Wing and shot

第3章
仔犬の育て方

 さて貴方は、自分の来るべき8年なり、10年なりの猟の友人として、期待出来る犬の選択を終わったと仮定しよう。

 貴方がそれを認めようと、又認めまいと、この犬は多分貴方のこれからの生涯にとって大切なものになるだろう。何故ならば、狩猟において、彼と共に幾年かの楽しい思いを分かち合うのみならず、年が経つと共に、彼が貴方にそうであるように、貴方は彼に非常な期待を掛けるようになるに違いないからである。そして言葉に言い現せない友情を、自然に貴方の犬に持ってゆくようになるだろう。貴方達の関係が主人と犬という間柄の一つであるとしても、犬が成長した時には、この間柄は心の理解と、友情の一つとして円熟して来るだろう。

 最初の頃は貴方は教師であり彼は生徒であるかも知れないが、彼が経験を増してゆくと共に、貴方は彼から単に猟の上のみでなく、忍耐力、理解、献身や忠誠等を教えられる事だろう。我々が住んでいるこの忙しく複雑な社会にもとづいている精神的な衝撃や、疲労、そして騒がされた神経が、貴方の犬の友人の温い、揺るぎのない献身により、貴方を大変快く、楽しくさせるのだと言う事に気が付くだろう。貴方の若犬とスタートする場合、先々に何があるかを知り理解する事は大切な事である。貴方の犬の進歩が完成される時期迄の間を通じての完全なプログラムを貴方に差し上げるのが、この本の一つの目的でもある。

 しばしば初めての犬の飼い主は、彼等の犬に対して計画されたプログラムを持たず、組織立った方法も持たずに、行きあたりばったりで失敗する事が多い。そして犬が進歩するにつれてしばしば即席的な方法で、不正確に問題が取り組まれる。若し、それをもしもブログラムと呼ぶ事が出来るならば、堅実さや一貫性を欠いた、それは、正に当て推量的な恐れ入った代物である。このような訓練の結果は唯単に犬を混乱させるのみではなく、非常に長時間を要し・且つ訓練者にとって不愉快な事であり、普通は満足出来ないようなものを作る事が多い。

 この本に書いてあるプログラムは、一貫して順序良く組み立てられたものであり、永年の間注意深く作り上げられ、多くの素晴らしい猟犬を成功裡に進歩せしめ得たものである。

 従って貴方がこれを全部読んで、あなたが何時でも「この次には何を為そうとしているか」そして「貴方の仔犬はプログラムの中のどこに該当しているのか」を正確に知ることが出来るように、あなたの頭の中に全部のプログラムを樹立するようにお奨めしたい。

 出発に当たって貴方の若犬は人間の赤ん坊に似て、全く未発育の小さな心しか持っていないのだと言う事を頭に入れて欲しい。若犬の心と赤ん坊の心とは、年毎に同じ進歩の過程を通ってゆくものだと私は信じている。例えば幼犬も赤ん坊も同じような多くの基本的な反応と反射を持っている。両者共気温の変化、空腹、怖れ、痛み等に反応し、彼等の精神が進歩するにつれ、これらの反応は更に複雑になって来る。

 赤ん坊は泣き、それは食物により酬いられる。そしてこの事は小さな心に、泣けば空腹を満たしてくれるのだという事を植えつける。仔犬達も同じようにする。間もなく子供達は泣く事は同時に自分に注意を向けさせる事を悟る。仔犬も又同様の事を見付けるのは事実だろう。彼等の優しい訓練に対する反応も又同様である。赤ん坊が進歩するにつれて、それは両親に対する信頼、依存と愛情に発展する。幼犬の場合はその生活の中心と発展の対象が貴方であるという点だけで、皆同じである。子供の活動性と反応が増してゆくにつれて、母親はその態度や甘い言葉、返答、訓育、そして優しい罰等の形の中に訓練や管理の使用の必要性を見出すのである。

 貴方も、自身の仔犬に全く同様な事をしている事に気が付くだろう。この似たような事は、赤ん坊の場合、例えば歩行のような或る動作の切っ掛けを与えようという形で現れる。ここにおいても又貴方は同じような事をするだろう。即ち仔犬に猟をさせようとし、又、更に望ましい自然の本能を刺戟しようとする訳である。

 私がこの類似性を思い出したのは、それにより貴方が身近により良き理解をして欲しいからである。若し貴方が嘗て子供を育てた喜びを味わった事があるか、或は子供の心の進歩を目撃した事があるならば、貴方は若犬の心の進歩について基本的な見方を持って居る訳である。この事は貴方にとって如何に仔犬を扱うべきかという理解にとって大変な助けとなる。幼き者の心は完全に貴方の意のままである。それは貴方が鋳型に嵌める通りに進んでゆき、それは粘土の柔かい一片のようなものである。何故なれば、貴方はそれを思うままの形に作る事が出来るからである。貴方は仔犬の進歩に反映するであろう所の全部の環境を自由に支配出来る立場にある。それを信じようと信じまいと、仔犬が成長した暁に、その個性の中に貴方の人格の或るものが反映するであろう。この考え方を心の中に入れて若犬の訓練に当たったならば、それは疑いもなく面白いものとなるだろう。何故ならば、貴方は最終結果については全部責任を持つからである。それは貴方が美しい油絵を創るようなものである。貴方が為し、或は為さなかった全てがそこに在るのである。この見方に立って考えた時に、貴方の計画が完全に成功した時にうける誇らしさを思い画く事が出来るでしょう。

 数年の後に、貴方の犬が、殊に素晴らしい仕事を貴方の為に演じた時は、
何時でも、彼がそのようになるように自分が作ったのだと言う事を知りつつ眺める事が出来る。

 仔犬を持った最初の第一週は、彼のこれからの訓練期間にとって非常に重要な週間である。若し出来るならば、仔犬を入手した最初の日に、彼の心の中に如何なるものがあったかを考えて見給え。

 彼の生涯のこの時期には、ほんの僅かな事しか知って居ない。彼の周囲は唯単に犬舎の内部以外にはなく、彼が知っているほんの僅かなものに対しては怖れを持っていない。何故ならば、それ等は彼にとって余り不思議なものではないからである。彼の交際は多分彼の小さな相手や、食事を与える為に来て呉れる人だけに限られているだろう。彼は多分未だ首輪もした事もなければ、如何なる方法でも叱られた事はないだろう。彼は良く引き合いに出される「みどり児」という奴である。彼の生まれ家から連れて来る最初の日は非常に危険なものであり、彼のこれからの生涯において、彼の個性に劇的な影響を与える事が出来る。

 突然に彼は烈しい変化を受ける。新しい周囲、そして車に乗せられ、彼の仲間を失う。中でも一番の変化は全く新しい人間に直面する事である。つまり貴方である。幾つかの犬は素速くこの変化に順応出来るが、一方或る犬は大変難しい事がある。或ものは決して完全には順応しない。然しこの期間に仔犬を順応させるような良い結果を得る事は易しい事であり、又、訓練のプログラムにとりかかれようにするには左程日時を要しない事である。

