皆それぞれの題目の調教によって、もたらされたものである。それは犬の訓練過程の最適の時期に行われなければならない。私達の犬は未だこの地点に到達していない。さて彼が猟野においてかなりの経験を積み、一貫して猟を好んでいるので、今や「ノー」(いけない)、「ウオー」(とまれ)、そして「カムイン」(来い)等の新しい言葉を教える事を含めた、幾つかの易しい家庭訓練の準備が出来て来て居る。

 「ノーという命令語を教える事は、この段階においては大変重要な事である。ここで貴方が成し遂げねばならない事は「ノー」という言葉は、彼がしつつある事が悪い事であるから、如何なる事も中止し、そして又それを再び繰り返してはいけないのだ……という事を、彼に理解させる事である。

 私達にとってこの言葉は非常に簡単に聞こえるけれども、彼にとっては最も複雑なものである。しかし一旦この言葉を覚えたならば、以後の訓練や一般的な作法を教えるのに大変な助けとなる事だろう。彼に「ノー」の意味を教える間、私共は優しい然し断固たる躾をしなければならない。今ここで優しい訓練と言う理由は、犬に主人に対する愛情と猟に対する愛情を徐力に滲み込ませる為である。

 今や彼は何物に対しても大胆であり、怖れたりしてはならない。他の言葉で言えば、彼は今や訓練をする事が出来る状態で、この事は訓練のプログラムの上で大切な部分である。多くの犬が訓練の準備が出来上がる以前に、訓練を始めてしまう気短な訓練者の為に、一生を台無しにされてしまい、最後には憶病な、自主性の無い犬に造られてしまう。このような犬には専念した注意を、全部猟の方に向けるのは難しいだろう。こんなタイプの犬を猟野で良く見る事が出来る。彼は一つの目を猟の方に向け、後一つの目を自分の主人に向けて、自分のやっている事が主人の気に入って居るか否か、何時も気にしてばかりいる。彼はほんの僅か走り出したと思うと直ぐ帰って来る。彼は自分の仕事に熱中するよりも寧ろ何時も振り返ってばかりいる。私達の望んでいる犬は、一旦猟野で放たれたならば、全て仕事に打ち込み、ゲームを見付ける事のみを頭に置いた犬である。

 「ノー」の意味を教える場合、鋭い声で「ノー」といって、貴方の手よりも何か他の物で柔かく叩いて教えた方が良い。新聞紙を丸めたものなどは大変良い。例えば仔犬が家の中に居て敷物の角を囓り始めたような場合、一言「ノー」という言葉を用いて止めさせ、同時に丸めた紙で彼を叩き給え。「ノー」という言葉を貴方が何時使っても理解するようになる迄、彼が言う事を聞かなかったら何時でも続け給え。更にそれを印象づける為に、食事時や菓子を与える時にも用いるが良い。その何れでも良いが、彼の前に置き「ノー」という言葉を用い、正しく出来る迄止めて置く。

 今や私達は家庭訓練中であるが、ここでこの訓練についての一般的な特色を少し論じて見よう。先ず第一に、貴方の犬はその進歩の正しい段階に達していなければならないという事で、これは非常に大切な事である。彼は心から貴方を愛し、又、猟を愛しているべきである。彼は又大胆であり、良く馴れ、何物も怖れず、言う迄もないが身体的にも訓練に適しておらねばならない。

 若し貴方がレッスンを始めたならば、短く且つ興味深くさせねばならない。若犬にとって大体15分から20分位がレッスンには十分な時間であり、一旦レッスンに入ったならばすべてそれに打ち込まなくてはいけない。レッスンに入ったと言う事はあなたの態度や方法やあなたの声で犬に伝達される。若し犬が遊びたくなった場合でも、レッスンが終わる迄はそれを優しく且つきっぱりと拒絶しなければいけない。それと共にレッスンを上手に仕上げて終わらさなくてはならない。そしたら声や態度でレッスンが終わった事を示し給え。これは犬に菓子を与えたり、優しい言葉をかけてやったり、彼を遊ぶ為に解放してやるような事で示してやる。私は家庭訓練のレッスンが終わると何時も手を叩くが、それは犬に対して、もう遊んでも良い時間だという合図である。

 貴方は、彼がほんとに素速くこの合図を覚え取るのに驚く事だろう。常に彼を楽しい気分で犬舎に戻してやるようにし給え。家庭訓練の最初の段階においては、先ず彼のあり余る精力を取り去る為に、多少の猟野の仕事をさせるのは良い考えである。彼をレッスン前に30分か40分位猟野に走らせたならば、彼をより容易に扱う事が出来るだろう。

