Linekraft-Bankrupt of Morals

1997年に廃業した某社を前面に出し、同封されたインタビューにあるように、日本的風土:気質にまで踏み込んで言及する一作。Cover Your AssとBankrupt Fuckersという曲名に挟まれて関係者の名前がずらりとタイトルに並ぶ。「組織に忠節を尽くす」とか言ってる頭のおかしなオッサン、不安を煽るような音の合間、不明瞭極まりない人声、どろどろとした情念を音化したかのような若しくは屍体を埋めた土壌から漂い出るガスの様な汚らしいノイズ、一時期嵌っていたらしいダンジョンシンセっぽい音色。例えば彼の近作「阿修羅」も令和時代に大正:昭和初期の混沌:狂気:陰惨を強烈に引き込んでくるというある意味オカルト的作品であったがこの作も同じく令和に末期昭和:平成の白痴化:停滞感:逼塞を阿修羅よりも更に陰鬱な形で引き込んだものと言えるかもしれない。私にはこちらの方がよりオカルトというか異界めいて聞こえるのはLinekraftにとって阿修羅達よりもここに揃った経済人の方が理解に苦しむエイリアンであるからか。最後は社歌(良く考えると会社の歌があるってのは凄いな。海外の会社にもあるのだろうか)がずたずたに引き裂かれて終了。「ノイズ」というジャンルの中に全ての雑多な雑音群が一緒くたに放り込まれていた90年初期(あるいはそれよりももっと前)の雰囲気が充満する名盤。作品を聴きとおして「誰かを思い出させる」と思っていた。その誰かとは今は亡きCriminal Party。あの時代をリアル体験した人にとってこの音群はある懐かしさを呼び起こすのではないだろうか、だからCPを連想したのかもしれない。