 それには首輪や紐やそんなようなものを、決して仔犬の首の回りにつけない事である。驚かせる事を避け、如何なるものにせよ高い音を聞かせてはいけない。輸送は出来る限り穏やかに行い、車に乗せるのだったら絶対に煙草を吸ってはいけない。この事は単に仔犬だけでなく、全てのシューティングドックにも当てはまる原則である。彼には新鮮な空気を味合わせ、乗車中むしろ他の犬と一緒に居させるか、或は彼と一緒に遊んであげると良い。彼の初めての自動車旅行について、そんなに詳しく立ち入る訳は、貴方のシューティングドックが良い旅行者になる事は大変重要な事であるからである。しばしば良い猟犬が、実際に小旅行に際し、車における悪いマナーの為に崩されているのを見ている。或る犬は車を一目見ただけで涎をたらし、気力を失ってしまうものもある。若し幼犬の最初の車旅行が楽しいものであったなら、貴方は多分何の心配もなく、仔犬は車を好むようになるだろう。若し彼の初めての小旅行が、音や臭い、そして心細さと怖れの入り混じった奇妙な行動の悪夢であったならば、貴方の犬は多分何時も車の旅行を嫌うようになるだろう。

 さて貴方が仔犬の名前を選んだならば、それを出来るだけ用い給え。又、その名前を食事時や、彼を連れ出す時、或は又、彼にとって何か楽しみになるような事があった時は何時でも使い給え。彼の名前が楽しい事であると印象を持つように、彼を名前で呼ぶようにし給え。私は何時でも食事と食事の間の時間に若犬を見にゆく場合は、一頭一頭名前を呼び乍ら、ドッグビスケットの一かけらを与えている。彼等が名前を呼ばれた場合は何時でも、私の所え飛んで来るようになるのはそんなに長くかからない。この時期には彼の名前だけ呼ぶようにし給え。

 多くの新しい犬の所有者は、犬にとって、表も裏も全く解らない全く理解出来ない言葉を使って、犬を迷わせている。彼の訓練が進むにつれて、命令の言葉を徐々に増やしてゆき給え。しかしそれは非常に用心深く行なわねばならない。この点に関しては後に更に説明する。

 名前を選ぶ場合、それを短く、然も一語のものを選ぶ。風の日に或る距離に離れていても聞こえる為に、一言で発するのに便利なようにすべきである。何んな名前でも、そんなに長くなく、短く鋭く発せられ、彼の訓練に後程用いられる如何なる言葉にも似ていてはいけない。「ジェイク」「デューク」「スポット」そして「テックス」等の名前は良いだろう。

 彼が自分の家に馴れて間もなく(それは多分二、三日だろうが)ジステンパーと肝炎の予防注射を受ける為に獣医師の処に連れて行き給え。そして貴方の獣医師とジステンパーについて良く相談する事だ。ジステンパーを防ぐには種々の方法があり、或るものは明らかに他のものより効果がある。私は犬舎内の全ての犬達の為に毎年秋にジステンパーの予防注射を行っている。

 貴方は獣医師にこの処置の良否を相談してみるとよい。そして又あなたの犬を六ケ月毎に寄生虫の検査を獣医師に受けるようお奨めする。

 彼の最初の一週間は、彼にとって出来るだけ楽しいものにさせなければならない。そして貴方の可能な限り仔犬の為に時間を割いてやり、変った犬や、高い音、しつこい子供達、滑り易い床、興奮させたり、心細くさせたりするような如何なる恐怖からも守ってやらねばならぬ。私は滑り易いワックスを塗ってあるリノリウムの床に若犬を下してやる程、犬にとって怖いものはないと信じている。何故ならば、この年の仔犬は脚が大変デリケートなので、滑って転んだりすると容易に損傷を受け易いからである。

 彼が新しい住居に良くなじんで、貴方を好むようになってから彼に首輪をつけ給え。そして首輪をつけて二、三日したら紐をつけて庭の中を暫く連れ回って見る。彼は引き綱を嫌い、多分大変怖れるだろうが、出来るだけ静かに然も優しくしてやる事だ。こんな事を数回する内に、彼を暫くの間歩かせる事が出来る程度に引き綱に馴れて来るだろう。そうこうする内に彼を20分か30分位野外のかなり開けた所で短時間走らせるという易しい戸外の仕事の準備が出来て来る。彼が猟を覚える迄は、この若犬一頭だけで働かせた方が良い。次第に彼の外の仕事を一時間位に延ばし、鳥の居る場所に連れてゆくようにする。この時期においては、彼を貴方の前方に行くようにさせる以外には、何んな事でも彼に指図しようとしてはいけない。この前に出させるのには、彼がどちら側にでも来た場合に向きを変えてやる事により可能である。若し彼が貴方の後に居たならば、彼が前方に来る迄待ってやる事だ。同じ場所を余り度々走らせないよう注意しなければいけない。若し新しい場所で働くのを許されたならば、更に良く狩り、目的物を探し求めるようになるだろう。目標は茂った生け垣の列や湿地、ブッシュのある所、小さな林の一区域、或はクリークの底の方等の狭い所でも、猟鳥が住むに適した所でありさえすれば良い。

 彼が初めて鳥の臭いをとった場合には、頭を低く下げ、歩度を落とし、尾を猛烈に振り乍ら、ゲームを感知したサインを示す。鳥臭が更に強くなって来た場合、彼はスピードを早め、多分ゲームを捕まえようとして臭いの方向に飛び込む事だろう。鳥が翔った場合、彼は驚いて後に身を退くか或は鳥のあとを追うか何れかであろう。これを心配する必要はない。

 その後又何度か鳥に出会った後に、やがて彼は鳥が翔ったら追い始めるようになるであろう。これは彼の進歩にとって非常に重要な事である。今や彼は狩りをし、ゲームを発見する以外の何物も為す事を許されないのである。これ等の経験を沢山重ねる事によって、彼は更により良いものを獲得する事が出来る。鳥を捕まえようとして何度も失敗を重ねる内に、多分貴方が猫がネズミに忍んでゆくのを見たと同じようなやり方で、本能的にゲームに忍ぶ事を始めるだろう。これは鳥を翔たせようとして飛び込む前に、短時間乍らポイントを始めたと言う段階なのである。

 このようなポイントのタイプを一般にフラッシュポイントと呼んでいる。これを彼に何回も続けさせると良い。彼を狩猟にかき立てるような経験は、彼自身が習得しなければならないものである。例えば如何にして狩るかとか、風のある日は如何に鳥をさばくか、又、走っている雉を如何に竦めさせるか、又、動いた鳥を再びポイントする場合、足臭に先んじて体臭を如何に使い分けるか等と言う事は、犬にこれを教える事は不可能である。此等の事は犬が自分自身で見出し、経験だけが彼に教える事が出来る。あなたが到達する迄、犬が充分に長くポイントしているような時は短い綱を首輪に素速くかけ、彼をポイントしている位置に引き止めるようにし給え。同時に優しく彼の名前と、グッドボーイ(ヨシ、ヨシ)と言う言葉をかけてやり、もう一方の手で彼を優しく叩き、尾を上方にさすってやり給え。これらのすべては、彼をポイントした位置に留めるような癖をつける為である。そしてこのようにし乍ら、彼に繰り返し「ヨシ、ヨシ、ジェーク」と言葉をかけてやる。(これから先、私はこの言葉を「優しい言葉」として使用したい)。

