programmatika-  ANENZEPHALIA

 

2017年リリース作が2024年4月の大阪でのイヴェントに合わせ再発されたもの。2017年のリリース当時、新宿の某店に委託品が1点だけ入りそこに居合わせたLinekraftの大久保さんに「Anenzephaliaは買っておいた方がいいですよ」と余計なアドヴァイスをしたのを覚えている(当時でもなかなかの値段だった)。当作品は同時に23枚限定のテストプレス盤、通常のLP、ピクチャー盤LPとしても再発されている。15人の無脳症が乱舞するアメリカ的過剰さとDominick Fernowの狂気が炸裂するピクチャー盤とは異なり無脳症の数は8人と抑えられているが企業ビルとnew idols、検査技師のようなお姉ちゃんとnew people、無味乾燥な集合住宅とnew homesという語が結び付けられているポスター様のモノを見たところで心が浮き立つはずもない。曲名も一々記さないがこれから起こる何かを心待ちにさせるようなものは一つも見当たらない。そしてCDをプレイすると冒頭から寒々しい風の音がスピーカーから聞こえてきて、その風が心の隙間を通り抜ける。しかしながら、他レーベルからのリリースだからと意識しているのか否かは不明だが、Tescoからのリリースの各品にあるような聞き手を殺すことが目的かのような単色の腐敗ガス音は余りここには存在しない。時には煌びやかですらある音がある様に音の明暗がくっきりとしているのだ(恐らく彼が初来日時にMSBR田野さんの在所から新宿に向かったであろう電車の走行音や車掌のアナウンスまでここでは聞くことが出来る)。だからと言って当作品が向日的な物であるはずがなく、それは震災のがれきの中に「原子力明るい未来のエネルギー」という語を見つけ出した時のような若しくはカフカ(2024年東京より大阪に向かう新幹線の中での会話によるとカフカはB.Molochが一番好きな作家の一人である由)がユーモア小説であるとされる言説がある様なもので悲惨、皮肉の度をいや増すものでしかあるまい。一瞬一瞬はそれほど暗くはないが全編を通して聞くとどうしようもなく重苦しい矢張りAnenzephaliaな一枚。