 家庭訓練で次に重要な事は、多分一貫性という事だろう。若し犬が命令の意味を確実に習得したと自信を持ったならば、貴方がそれを用いた時は何時でも、彼が完璧であるようにすべきである。これは彼の全ての訓練期間を通し、更にそれ以後でも当てはまる事である。例えば「ノー」という命令について考えると、貴方が「ノー」と命じたならば、貴方はあくまでそれに執着しなければならない。若し彼が敷物を噛むのを叱るのならば、貴方が居る前では決して二度とそれをさせてはいけない。私は一貫性の重要さについては力説し過ぎる事はないと思う。幼い仔犬にとり、彼の限度のある智力を以て、敷物を噛むのが、何故月曜日には悪くて、火曜日には全くかまわないのか、を理解する事はどんなに混乱させる事か考えても見給え。若しこの幼い年令において、貴方の命令には何等妥協の余地が無く、命令の通り成し遂げねばならないのだという事を教える事が出来たならば、貴方は素晴らしい勝利を獲得した事になる。若し一方彼が勝手な時に、或る時は命令に服し、或る時は服しまいと考える事を許したならば、それ以後は彼に教えるすべての事において、ぐずぐずと習ったり、或はあなたの権威に対し、何時でも挑戦したり出来るように準備するだろう。一貫性の無さは訓練の仕事を、貴方と犬両者にとって全く不愉快なものにするだけでなく、更に必要以上に長引かせ、骨を折らせるだろう。

 貴方が犬に命令を教える事に成功した後は、それを節約して使用するようにし給え。しかし若し一旦用いたならば確実に用い給え。換言すれば、命令が十分必要だと考えるような事を犬がする迄は、命令をしてはいけないし、若し犬が主人に反応するのを失敗したような場合には、直ちに命令を与える事が出来るように準備して居なくてはならない。

 これは多くの意見を誘う重要点である。どのような時にせよ、彼が従わないような命令を与えた場合は、それは逆戻りであり、みっともない仕事である。ここに一つの例を申し上げよう。

 仮に貴方は犬と一緒に猟をしているとしよう。そして犬は垣の並びの所を狩っている。その列の終りの所には目的物があり人目を引く叢の一地域がある。犬はこの列の半分を狩り、目的地に頭を向け進んでいる時に「カムイン」の命を受けた。若し貴方が彼の猟欲と鳥を見出そうとする欲望を適切に進歩させて来ていたならば、貴方が犬を呼ぼうと或は呼ぶまいと、犬はその目的地迄完全に狩ってしまうだろう。しかし、これを為し乍らも、彼は貴方の命令に服しなかった事になる。さてここで私達は、彼に「カムイン」の命を与える前に彼が捜索を完了する迄、待ってやったならば、不服従を避ける事が出来たであろうという寧ろ苦しい立場に立ってしまう。要点は命令を与える場合は判断を働かせて、犬が必ず応ずるであろうと確信を持てる時にのみ命ずべきだと言う事である。そして繰り返すが、数少なく、しかも確実に命じ給えという事だ。犬に命ずる場合、しっかりした声で、しかも彼が聞こえるのに必要な程度以上に高くしてはいけない。そして一回だけ使う事だ。若し最初の命令が思った通りの結果にならぬような時は、犬は聞こえないような振りをして、更に一段と高く命令を叫ばなくてはならないような傾向があり難しい事がある。若し訓練の最初の段階において、貴方が犬に唯一言で命令に応ずるように理解させる事が出来たら、貴方は仕事が大変楽であろう。

 時折耳の聞こえの悪いのや、又、全くつんぼの犬が生まれる事がある。若し如何なる疑問でもあなたの心にあったなら、友人に犬を押さえて貰って置いて、他の部屋からか、或は隔壁の後から犬を呼んで見て、簡単に聴力テストをしてみ給え。小さな声から始めて、彼が反応を示す迄次第に声量を上げて見る事だ。犬の所有者が彼の犬に向かって命令を大声で叫び、若し犬がそれに応じないと大声でどなり始め、やがて単語の命令語で間に合わず、永い言葉でどなり散らす様子を如何に多く聞いた事だろうか。貴方はその犬が如何に戸惑って居るかを考える事が出来るだろうか。

 第一の理由として、過去においてその犬は命令を耳にした事はあるが、彼はそれに従う事を拒んだのである。それを今更何んでこの場に及んで従う事が出来ようか。第二の理由は、その命令は余りに多くの言葉が使はれているので、犬は第一それを理解出来ないのである。彼にとって確かに解る唯一の事は、言葉からでなく声の音や高さから、彼の主人は怒っているという事だけである。若し事態があなたのカンシャク玉を破裂させるようになって来たなら、直ぐにそこで止め給え。そしてあなたの犬の気持ちを汲んで、カンシャクを顔に出さず、むしろ犬に小さな菓子を与える位にして解放してあげ給え。若犬は立腹の一瞬に駄目になってしまう事がある。これは他の何物にも増して避けなくてはならない。