 やがて彼はこの優しい言葉を貴方の是認として連想するだろう。そして彼が進歩するにつれて、自分の努力に対してあなたの是認を得るように試みるだろう。この優しい言葉は彼が良くやったと言う事を是認し、これを彼に告げる方法なのである。彼がポイントしている時に、このように何回も行った後、ゲームの方向に彼をそっと押しやって見給え。本能的に彼はこの圧迫に抵抗し、前にも増して余計不動(スタンチネス)を示すようになる。貴方の助けによって2分か3分ポイントの位置を保たせた後に、彼に鳥を翔たせ給え。これを何度か繰り返して続ける。何時でも彼がそれを楽しんでいるように見える時にのみ野外での仕事を与え給え。若し彼に疲れの兆しが見えたり、猟への興味を失ったような時は、すぐに訓練を打ち切ってしまいなさい。

 犬を離す場合、先ず犬を手で押さえて止まらせ、優しい言葉をかけ、肩を叩き、ポイントしているようなポーズをさせる。次に普通の小さな笛を二つ短く鳴らす。同時に犬を離してやる。やがて彼は笛を聞く迄は立った儘留まり、聞くや否や弾丸のように飛び出してゆくのを覚える。この訓練の目的は笛の短い二吹きは前方に向かって走るのだという事を連想させる事である。この事は後の訓練に非常な助けとなる。幾つかの犬は足臭をベタベタと嗅ぎ回ったり、小鳥やネズミ達と騒いだりするものである。犬に出走させる合図である笛を用いる事により、上に述べたような理由で犬が留まっている場合、これを走らす事が出来る。その結果若犬達の悪癖を完全に直す事が出来る。

 成熟したシューティングドックが小鳥やネズミに気を引きつけられて止まったり、既に一時間も、或はもっと前に多分居ただけであろう足臭を、鼻を低く地面にこすりつけ乍ら、ベタベタ嗅ぎ回ったりするのを見る程みっともないものは無いと考えている。この笛の方法はこれらの悪癖を直し、幼い仔犬が笛の二吹きは、走る事だという連想を覚えて走り出すのに、私の知って居る限りで一番良い方法だと思う。

 指示犬の訓練と進歩は雉、鶉、グラウス、そして山シギを含めて全ての陸鳥においては本質的に同様である。或る犬はむしろ鶉犬であり、或はグラウス犬そして雉犬と言うふうに幾人かの人は考えるかも知れない。然し殆んどの場合、良い犬は全ての陸鳥を上手にさばくものである。或る犬にとって目新しい鳥に当たった場合、馴れるのに暫くの時間を要するものがあるのは確かである。この馴れとは、つまり如何に猟野を狩り、ゲームは何んな処を狩れば良いか、又、鳥の所在をつきとめた後に如何にこれをさばけば良いか等という事である。雉の居る猟野に習熟した犬は、鶉の居る所で習熟した犬とはグランドの捜索パターンが異なるものである。然し新しい猟鳥に対する一、ニケ月の経験によって、普通の犬は上手く鳥の所在をつきとめ、鳥をさばく事が可能のようである。どのゲームが犬にとって一番扱い難い……と言う事に関してはいつも大変な論争がある。

 私個人の意見としては、パートリッヂと山シギが一番難しいように思える。次に雉であり一番易しいのが鶉である。然し犬達はこれらの鳥の何れでも熟練出来るし、すべての鳥に使う事が出来る。



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第2章
仔犬の選択

 さて貴方は既に指示犬種の中で、自分の希望する犬種を選んだと仮定しよう。次に為すべき事はその犬種の中から一つの仔犬を選ぶ事である。既に申上げた通り、今日では殆どの犬種が品評会の為に作られた所謂ショードッグと、狩猟そのものの為に作られたフィールド系との二つの系統がある。貴方が選ぶ仔犬はFDSBに確実に登録されたフィールド系の血統でなければならない事を注意して欲しい。
 
 フィールド系の血統にも、その犬種の本流から由来する幾つかの亜流がある。或る作出家はこの系統を出来る限り純粋に保とうと努力し一貫して一つのタイプを再現するような系統の発展に成功している。此等の作出家は、幾つかの立派な犬を作出している。若し貴方が、これらの純粋な系統から、確かな仔犬を入手する事が出来たならば、貴方の成功するチャンスは非常に増えた事になる。これを除いた第二の方法は、既に良い犬を産出した事のある、良く知られた交配により出来た仔犬を入手する事である。次には父犬と母犬について、それらの外観や天賦の能力について注意深いテストの後、その配合によって出来た仔犬から選択する方法である。

 ガンドッグの外観については、後に体構の章で詳しく論ずるつもりである。

 ガンドッグの天賦の素質とは、その走り具合、足どり、猟欲、性質そして嗅覚能である。貴方の仔犬の外観で注意しなければならない事は遺伝的な体の異常であり、意地の悪い、或は憶病な性質、精神の安定性の欠如、魅力の無い外観、そして嗅覚と猟欲の欠如等である。最も一般的な身体の異常は股関節の発育不全であり、又、大腿骨頭と寛骨臼の貧弱な結合であり、普通亜脱臼として知られた状態で、即ち「球状関節」として更に一般に知られているものである。

 この状態はかなりの率で波及しているので、多くの作出家にとって重大な関心事となっている。大体35以上の犬種が、この推測上劣性の遺伝因子を持っていると考えられて居る。これは主に大きな犬種に現れ易く、猟犬種の中でも或るものはこれに侵されているが、大体ベンチショーの系統に限られている。この状態はX線無しには仔犬に発見するのは殆んど困難である。若し貴方が考えている仔犬の祖先に、股関節発育不全が出現した微兆があったなら、色々な意味で決してそれを求めてはいけない。若し貴方の心の中に何か疑いが持たれたならば、その仔犬のX線写真を撮影し給え。そんな時は他の評判の良い作出家より求めた方が良い。

 父犬や母犬を評価する場合、決して訓練の度合に多くを影響されてはいけない。そしてその犬達の自然の素質を良く判断しなくてはならない。訓練というものは人が作ったもので、その自然の能力のように遺伝され、後代に伝えられるものではない。大変良く訓練された犬というものは、単にその犬は訓練を加え得るという事を証明するだけであり、これは殆んどの犬について言える事である。若し或る犬が他の犬達よりも早い年令に、しかも易しく訓練し得ようとも、私は尚一方では訓練する事が出来なかった犬を見て来ているのである。犬の天賦の能力は、仔犬を選択する場合に如何なるものよりも最も必要な素質であり、根本的な要素である。事実上、全ての自然の素質を大変幼い犬の上に決定しようと言う事は難しい事である。そして若し仔犬が購入されようとする時に、人々は、それが持っているであろう自然の素質を判定する為に、何度も何度もその両親犬の所へ通はなくてはいけない。

