今日は、だいぶ前の話になりますが

ヒマラヤを旅した話をしたいと思います。

 

 ネパールの首都カトマンズから西へ、山あいをバスで5,6時間行くと

ポカラという村があります。ここは、海抜が8~900mくらいで、1,2月

といった真冬でも暖かい所です。

 

                イラスト 広池出版 「れいろう」より

 

 ここを訪れた1月のある日、1日がかりでトレッキング(山歩き)をして、

ナウダンダという、マチャプチャレをはじめとした7~8000m級の山々が

よく見える村まで行きました。

やっとたどり着いたころは、もう夕方でしたので、私はそこで宿をとることにし、

一泊4ルピー(1ルピー=10円)で交渉し(宿代は交渉して決める)

部屋でくつろいでおりました。

 しばらくすると、宿の主人がやって来て、先ほど4ルピーで約束したのに、

宿泊代は10ルピーだと言いだしました。私が条件が違うと言い返しても、

主人は10ルピーだと一点張り、このやりとりの末、その宿へ泊るのをやめ、

他の宿を探しに行きました。

 けれども、日暮れが近づいて、山道を通る人の姿もまばらになり、

宿はなかなか見つかりません。標高 千 4,500mのナウダンダでは、

陽が沈むころには、夕陽を浴びて山々はますます荘厳な輝きをましてきます。

と同時に、たいへん寒くなってきて、私は宿がなくて心細いのと、寒いのとで、

ぶるぶる震えておりました。

 すると、1人の男の人がやって来て、私に「おまえ、寒いだろう。おれの家へ

来いよ」と、声をかけてくれました。私にとっては、願ってもない神の声でした。

私はその男の人の家に泊めてもらうことになり、家へ行ってみますと、

部屋は小さな土間で、かまどとベッドが2つあるだけのたいへん簡素なもの

でした。1つのベッドには、病気の父親が寝ておりました。

 私は、自分がどこかに寝かしてもらえるのかと考えておりますと、男の人は、

おまえのベッドや布団はないから、おれのベッドで仲よくいっしょに寝ようと

いうのです。ベッドはそんなに広くありません。男の人は体を小さくして私を

入れてくれました。実は、ネパールでは同性愛の人が多いらしいなどと、

聞いておりましたので、“仲よく”と言われたときには少し気になったのですが、

そんな私の邪推をよそに、男の人は見ず知らずの私を横にして、すやすやと

眠ってしまいました。こうして、寒いけれど心の中は温かい一夜を過ごすことが

できました。

 分かち合うということで、こんなこともありました。

ポカラの宿で、そこの若主人の友人がやって来たのですが、私はあめを

1つしか持っていなかったので、その友人にはどうしたものかと思っていると、

若主人はそのあめを2つに割って友人にあげました。

 

 

 私が、ああ、よかったと思っていると、今度は、若主人の弟が2人

やって来たのです。もとから、小さなあめですから、さらに半分にする

ことはできないし、どうするのかなと思っていますと、男たちは、

もう手では半分にできませんので、歯で割って、半分にして分け与えて

いるではありませんか。結局、彼らが食べたあめは、わずか4分の1

ずつなのです。しかし、彼らはとても楽しそうなのです。

あめを食べることよりも1つのものを分かち合う心を味わっている

のだなあと、思いました。

 今、物があふれている日本で、このような見られるでしょうか。

いくら物が豊かになっても、分かち合う心だけは忘れたくないですね。