 忍耐と自己制御は訓練の極く当初から、最後のプログラム迄適応されねばならない。家庭訓練においては、若しそれがうまくいかない場合でも、忍耐強くレッスンを繰り返すべきである。そして15分か20分の終りに犬にいくらかの遊ぶ時間を与え、優しい言葉をかけ、菓子を与え、そして彼を解放してあげ給え。そして如何に多くのレッスンを要しても気にかけないで我慢強くやり通す事であり、彼が理解する迄レッスンを繰り返し、繰り返し行う事である。そして彼がそれを正しく行ったならば優しく話しかけ、菓子を与えて報いてやる。

 個々のレッスンの中途において、彼が既に習った命令を、新しい言葉を始める前に復習するのは良い考えである。レッスンの前に今迄彼が習得した全ての事を再度一通り行い、彼がそれを良くやってくれたら賞めてやる。レッスンの当初にこれを行う理由は、これによって犬を真面目な気分にさせる為である。そして犬は習う事により積極的になり、喜んで仕事をするようになる。復習を伴ったレッスンを行う事により、貴方が犬に何を教えたかという事を犬に思い出させるのに助けになる。

 さて私達は、犬が「ノー」という言葉を理解したと仮定しよう。次に「ウォー」(とまれ)を教えよう。この言葉は犬がどこに居ようと、次の指示がある迄はそこでストップし止まっていなければならない事を意味している。この命令語は犬に作法を教え、又、鳥に対する訓練を遂行するのに大変な価値があるものである。これは簡単には貴方が数フィート歩く間、彼を立ち止まらせる事により教える事が出来る。若し彼が貴方の跡を追って来ようとしたら、彼を制止し「ウォー」の命令語を繰り返す。この場合は引き綱を用いた方が良い。若し彼が少しでも留まっていたならば「グッドボーイ・ジェイク」という優しい三語を用いて賞めてやり・菓子を与え給え。次第に彼から遠く離れるようにし、又、時間も永い間犬が留まって居られるようにし、それぞれ、「ウォー」の命令語を繰り返し給え。

 若し彼が動いたら最初の位置迄彼を押し戻してやる。命令を繰り返す時は軽く彼を叩き、唯「ウォー」の命令語のみを用い給え。この命令語を教える間、彼が良く立って居るように注意して欲しい。命令に従っている間は決して坐ったり寝たりしてはならない。若し以上の方法を使って犬を従わせるのが難かしかったら約7m位の長い綱を使うと良い。それを犬の首輪に結び、綱を小さな立木か柱等に一まわりさせて、他の一端を手に持って犬の前から歩き去り給え。これによって犬が手許に来るのを阻止出来る訳である。そこで上記のようにやり始め、命令によってその位置に止まらせ、犬が暫くの間出来たら賞めてやる。命令から解いてやる時は何時も彼の処に行ってやり、決して犬をあなたの処に来させてはいけない。犬が「ウォー」の命令で立ち止まる事が出来たら直ぐに網をそっと引いて、そこに犬が留まって居る間「ウォー」の命令語を繰り返す。説明出来ない或る理由の為、彼は綱の圧力に抵抗し不動(スタンチネス)を増してゆく。

 数回これを繰り返した後に綱無しでこれを試み、彼が間違ったならその都度直してやり、うまく出来たら、その度に彼を賞めてやる。

 彼が最後迄習得出来ない間は、新しい言葉や命令を加えたりしない方が良い事をここでつけ加えて置こう。たった一つの新しい言葉でさえ、時に彼を混乱させ訓練期間を確かに引き延ばすのである。