 しかし乍ら、貴方の将来ある仔犬を約3,4ケ月の頃入手するのは望ましい事である。この年齢においては、貴方は犬をより良く評価する事が出来、貴方が期待するマナーを教え込むのに十分な若さであり、そして犬の愛情を完全に獲得するのに適当な年齢である。この際、貴方が仔犬を入手する年齢について、更に詳細に論じてみよう。

 この点については特にクラーレンス・パッフェンベルガーが「犬の動作の新知識」という本を出版してから、最近沢山の事が言われている。この本は大変良く調べられているが、動作の研究についてロスコーのB・ジャクソン記念研究所のJ・パウル・スコット博士の指導の許に、仕事についての大変含蓄の深い分析が為されている。そして同時に盲導犬についてのパッフェンベルガー氏自身の経験も含まれている。要するに彼は仔犬は生後七週目で訓練を始められなければならぬと奨めている。彼は動作研究所において、犬の智脳が完全に成熟して訓練や進歩を良く受け入れられるようになる年令を決定するのを、どのようにして発見したかを説明している。この発見はむしろ近代になってからのものであり、如何に正しく、これが猟犬に応用され得たかという事も今や実証されている。犬は若い方が訓練され易いという事は、良く認められている事実である。仔犬を七週間目で入手するという事で唯一の問題点は、その時期では未だ貴方に取り良い選択をするには尚発育が不充分ではないか……という事だけである。年の進んだ仔犬を購入するのは先ずは安全な事である。この場合はその仔犬と、犬舎の外で、ほんの一寸の時間を過ごすのみで簡単に決定出来る。

 貴方は程なく私が書こうと思っている、釣竿につるした鳥の翼に対する仔犬の反応がどうか、という事を見られるだろう。若し仔犬が憶病さや神経質さを全ての動作に示したならば用心した方が良い。有名な作出家は普通この点を見る事を良くわきまえているので、彼等が飼育している仔犬達は良く調べられている。この点に熟達する事は非常に複雑であり、我々の只今の直接の目的には余り重要な事ではないが、これに関連して貴方の欲する仔犬に注意しなくてはならないのは音である。

 訓練期間中において、貴方の仔犬が着実に進歩して行かないのみならず、代りに憶病さや神経質さが進んでゆくようであるならば、仔犬を取り替えた方が良い。これは冷淡に聞えるかも知れないが、全てにおいてその方が良い。貧弱な素質の犬は、楽しく、快い、心からの満足感等からは程遠い悪夢のような経験である。さて仔犬の選択に戻ろう。

 仔犬が戸外で走れるようであれば、作出者に野外で犬を見せて欲しいとお願いし給え。若し今迄に全く猟野で走った事が無かったら、ほんの二、三日のテストをお願いし、猟野に連れて行って見る事である。その仔犬を猟野で検討する場合、如何なる場合でも、その犬に完成されたシューテイング・ドッグを見ようと期待してはいけない。そしてその仔犬の走り具合の概念を見取らなくてはいけない。彼は活動的な走り具合を持ち、頭を高く、尾はジャンプに際しピシッと打つように鋭く、且つ常に背線より高くなければならない。彼の歩態は素速く、幅広く、円滑で、優雅でなければならない。幾つかの犬は走る時に跳ねたり、揺れたりする傾向のあるものがある。又、一部には短い波立つような歩態のものもある。これらの犬は非活動的なばかりでなく、円滑な状態の犬より持久力が無い傾向がある。スピードが必要な理由は明白である。速い犬はより速く猟野をこなす事が出来、更に与えられた一定の時間内により多くのゲームを発見する事が出来る。他の点では、大胆さと自主性である。若し彼が人懐こく、又、変ったものに恐れず、更に正常な性質を持っていれば大変好都合である。この仔犬に銃声を聞かせるのは不当な事である。その犬が今迄にガンシャイにされていない限り、銃声に馴らすのは簡単な事である。犬を銃声に馴らす訓練については後程の章で充分にお話しする。

 自分の主人以外には何等興味を持たず、何の目的もなく走る仔犬よりも、例えば小鳥とか蝶とかの生き物に興味を示す仔犬に目をつけ給え。

 殆どの仔犬は他の犬の跡をつけて走る傾向があり、殊に相手が年取った犬とか速い犬だと余計である。しかしこの一点に余りこだわる必要は無い。なぜなれば、一度彼がゲームを自分で発見した場合には、他犬の跡を追うより鳥を捜す方により多くの興味を示すからである。

 しかし乍ら、彼が何回もの戸外運動や、ゲームとの出会を重ねても尚他犬の追跡をするような場合は、その犬を購入する事はおすすめ出来ない。仔犬の走り回る広さは余り重要ではない。何故ならば、それは彼の訓練中に調整出来るからである。若し貴方が仔犬のゲームに対する態度をより良く見ようと思うなら、仔犬に視覚でのポイントをさせる易しい方法は釣竿につるした鳥の翼を用いれば良い。これは鳥の翼を約2m位の軽い釣竿の先に2.5m位の細いヒモで一緒に結びつけた簡単なものである。

 その翼をヒラヒラさせて、仔犬が見えるように地面の上に置いて見給え。そして仔犬がそれを捕まえようとしたら素速く引っぱってしまい、これを仔犬がポイントする迄続け給え。但し仔犬に捕まえさせぬよう注意する。このテストは仔犬を選択するのに手助けになるだろう。或る仔犬は素速く目でポイントし、又、或るものは仲々それをしない。これは或る程度仔犬達の遺伝的のポイント能を示すものと信ずる。ここで、一体立派なポイントスタイルと一般に考えられているものは何かと言う点を考えて見よう。

 犬の頭部は高く支持され、尾は真直ぐに背線より持ち上げられていなくてはならない。彼の全身は固く不動であり、ゲームが翔つ迄そのままでいなくてはならない(スタンチネス)。彼の頭部は鳥臭を取っている方向に正しく向けられているべきである。脚の位置は、彼が前や後に屈んだりしない限り余り重要な事ではない。以上の事柄のそれぞれの理由は明白である。即ちスタンチネスはゲームを飛び翔たせないようにし、高い姿勢は、濃い密林の中で彼を発見し易くさせ、鼻の方向は、それによって鳥の翔つ場所をあなたが知る事が出来る。仔犬を選ぶ場合の今一つの事柄は毛色である。セタには白黒、或は黄色の斑点を混えた白黒、そして白オレンジがある。ポインタでは優性の毛色は白リバーであるが、白黒、又、白オレンジも承認されている。私はこれ以外の如何なる毛色も望ましくないと考えている。それは純粋の作出を反映していないかも知れないからである。仔犬の斑点については、濃い斑点がある犬は、淡い斑点の犬より密林の中で目立ち難い点があるにしても、一般的な外観を除いては余り問題にならない。ポインターやセターに現れる小さな色の斑点は何等の意味もない。或る系統のものでは他のものより多く、このような小斑が出るようであるが、総体の外観と、個人的な好み以外には重要なものではない。仔犬を選ぶ前に御注意申し上げたいのは、体構と鳥猟犬の作出の章を読んで戴きたい事である。

