Astral Death / Mortwight – Death Initiation

電子雑音ありし頃はまだブラックメタルとノイズ/アンビエントとの混淆は多分始まったばかりでその動向を知ることはさして難しくなかったように思う。そこから思うと今の情報過多状態には嬉しいを通り越してお手上げ状態の悲鳴を上げざるを得ないが思えばあれから20年以上が経っているのだからそれも道理といえば道理。現在の跳梁跋扈状態もテクノロジーの過剰な進歩を憂うのは年寄りのみでここは素直に、たとえ玉石混交であるかも知れぬにせよ、まずは現状を楽しむべきなのだろう。このカセット、またディストリビューターAttic Shrinesにもそれなしでは辿り着けなかったはずなのだから。

Death Initiationと名付けられたスプリットカセット。如何にもブラックメタル、ダンジョンシンセの様な外観。中を開けるとカセットは何故か黄色。片面にロゴマークがピンク色で押印されている。そのミスマッチが嘔吐を催させるような何かを惹起するのだが余り深く考えるのは止めることとした。まずはAstral Death。それほど強くない鉛色の風が延々と吹き続けるような右も左も分からない情景をただひたすら描き続けるような音世界。近代風に言えばテレビの砂嵐を無音でずっと聴いているような心持とでもいえばよいだろうか。ただひたすらに未来も過去も現在もなく頭の中が虚ろになる佳作。宣言文にあるように正にAstral Void。続いてsongs for dying civilizationsと宣言文にあるMortwight。ノイジーなダークアンビエントと一言で言っては余りにも申し訳ない漆黒の音闇。最早ジャンル分けなど何の意味もないがノイズのフィールドで入手したとしても全く遜色、違和感のないブツ。真っ暗なドローンをやる時のIllusion of Safetyと言えば分かっていただける方には分かっていただけようか。陳腐なantiを掲げて結局は賑やかしに過ぎない一部のノイズ、インダストリアル勢よりも断然素晴らしい一作。