Taint-Indecent Liberties

 

今でこそ人畜無害なお洒落風小物としてすら機能しうる「ノイズ」であるが私がノイズに漬かり始めた頃は(90年代初頭)インターネットもSNSも無く、街にはまだ「汚れ」があり、「ノイズ」にも80年代からの度を越した悪趣味の残滓の様なものがまだ辛うじて残されており手にすることでその邪悪な何かの一部分を自分の家に持ち帰ってしまう様な「何か」もまだそこにはあった。Praxis Dr. Bearmannはそんな「何か」を幾らか排出していたドイツのレーベルである。そこから95年に出たTaintのIndecent Liberties。その後に行ったインタビューが本当であれば悪魔崇拝者の手によって本当の血が塗りたくられたジャケットが金網の中に封じ込まれている。ドロドロした低雑音と明らかな悪意を持った高音。妖気染みたエコーのかかった痴呆の声。淀んだ誰かの声や雑音はそちこちに停滞し不健康な音を垂れ流す。盤上にある全てが陰湿な否定にあふれていた。こんな「人間」に自らの住所を晒したうかつさを悔やみながらも彼から届いた電子雑音2号インタビューへの返答を読みながら「ああ、この人は本物だ」と5歳くらい彼より年下の私は思ったのだった。とある本に書かれたUlex Xane(Streicher)の彼に対する弔辞はその彼の偽りのなさに敬意を表している。「それは本当の世界やストリートから生まれたものだった。他のバンドの様にホラー映画やセックスを売り物にした糞、ナイロンに対する糞みたいな話や可愛らしいジャップの少女が縛られたりセーラー服を着ているようなもんじゃない。そんなものはクソ喰らえだ。今頃のヒップスター風のトウフノイズじゃ俺は興奮できない」と。彼にはMysogynist Lustという作品もあるがこの弔辞の中でUlexは正しく彼はMisanthropeであったと書いている。「女嫌い」ではなく「人間嫌い」なのだと。その人間嫌いのまま人間嫌いの人間とだけ付き合い、己の悪趣味に耽溺してさっさと死んでいった彼に私は嫉妬する。最後はUlexの文で締めよう。「By request,he wanted no funeral.Blank,gone,done,dusted.」