 貴方の仔犬を購入する際には、有名な世に認められた作出者から選ぶよう私はお奨めする。それには多くの理由がある。多分最も大切な事は、そのような作出者によって作出された仔犬は、その性能が、名の知れない作出者より入手した仔犬に比して、身体的な観点からも、又、血統からも、遙かに素晴らしいという事である。

 有名な作出者は常々、その仔犬の先祖に良く知られた演技犬のたくさんの親を持っており、これに反して一時的の作出者は唯単に母犬を持っているに過ぎず、更にその母犬の血統や背景も、或は場合により父親さえも知らない事がある。世の中には唯仔犬を売らんが為のみで素晴らしいガンドックの純粋な線を打ち立てる事に殆んど興味の無い作出者がいるものである。一方著名な作出者は彼等の仔犬に高い値を求めるかも知れないが、普通それだけの価値があるのである。永年に渉って彼の系統を樹立し、向上させて来た莫大な投資が、彼等の仔犬達に高度の価格を要求するのである。このような作出家からの仔犬は、身体的にも非常に優れているのも事実である。何故ならば仔犬達は注意深く作出され、食餌を与えられ、疾病や内外の寄生虫から守られているからであり、これらのすべての事柄が仔犬達をより優れたものにする傾向があるからである。

 一方、著名な作山者は、白分の売った犬を後々迄も面倒を見るけれども、これに反して一時的な作出者はこのような事はしない。
 
 又、貴方が求める仔犬はクル病になっていないか注意し給え。この恐ろしい病気は、仔犬を注意深くテストする事によって発見出来る。症状は延びた関節、前後肢の屈曲、胸腔の両側の肋骨接合の肥大(クル病性連珠として知られている)、或は如何なる程度にせよ関節の軟弱と不具等である。さてここで犬に支払われる金額について一寸言わなければならない。この問題について私が明らかにする事が出来る唯一の事は、当初の出費は、後程その犬のそれからの生涯において支払われる出費のほんの僅かの部分にしか過ぎないと言う事である。「平凡な犬でも、食事、訓練、犬舎や注意等、価値ある犬に要すると同様の費用がかかる」と昔の人の言った事は真実である。狩猟家達が僅かのドルを惜しんだ為に、仔犬達の値段を値切り、遂には好ましくない仔犬を求め、最初の一年の内に何回も出したり入れたりして、犬舎や訓練、飼育や食事等に金を浪費するのを、私はしばしば見ている。又、如何なる大金でも労力でも無頓着に出すけれども、尚平凡な犬しか持てない入がたくさんいる。一方、若しその仔犬が良い血統を持ち、将来を期待出来るような素晴らしいものであったならば、狩猟の友としても、又、犬自体の価値という面からも、何時も主人にとって大切なものになるであろう。




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第1章
立派なシューティングドックとは何か

 「理想的なシューティング・ドッグは何であるか」という事については、全ての人々がそれぞれの意見を持っているようである。若し貴方が自分の希望する指示犬の中で、未だ特定の犬種を定めてないとすれば、これが先ず第一番目に成すべき事である。私にとっては、どれであるにせよ或る一つの犬種をお薦めする事は難しい。

 記録によれば、ポインターやセターは永い間に亘って最も満足すべき結果を与えている。勿論他の犬種でもこの目的を達する事は可能である。
 
 ここ暫くの間に一寸考えただけでも、ジャーマン・ショートヘアード・ポインター、ワイマラナー、そしてハンガリアン・ビスラ等の指示犬種が舞台に現われて来ている。アイリッシュセター、ゴードンセター、ブリタニー・スパニエル等の如く昔からよく知られている犬種もある。

 これらの犬種、殊に古い犬種は所謂体構品評会向のものと、実用的な或は狩猟の為のものとに基本的な線が分かれている。今日において猟野系の英ポインター及び英セター種は、この国において、素晴らしい演技犬の個々を基礎にして、何代にもわたる作出を行って来た結果なのである。

 米国で作られた所謂英ポインターや英セターは、我々のシューティングやハンティングに他の如何なる犬種よりも適しているという事は、意見の一致を見ており、事実この二つの犬種の遺伝的背景から見ても、正にその通りなのである。しかし他の犬種の中に良い犬が確かにいないという事ではない。ただ、望まれた結果を得るチャンスは確かにポインターやセターの方がずっと多い事は事実である。しかし乍ら、この本の内容は、他の如何なる指示犬種にも応用出来、そして訓練の手順は全てに同様である。

 英ポと英セの内何れを選ぶかは最早や殆んど個人的な好みの問題である。一般的にその両者はそれぞれ特別の性格を持っている。或る人々はセタは見た目が楽しいと言い、英セタの長い毛は彼等をバラや擦り傷から守り、深い、酷い密林の中を狩るのを可能にしている。又、或る人は、セターの長い毛は困ったもので、その為にポインターより暑さに弱く、又、普通訓練に大変時間を要し、扱うのに、いささか難しいという。一方において多くの人々は、ポインターはとても易しく且つ短時日で訓練が出来、実際に猟に使用しても、比較的若い犬でも結構役に立つという。

 ポインターは、一般に大変な持久力を持っているように見え、相当暑い気候でも充分な忍耐が可能である。しかしポインターは彼等の短い毛の為に、セター程大胆にひどい密林を狩る事が出来ない傾向はある。

 これら一般的な違いの他には、この二つの犬種は、例えば鳥を発見する能力、スタイル、猟欲、捜索範囲、協調性や智力等の本質的な性能においては全く等しいように思われる。両方の犬種について非常に良い系統もあり、又、悪い系統もあり、更に良い個体と悪い個体がある。ほんの一寸探しさえすれば貴方が一緒にスタートする仔犬を求めるのには別に問題はないだろう。勿論、最初に見た仔犬を直ぐ盲愛に陥ったりしないで、その時その時で素晴らしい鳥猟犬になるかどうかを正しく判断しなければならない。

 ここで私は一寸つけ加えたいと思うが、一般に言われている、専ら品評会向けに作出されているポインターやセターには、トライアル系の血統に見られるような天賦の猟能は期待出来ないと言う事である。本質的に立派なシューティング・ドッグと言われるものは、充分な訓練と扱いによって、望まれる捜索範囲をこなし、主人がそれを射撃する為に到達する迄、ゲームの位置を明確に指示しているべきものである。

 そしてこれらの動作は素速く、立派なスタイルで叡知と勇敢さと的確さを以て行われねばならない。彼のポイント時における作法は個人的な好みである。私個人としてはシューティング・ドッグは鳥がたち、銃が発射された後指示がある迄、不動のまま止まっているものを好む。運搬も又個人的な好みであるが、多くの人々は犬が運んで呉れるのを喜ぶ。普通の猟では運搬は望ましい事であり、半矢鳥の場合は殊にそうである。完成されたシューティングドックについての更に詳細な事は、後に出て来るフィールド・トライアルの章で申し述べる。