 次に彼に教えるのは「カムイン」である。彼は既に自分の名前を呼ばれると手許には来る。しかしこれは純粋の自由意志である。私達は今や如何なる状況であっても、例え彼の気分が進まない時でさえ手許に来るように教えたいのである。私が使用する言葉は「カムイン」であるが、貴方が好むどんな言葉でも良い。この言葉も又、チェックコードと呼ばれる引き綱を用い完成出来る。このチェックコードは約7m~10mの長さが必要で、その一端に普通のなすかんがついて居るものである。「カムイン」の命令語を教える前に、野外で働かせる際これを2~3回つけて犬に馴れさせて置いた方が良い。家庭訓練のレッスンの間、このチェックコードをつけ、彼が5m~7m離れた時に「カムイン」を命令し、同時に犬を貴方の方にチェックコードを用いて引き寄せる。この仕事をレッスン毎に4~5回繰り返す。若し犬が良く従ったら優しく言葉をかけ、褒めてやる。一旦彼がこの言葉の意味を確かに理解したと確信した際は、彼を手許に引き寄せる際、更に一段と力を加え給え。何時も同じような方法で何回か繰り返し、決して彼を怒らず、貴方の手許に来たら賞めてやる。彼が命令語を理解したと確信出来た場合は、それを確実に固定し給え。そして彼を直ちに従わせようと思う時以外は決して「カムイン」を指図してはいけない。そして若し何時でも必要とあれば彼を手許に来させるよう用意して居なくてはならない。この訓練過程においては、彼が野外で働いて居る時も犬を簡単に捕まえ、従わせる為に、チェックコードを犬につけて置くのは良い考えである。犬が命令に直ちに従うようになったら、チェックコード無しで野外の仕事をさせる。そして若し犬が失敗するようなら又チェックコードに戻る。繰り返すが、これ等のレッスンは短時間で、しかも快く終わらねばならない。家庭訓練のレッスンは野外運動と一緒に定期的に進めねばならない。貴方が都合出来るあらゆるチャンスを彼と一緒に猟をし給え。若しあなたが野外運動の為の十分な時間を持たないとしても、例え5分か10分であっても、多分貴方は幾つかの命令語を以て、彼と一緒に走り回る位の時間はあるだろう。彼の命令語の復習の際、反復と一貫性は彼の訓練プログラムにとって非常に大切であり、これにより大変早く進歩させる事が出来るだろう。

 貴方が彼と仕事をする場合、殊に家庭訓練においては、貴方は何時も一定の気持ちを持つように注意しなくてはいけない。若し例えば、貴方が最良の精神状態ではなかったり、或は少しでも気短さが感ぜられたら、犬を仕事させるべきではない。若しそれを行うと、恐らく基本を失うのみならず、今迄既に為して来た過程のいくつかも壊す結果となるだろう。又、家庭訓練においては気を散らさないように注意しなくてはならない。若し可能なら犬が彼に対する命令語を一通り習得する迄、全てのレッスンを庭の同じ場所で行うと良い。

 次に彼に教える言葉は軍隊語で「アット・イーズ」(休め)に匹敵する意味を持った「オーライ」(OK)である。若しそれが適当な場合に用いられたら、彼は非常に早くその意味を理解するだろう。家庭訓練のレッスンが終わった時、或は「ウォー」の命を与えた後に、彼を動かそうとする場合にこの命令語が専ら用いられる。彼は間もなく自分の為して居る「ウォー」から再び動き始め、そして先程の命令を無視しても良い事を理解するだろう。「オーライ」の命令は、殆んど他の指示のように確固たる積極的な響きよりも、温かい感じで伝えなくてはならない。「ステイ」(待て)の命令は即ち彼が命令を受けた場所にきちんと留まらねばならぬ事を意味する。この「ステイ」の教え方は「ウォー」の時と同様である。彼に確固たる声で命令し留まらせねばならない。若し動いたら元に戻し軽く叩き命令を繰り返す。そして如何なる条件においても彼が「ステイ」出来るように環境を変えて見る。この命令は常に「オーライ」を以て解くよう注意し給え。命令語を用いる場合、今迄私達が用いて来た言葉のみに制限するよう注意する事である。沢山の言葉を短期間に用いる事は彼を混乱させるのみである。言葉の意味を理解する能力が増すにつれて、私達は組織立った、秩序ある方法で彼に多くの言葉を教えてゆきたい。振り返って見ると私達は犬に可能な限り度々野外運動をさせ、折にふれて短い家庭訓練のレッスンを一緒にして来た。家庭訓練においては常に最初から始め、その日迄彼が習った事を復習する事が大切である。繰り返しは訓練に絶対に必要な要素である。犬が一通り命令語を習得した後でさえ何度も何度も繰り返さねばならない。犬が飽きたり、興味を失ったりした様子が見えたならば,レッスンを止め給え。彼はやがて家庭訓練や、犬舎から出てあなたと一緒に過ごす好機を楽しむ事を覚える。彼を楽しく熱中させ、あなたと犬両方に訓練を最も楽しいものにするようにし給え。

 さて私達は一体どこに居るのか一寸眺めて見よう。私達の犬は完全に馴れ適応している。彼は車に乗る事を楽しみ自分の名前を知り、猟が好きだ。笛の短い二吹きが前進を意味する事を知り、フラッシュポイントをし、前方に狩り、軽い訓練に応ずる。彼の知っている言葉は今や七つの言葉から成る。即ち①彼の名前、②「グッド・ボーイ」(ヨシ、ヨシ)、③「ノー」(いけない)、④「ウォー」(とまれ)、⑤「カムイン」(来い)、⑥「ステイ」(まて)、そして⑦「オーライ」(OK)である。