Missionary-Mujahadeen

このタイトルでノイズとジャンル分けされていれば怒涛のノイズと熱砂のようなアジテーションヴォイスと思うだろうが豈図らんや全く違う。そんな単純なものではなかった。静まり返った空間で詠唱が厳かに唱えられる冒頭。窓から差し込む光の筋のような一本の音がその空間に現れる。その光はギリギリとした不快な音の束へと変貌し重苦しいドローンと何かの金属を緩慢とは言えぬまでもそう熱心ではない動作と共に叩く音がそこに加わる。まだ遠くの方で詠唱が聞こえている。一瞬音が途絶えた後にかなりの音量で挿入されるラジオニュースと思われる音、様々な放送局からの情報が入り乱れ、電波は乱れ、ラジオはそれらの電波を正確に拾わずノイズが喧しい。その中でも何らかの忌まわしいことが行われたことが英語(若しかしたらそれ以外の言語でも)報じられる。やがてそれらは静まり返り、また何かの金属を叩く音が聞こえてくる。人がトンネルの向こう側から何かを、歌かスローガンを唱えるように、叫んでいる。何が機会となったのかその音は急激に大きくなり、また何かを切っ掛けにその音は小さくなり、またやや大きくなる。その繰り返しでAサイドは終了。何かを伝えたいという意思を持った低音のパルスと唯、自然現象で鳴っているだけとは思えないコン、コンという小さな音。闇夜にぼんやりと浮かび上がる淡い光のような高い音が何やらオカルトめいた雰囲気を醸し出す。それらの音はややスピード、音量、明度を変えつつだらりだらりと連なり流れる。その音が止んだ後に歪みのかかった詠唱が始まるのだが、その詠唱する男性の声は、泣いているのであろうか、時々途絶える。それは号泣などではなく堪えきれない落涙の様だ。異教徒にとっては何とも不可解で不明な一作。音自体は昨今の「ノイズ」というよりも90年代初頭前後の日本ノイズコンピ「音」シリーズやNUX Org.のコンピを思い出した。