 快適なシューティングドックと言う条件がかなり使われているが、この点については私は紳士の使用するシューティングドックという事で良く定義づけられると思っている。快適なシューティングドックとはハンドラーの側にとって、殆んど何等の指示も与えないで済むような方法で仕事を行う犬の事である。多分初心者にとって他の如何なる事よりも注意を引くのは、彼の犬のレンジの事であろう。良い犬は銃の射程範囲外には決して出てはいけないと思っている狩猟家を私は知っている。この考え方は間違っている。何故ならばそれではゲームを指示する犬の価値を無くさせるからである。

 例えばスパニエルのようなポイントの無い猟犬に対して、このような事を期待するのなら、それで良いが、指示犬はゲームを見出す為に射程範囲外に広く捜索しなければならない。如何なるゲームでも犬の助けを借りないでは、猟者の通過では翔たないものである。勿論その捜索範囲には自然の地勢や林の濃密さに左右される実際的の限界はある。しかしながら彼がそこで鳥を押さえているポイントが発見されるならば、犬が何時も視界の中にいなくてはならぬ何の理由もない。若し彼が三分か四分視界から去っても、常に前向きのパターンで狩り込んでいる限り少しも心配する事はない。

 この問題については又後程詳しく述べたい。

 シューティングドックは如何なる具合に完全に訓練されねばならないかと言う点に閑しては、かなり違った意見があるようである。若し犬が上述のような基本的な要求を、あなたの前で殆んど指示する事のない程完全に遂行出来たならば、これはその90%が訓練の賜であると私は思う。家庭訓練の作法について言えば、彼は馬や車に馴れ、何時でも従順であるべきである。

 又、例えばヒール(後へ) ステイ(待て) カムイン(来い) アップ(飛べ) ダウン(伏せ) シット(坐れ) イン(入れ)ウオー(止れ) そしてクワイエット(静かに)等の命令に直に従うべきである。

 従って先ず訓練の第一歩は、あなたの心の中に、犬に何をして貰いたいかをしっかりと畳み込む事である。それでは私共は主題に入って行こう。




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著者紹介

 著者ロバート・G・ホイール氏は、ニューヨーク州スコッツビルに住むエルフュー犬舎の所有者であり、経営者である。
 彼は猟犬の訓練・作出に生涯の大部分を費やした。彼等と共に猟をし、フィールド・トライアルにおいて、実際に彼等をハンドルし、審査をして来られた。そして、1936年からシューティングドックの作出に着手され、20年以上に亘る血の滲むような努力研究の結果、今日のエルフューケンネルを築きあげた。
緒 言

 北部は丁度秋である。太陽は霧を吹き散らそうとし、日光は華やかに色付いたブナやモミヂを通して、森全体に虹色の、又、柔かいコハク色の輝きを与えている。空気は澄み、松やツガの香りが微かに漂っている。時々カサカサと音を立てる木の葉や、間もなく訪れる冬の貯えに働いているリスの一家族が囀(さえず)る外は、全く静寂そのものであり平和である。

 貴方は倒れた丸太の上に坐り、貴方の友である犬を眺め乍ら、今年の狩猟シーズン初めて手にしたパートリッヂを賞でている。運搬して来た犬の心は誇らしさで一杯で、あなたの傍に坐っている。

 或は貴方は南部で快適に歩を進める馬の背に跨がり、松の林やオークの灌木や綿畑を通り抜けているかも知れない。あなたは既に犬に後付けをさせている。一日の猟は終わったからだ。空気は田舎や山芋の甘ったるい香りを微かに運び、貴方は過ぎ去った時間に思いを馳せ、沈みかけた太陽が長い影をひかせるにつれて、柔かく並んでいる丘のあちこちから、聞き馴れたボブ・ホワイトの鳴き声が聞こえて来る。

 或は貴方は雉の猟野に居るかもしれない。そこはカーキ色の平坦な農地で、沢山の統制された猟野で細心の注意を払って進む。貴方の「誇りと喜び」の象徴である愛犬が、今や美しい礼服を纏った雄雉を運搬して来たところだ。
 
 或は貴方はニューイングランドにおいて、森のいたずら者グラウスを狩り、或はサスカッチワンでシャープテイル・グラウスを求め、或はダコダで狩り、若しかすると広大な西南地方で渓谷ウズラを狩っているかも知れない。

 貴方が何処にいるとしても、この我々の輝かしい国には貴方が狩り得る陸鳥が住んでおり、そしてこのスポーツは何という楽しいものであろうか。それを立派に行なう事は真に芸術であり、素晴らしい鳥猟犬はこのスポーツの真髄である。良く訓練された犬と一緒に野原や森の中を彷徨い歩く喜びと友情はどんな人も見落としたり、又何処の少年も奪われたりしてはいけない一つの経験なのである。

 この本は読者に立派な犬についての認識を深めさせ、一つの簡単な要約された形にまとめ上げ、初心の犬の所有者が彼等の友人である犬の訓練に成功出来るように、一歩一歩仕事をして行こうというものである。

 犬の訓練は若し順序立てられた方法で、ここにこれから述べられているような単一の段階に従うならば、実際には非常に簡単な事である。そこには難しい事も不思議な事も何も無いし、学ぼうとする希望と、犬に対する愛情がありさえすれば、誰でもが何等の困難なく達成する事が出来る。

 この本は猟犬の指示犬種の訓練についてのみ扱う。ここに並べられる概念の殆どが、大体全部の猟犬に適用出来るにしても、これは殊に指示犬種に向いているものである。若しこのテキストが多少無作法に見えても、その節は何卒お許し願いたい。私は大体全部の指導や、要約された方法のうち、或はその過程において、誤っているハンドラーを多少酷に扱うような事柄を、貴方に申し上げるかも知れない。

 先づ第一の問題は犬の訓練ではなくて、訓練者を訓練する事だ…….というのが真のねらいである。貴方は訓練者の仕事や彼の心の態度、忍耐、愛情、一貫性、自己の抑制、理解、雅量等に関する多くの怖れが、この本を読んで行くにつれて四散してしまうのを見出すだろう。訓練計画の段階を良く会得する事は、最終的に良い結果を得る為には非常に重要な事である。

 「犬や動物の扱いを心得ている」と言っている人を、貴方は度々聞く事だろう。或る人が犬の扱いを心得ているのは事実かも知れないが、それは何も不思議な事ではないのである。これは上に述べた事柄を良くマスターした結果に外ならず、貴方はそれらを犬との仕事に応用すれば良いのである。貴方はそれを犬の心理学と呼んでも良いと思うが、然し貴方がそれを何と呼ぼうとも私が知っている事は、即ち「それはなさねばならず、且つやる事である」という事である。貴方が、この問題に正しい気持ちで立ち向かうよう心構えをしない限り、この本や或は他の如何なる本も余り価値は無いだろう。訓練の実際のやり方は大変簡単である。困難であり且つ重要な事は、その方法が如何に進められて行くかであり、又、貴方が何処までそれを完全にやったかという事である。

