ATRAX MORGUE-SICKNESS REPORT
 

Atrax Morgueを初めて聴いたのがこの作品。電子雑音の1号だか2号だかで田野さんがレビューを書いてらして興味を持ったのがきっかけだった。リリース元であるRelapse:Releaseから直接購入したように記憶している。その頃に私が好んで聞いていた所謂「ジャパノイズ」勢の暴力的ではあるが屈託のない音やRRR周辺の雑音の面白さ:幅広さを楽しんでいる様な雑音群とは違い病理、異常、死に満ち満ちたグズグズ、ブスブスとそれこそ最終曲の「Slow Agony of a Dying Organism」そのものの病臭を撒き散らす様な不健康で自分を苛む音群はまあ矢張りある種の人間には嵌まるわけで私も以降、彼の自死までその活動にお付き合いすることとなった(逆に精神的に受け入れられない人間も当然にいて確か編集部でも「アレは無理」という人もいたように記憶している)。また今も再発が続いているのは単純に金の問題だけではなく彼の「SICKNESS REPORT」が未だに、ある種の人々にとっては、有効であるからだろう。全面をジャケットの色の様な色彩のはっきりしない音の膜が覆う中で唯一、明確な拍子のある「Deformed」。その自分の太腿の肉を狂的に抉り取るような、頭を汚れた壁に打ち続けるような、とち狂った己の内部に向かう暴力や最終曲「Slow Agony of a Dying Organism」にある体の奥底から染み出してくる様な死(生)の苦悶の声が彼の創造性の源でありその日常であったならその中で憔悴し、辟易し音作りから、死の前の暫しの時間ではあれ、遠ざかったのも当然であろうと思う。音作りをしてもしていなくてもいつかは自死したであろう人。