日本から唯一、TescoのVA、Projekt Neue Ordnungに参加していたS·Coreの1stLP。彼の出回っている写真が廃墟の中で正座しているものだったり、いくつかのカセット作品のジャケットが「和」なものだったりで、どうしても彼の作品には端正とか和風という言葉を使いたくなる。この作品も正にそうで凛とした雰囲気の中を幾多のノイズが交錯していく。リリース元のZABRISKIE POINTはHANDS TOの諸作品も発行している。異相は違えど音響系という言葉がまだ存在しなかった頃にノイズで何かの奥深い情景を描き出すという姿勢は両者に共通していたのではないか。インタビューではS・COREの音楽は根源的不安を呼び起こす為の音楽であるとの発言もあるが、この得体の知れぬ不安が世を覆う中で、耳に聞こえ、また目の前に鮮やかに端正な黒色の不安を塗り込めてくれる様な音の流れにどっぷりと浸ることは一つの贅沢だと言えるだろう。
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VA 音(NE)
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カナダのBanned Productionからその昔出ていた日本人ノイズコンピレーション第一弾。1988年作。時代としてはMerzbowが轟音一直線と言った感じの弩ハーシュをかまし始まるちょっと前だろうか。ノイズを聴き始めたばかりという補正がかかっているではあろうが矢張りノイズ創世記と言った感じの湿り気が感じられる。如何にもアナログな音のNOIZRT、怪しいバンド名通りの不明瞭なドラム音などに浮遊感漂う(トリップとかそんな今様のものでは無くただ不気味で身体に悪そう)エコーがかかるJim&Jinmin Jeans、水谷聖も参加のコラージュMerzbow、音源の少なさが残念でならない精巧な音世界を構築するSBOTHIの音素材を使用した透過性分子の別名義=灰人者、錆びついた腐食リズムがたまらないK2、オヤジのせんずりコラージュのThe Gerogerigegege、ドイツ語とホワイトノイズをバックに流しながら佐川一政が人肉を食べている様を朗読してからラジオのつまみを適当に回すMental Decay(下関のバンドというのがまた良い)、音と構成が余りにも不明瞭すぎて全く意味をなさない猿合奏=Sargassoは猿の合奏だからなのか、タイトルKannonは観音でありこの曲は神の不可視性を表現しているのかと深読みしたくなる不可解雑音群。どうしようもないジャケットも素晴らしい。
Les Joyaux De La Princesse & Regard Extreme / Die Weisse Rose
第二次大戦期のミュンヒェン大学生達などによる反ナチス抵抗運動を描いた傑作。白バラの行った抵抗運動の背景には彼らの信仰心や恐らくは当時の大学生達にあったであろうノブレスオブリージュの為と個人的に考えているが正に彼らの動機を盤面に落とし込んだかのような作品である。気高く己の理想を天に捧げるかのようなメロディと効果的にただ一度だけ使用される「ただドイツの事のみを考える!」というヒトラーの演説、メランコリックに沈み込んでゆく音の連なり。ゾフィーショルのTシャツ(そんな不遜なものが実際に存在する!)を売り買いするような人間には絶対に作りえない真摯な作品である。
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Anenzephalia/Lyse
死亡診断書と何やらの医療器具がジャケットに貼られたAnenzephaliaの1stEP。彼の音楽の非人間性は私が知る限りインダストリアル音楽の最高峰であると思う。この作品を聴けばそこにあるものが一切のポーズや衒い等では無く、ありのままの非人間性の表出であることが分かるだろう。その決して人を寄せ付けない非人間性をB.Molchは無脳症、Anenzephaliaと名付けたのか、若しくはもはやこの世界では人である必要がないとしてここまで非人間性を貫いているのかは想像するしかない。どちらにしても作品中に現れるのは最も望まれない形で非人間化していく、人間のスケッチである。勿論、そこに怒り、告発、嘆きなどの感情が一切ないことは言うまでもない。
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Genocide Organ の1stLP.
ぐらぐらと揺れるような音感が不安感をあおる「死体の列」。こういう作品を聞くと否応なくインダストリアル音楽とはそもそもヨーロッパの音楽なのだと思わされる。この禍々しさは矢張り自国が戦場となり、何時他国から攻め込まれるか予測もつかない不安と共に生きてきた記憶を正確に受け継ぐ人間のみが作り出せるものだろう。それは当然、そんじょそこらの人間が辿り着ける所ではない。震えが走る様なバックの音にApocalypse Nowのセリフが絡みつく  Face of Horror, リスナーを引きつぶす様なCome Orgasm、1945年の東部前線の恐ろしさそのままのStalins Orgeln、そしてKeiner Kommt Zuruck、誰一人として帰ってこなかったという希望の無いトラックでこのアルバムは幕を閉じる。再発版ではこの他に2曲暴力的なトラックが追加されている。