 鳥猟犬の訓練は経験深い人々にとっては大変議論の多い所である。一番巧妙な仕事については多くの異った意見がある。全ての方法を取り扱うのは大変長々しくなり読者を混乱させるだろう。この本の中に収められている示唆を行い給え。これは私自身の経験に基づくものである。多分これと全く同じ仕事に従う訓練者は二人といないだろうが、殆んどの人が大体同じ線に沿っているものである。

 この本はアマチュアで最終的に快適なシューテイング・ドッグを望んでいる狩猟家の為に書かれたものである。ここに示されている提案に従うならば、貴方はきっと望ましい結果を得られるであろう事を私は確信する。

 貴方がこの本を楽しく読まれ、私が自分の犬を訓練する時のように、訓練に多くの楽しみを引き出す事が出来るよう心から希望する。



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目 次 2007年5月1日版
献辞
著者紹介


編者のことば
訳者のことば
緒言
第1章   立派なシューティング・ドッグとは何か

    色々な犬種、ポインターとセター、望ましい演技者、快適なシューティングドッグ

第2章   仔犬の選択
価値ある仔犬の源泉、天賦の素質、遺伝的な奇形、仔犬入手の適切な年令、求むべき性能、適切なポイントスタイル、

第3章 仔犬の育て方
   計画されたプログラムの採用、問題の理解、適切な態度の採用、大切な第1週目、猟野運動へのスタート、フラッシュポイント、優しい話しかけの紹介、笛による犬   の出走、

第4章 初期の家庭訓練
家庭訓練の適切な方法、命令語「ノー」「ウォー」「カムイン」「オーライ」の訓練

第5章 猟野訓練
適切なパターンの発達、家庭訓練の猟野訓練への応用、望ましいレンジの進歩、

第6章 銃声馴致
   ガンシャイの防止、何時銃の使用を始めたら良いか、始めてのゲームの撃ち落し、

第7章   最終的なヤード・トレーニング (基礎訓練)
   命令語「ヒール」「シット」「アップ」「ダウン」「イン」の訓練

第8章   シューテイングドッグのブレイキング
   ブレイクする最適の時期、ブレイキングの二つの上手な方法、フォースカラーの使用、ゲームに対する適切な作法、

第9章   運搬    
   自然の運搬能の向上、運搬の強制訓練、隠した物の運搬、運搬方向に対する腕の指示、ゲームの運搬、

第10章  放したゲームの使用(置鳥訓練)
   置鳥の価値、鶉コールペン(呼び込み籠)の構造と使用法、放した雉の適切な使用法、鳩の使用法、自動放鳥器、

第11章  追加訓練の仕上げ

   他犬のポイントの尊重、笛の用い方、狭い捜索の指導、ジープや馬上において犬を働かす方法、不意のたち鳥へのポイント、

第12章  成犬の訓練の保持
   訓練事項の高度の集約、一般的な猟のルール、猟のエチケット、威信の保持、

第13章  調整
   仔犬の飼育、寄生虫の予防、種々の運動方法、適切な食事、調整食、股関節発育不全、

第14章  悪癖の矯正
   ガンシャイ、レンジを狭くする方法、鎖の適切な使用、鳥の蹴出し、空ポイント、ブリンキング、暴走、ドロッピング、トレイリング、闘争癖、ゲーム以外の物へのポイント

第15章 プロの訓練
   プロの訓練の価値、プロトレーナーの選択、プロトレーナーと同様な方法での訓練、

第16章 シューティングドッグの作出
   遺伝的及び環境的因子の分離、ラインブリーディングとインブリーディングの定義、遺伝の間題、選択作出及び淘汰、作出計画と目的の樹立、所謂種属の歯止め現象、

第17章 体構   
   適切な体構の価値、体構のみを目的とした作出の結果、維持しなければならない望ましい体構の重要性、作出の究極、
   
第18章 体構の基準(猟野系ポインター)
満足すべき猟野系演技犬の一般的な基準

第19章 犬舎     
適切な犬舎の一般的な要求、寄生虫の予防、樽の犬舎と鎖で繋ぐ犬舎の詳細、

第20章 フィールド・トライアル     
   起源と目的、指示犬種の色々なトライアル、各ステイクの基準及び彼等が審査される基本点、フィールド・トライアルの仕事、理想的なシューティングドッグの演技、

第21章 トライアルに勝つ為に    
   トライアル出走犬の分析、勝てない理由、ハンドルする際への示唆、適切なハンドリングの例、トライアル前の準備、


ステディネス
Steadiness 【FT用語】(鳥猟犬)
飛び立ったゲームを不動のまま見送ること。犬は本能としてゲームを捕まえようと後追いすることは当然であるが、銃猟では射撃の邪魔になるし、群鳥の場合は残鳥まで蹴出してしまうので、マナーに欠けると見なされる。

ストップ・トゥ・フラッシュ
Stop to Flash 【FT用語】 (鳥猟犬)
ゲームが飛び立つのを見て、犬が止まって見送る状態をいう。


Point3
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『各国の審査基準とその解説』


第9項:ポタリングとブリンキング

これらに関しては、特に言及する事は無かろう。
ブリンキングは、ポイントした犬がポイントを解いて捜索に移った後に、ゲームの居た事が確認された場合のみ現れるが、この悪癖は鳥猟犬として無価値であるといえる程、重大なものと言えよう。ステディの犬の場合は、ハンドラーがフラッシュする為、ブリンキングが具体的に現れ難い事が考えられるが、元来この悪癖はバード・シャイが起因であるから、慎重に観察すれば、例えブリンキングが無かったとしても、他の猟技で判定は付く筈である。
ポタリングについては、ただ鼻の支持が低いだけではポタリングではない。常に高い鼻は理想ではあっても、必ずしも理想通りにはいかないし、また、地形の複雑なコースでは、高低の鼻の使い分けは必要な猟技であって、欠点ではない。ポタリングは残臭や足臭に拘って、ロケーションが出来ず、所謂ベタ付いた姿である。比較的判定し易い悪癖であるから、特に注意する事はないであろう。

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『各国の審査基準とその解説』
第3章 猟技の解説より抜粋


Back05
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『各国の審査基準とその解説』

第8項:バード・ワークとバード・センス

必ずゲームの存在するコース、或いは放鳥によりゲームの存在が確認されているコースの場合は、良かれ悪しかれバード・ワークを見る事が出来るし、判定もつき易いが、ゲーム不在の場合は常に疑問を残す事になり、また、ランニングのみで判断しなければならない場合も多い。

このような状況は、トライアルとして万全を期したものとは云えないけれども、諸種の事情でやむを得ぬ場合もある。運営者の努力にまつ所が多いが、このようなトライアルのジャッジとなった場合は、極めて難しい課題を負う事になる。

