LINEKRAFT - HUNGER FOR LIFE

2023年1月に桜台POOLで行われたライブ録音の前後に録音曲を付したフルレングス。当のライブは大久保さんの意見開陳と観客との応答を含むもの。その場面でとある質問者から「大久保さんの作品に触発され所謂、犯罪行為をリスナーが起こした場合にあなたはどうするのか」という趣旨の質問が出た。後で聞くと質問者の意図は、当然のことながら、大久保さんを倫理的に断罪するものではなく、受けて立った大久保さんも、会話中に生じた無言の数秒間を慣れ合いの微笑や意味のない言葉で埋めなかったことから考えて、恐らくこれは真摯な質問であるということは理解されていたように思う。ただ二人の「革命」観、「捨石」観の相違と限られた時間内での遣り取りであったということから生じざるを得なかった僅かな差異が沈黙としてあらわされるしかなかったのだと思う。
 

「ノイズミュージック」が今ほど人畜無害なおしゃれアイテムとされていなかった頃に発せられていたようなゴリゴリした音に不穏なドローンが絡み、誰かが何かを、静かな声ながらも、必死の思いで話しているのが聞こえてくる一曲目。以降、ライブ実況となる。改めて全編を冷静に聞き直すと、全体的な音の作りは欧州風とは言え、この混沌はいかにも日本的なのだなと思わされる。荘厳ではない静けさ、脳を麻痺させるような金属音の繰り返し、システムを作り上げる音と奈良の事件や暗殺秘録や街宣(?)の重なり、任侠的な暴発型暴力そのままの雑音と声、そして最後の檄。「行動せよ!」と言いながらも、安易な寄りかかり、連帯を全く求めないその態度は大久保さんとの対話時に時として現れるそれと全く同様のものだ。最終曲はタイトル通り、生きることへの渇望で締め。
 

作品外容も生者が死者となって帰ってきた有様を示す写真と日本語、英語で書かれた高橋和巳「邪宗門」からの一節で彼の身中に渦巻く奔流にそのまま身を預けたような作りとなっている。