パピー(幼犬部門)については、一応バード・ワークは重視しない事になっているが、激しい猟欲と主人のハンドルに対する協調性を示す事等を観察する事によって、将来のグラウンド・ワーク及びバード・ワークの能力を推定する事が、多くの場合可能である。
ゲームが居ない場合のダービー(若犬部門)、ガン・ドッグ(成犬部門)のバード・ワークの能力については、ランニング中のバード・センスで推定する以外に方法が無い。
バード・センスと云われるもの自体が、極めて漠然としたものであるが、先天的な素質と訓練と経験によって、本能に近いものまで昇華されて具有される猟犬特有の知恵と解釈されるものである。従って、このバード・センスの良否を判定するジャッジは、バード・センスという言葉で表現される内容を十分に理解した上で、種々の犬について実地に研鑽し体得する事を怠ってはならない。
極めて大まかに解説するならば、コース上のオブジェクティブ(目的物)に対する犬の判断、スピードの変化、風の利用、鼻の上下の使い分け、ハンドラーへの応答等が判定の基礎になるであろう。

コース上にゲームが居ると予想される場合であっても、自然鳥のみでは必ずバード・ワークが実現するとは限らない。ギャラリーの騒音などの為、犬がその場を捜索する前に飛び去ったり、這い去ってしまう事も多い。この場合には、残臭に対する犬の態度によって、バード・センス及びその基礎となっている諸性能を見分ける事が出来る。但し、この場合、最も注意しなければならない事は、残臭に対して一見した所では何等の反応を示さない犬の中に、最良と最悪の犬が居る事である。
知性に優れ、嗅覚力が抜群の犬は、既にランニング中に、残臭か体臭かを嗅ぎ分けているかもしれない。そうだとすれば、最良の犬である。もし、この犬を見落とすようではジャッジとしての力量を疑われても致しかたなかろう。
しかし、多くの場合、残臭に対した時の犬は、例えそれが一歩一瞬の動きであったとしても、何等かの変化が観察される事が常である。即ち、この一瞬の変化を理解し、評価出来るか出来ないかが、ジャッジの力量にもなる事である。従って、ジャッジは一瞬たりとも犬から目を離す事が出来ない事になる。慎重な観察と細心の注意力を集中し続けなければならない。
但し、ジャッジは既に飛び去ったゲームの立ち跡等に犬を誘導させて、犬の反応を見る必要はなく、そのようなハンドラーへの指示は避けるべき事に意見は統一されている。

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『各国の審査基準とその解説』
第3章 猟技の解説より抜粋


Back03
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第7項:フォールス・ポイント

所謂からポイントは、ゲームの生産が出来なかったポイントの事で、これは何の疑義もない筈である。
フォールス・ポイントに関連して注意しなければならない事は、先ず第一に対象ゲームが何であるかを考える必要がある。対象ゲームが定まっていなければ、正しいポイントが理解出来ない。元来、ポインティング・ドッグは陸鳥の中で、地鳥と云われる種類のゲームを狩る為に生まれ、改良されて来たものであるから、これらの犬の対象ゲームは地鳥に限られるものであろう。このような観点から、FTCでは、トライアルの対象ゲームは、特に何々に限ると謳ってない限り、キジ、ヤマドリ、ウズラ、コジュケイ、及びヤマシギとする事は、既に決定されており、承知の事であろう。

この中には現在は極めて稀にしか出会わないゲームもある。また近年の如く、放鳥トライアルが行われ、益々その傾向が強められる情勢であるので、例えば、ヤマシギは除外しても良いのではないかという考え方はあるかも知れない。しかし、時期と場所によっては、コース上にヤマシギが見られる事もあり、また、このゲームの性質上、ボディ・セントでポイントしなければならず、犬の嗅覚力と決断力と知性を試す為には好ましいゲームと思われる。

また、ヤマドリに関しても、通常のトライアル・フィールドでは、殆どのヤマドリには出会う事は少ない筈である。適当なコースが無く、余儀なくヤマドリが生息するような深い谷を使う事もあるかも知れないが、トライアルとしては例外的なコースである。また、ヤマドリを主なるゲームとした場合、犬の演技は実見する事が出来ない事が多く、ポイントのスタンチネス、、特にステディネスに関して、大きな疑問を投げ掛ける恐れもあり、好ましいとは云えない。

しかし、これらの2つのゲームは、昔から我が国の鳥猟犬の対象ゲームであり、直ちに除外する訳にはいかないであろう。アメリカに於いても、ヤマシギを対象ゲームとするトライアルが創設されているし、また、ニューイングランド・トライアルでは、創始以来、ヤマシギを対象ゲームの1つとしている事も、猟野とゲームの変化に対する犬の知性、適応性を高く評価する為のものであり、我が国の猟野と多くの類似点を持つこのトライアルを、模範とする事は理を得ているものと考えられる。

従って、フォールス・ポイントはこれらのゲームを生産し得なかったポイントと云う事に注意しなければならない。
次には、上記5ゲーム以外のゲームまたは爬虫類、獣類その他に対してのポイントはどう扱われるかの問題がある。実猟に於いては、ウサギ、カメ、ヘビなどにはよくポイントする事があり、トライアルに於いても同様の事が稀に起こった事もある。このようなポイントは、対象物が確認された時は、ノー・ジャッジメント、即ち審査上何等の考慮を払わない事に決定している。美点も無ければ欠点も無いものとする。但し、獣類に対しては、チェイス(後追い)しない事が条件となる。ウサギをポイントし、追い掛けて鳴く様な事は、ポイントまで許容されるが、その後の行動は鳥猟犬として好ましからざるものである事は当然である。
また、バン、クイナ等のコースにより、また時期により出会う機会があり、これらのゲームはその習性上、這い回る事が多く、ハンドラーがフラッシュさせる事は不可能に近いし、ステディネスを訓練されていない犬は、ゲームを追い回したり、ポタリングしたように見られる事もあるので、ゲームが確認されたなら、速やかに現場から犬を放すように指示すべきである。

カメ、ヘビ等も強烈な体臭を発散するようで、また、その体臭は鳥類のそれと似ているように思われ、老練な雄犬でさえポイントする事がある。これらのポイントは、全て審査外のものである事を確認し、適切な判断と処置を講じなければならない。更にフォールス・ポイントに関して注意しなければならないのは、アンプロダクティブ・ポイントである。

アンプロダクティブ・ポイントはハンドラーがゲームをフラッシュする場合は、比較的判断し易い場合もあるが、通常は殆どがフォールス・ポイントとするべき場合が多い。従って、ゲームを生産する事が出来なかったが、確かにゲームが居たに違いないとして、安易にこれを認める事は、劣性の犬、決断力に欠ける犬、嗅覚力に欠点のある犬などを救済し過ぎる事になる。アメリカのように飛翔と銃声に対してのステディネスが義務付けされているならば、時としては、アンプロダクティブも認められるであろうが、審査上、この乱用は厳に避けるべきものであろう。


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『各国の審査基準とその解説』
第3章 猟技の解説より抜粋