昼下がり会議室の隅で若手社員のKがコーヒーを持ちうなだれていた
(昼食を会議室で取って良い事になっておりますー)
はす向かいに座るのは私(teipensou)
「teipensouさん……。またY先輩に嫌味言われちゃって……。
“若いのに遅いねぇ”って、みんなの前で。」
Kが溜息混じりにこぼした
私はお茶を一口すすって、穏やかに言った
「ふん、Yかーあの人はね、“狙って”言ってるんだよ。」
「狙って、ですか?」
Kが顔を上げる。
「そう。“これを言ったら相手はムッとするだろう”って、ちゃんと計算してる。
だから、怒ったり反論したりしたら、それが一番の“成功”なんだ。
毒りんごを差し出された白雪姫が、それを食べて転げまわるのを期待してるようなもんさ。」
「……じゃあ、どうすればいいんですか?」
「食べなければいい。」
私は箸を置いて
「“え、どういうことですか?”って聞くんだよ。無表情で、ちょっとだけ不思議そうにね。
感情を込めずに、“どういう意味でそうおっしゃったんですか?”って。」
Kは首をかしげる「それで、効くんですか?」
私は笑った
「効く。嫌味な人ほど、自分が悪者に見られるのが嫌いなんだ。
だから、“あなた今、嫌味を言いましたよね”って空気を照らされると
口ごもる。“いや、別にそんなつもりじゃ…”ってな。」
「ははぁ、逃げ道を塞ぐわけですね。」
「そうそう。でもね、追い詰めちゃいけない。軽く流す。天然を装う。
あくまでも“聞き返しただけ”の顔をすることだ。」
そこで私はふと、別の例を語った。
「昔、ぽっちゃりした女優さんがいてな。意地悪な先輩が“食べる前に稽古でもしたら?”
なんて言ったんだ。彼女、にっこりして“え、どういうことですか?”って言い返した。
先輩、真っ青になって、“あ、いや、別に…”と逃げたんだー
毒りんごを食べてもらえなかった魔女は自分が困るだけなんだ。」
Kは思わず笑った
「なるほど……反応しないって、案外強いんですね。」
「そう。もっと上手いやり方もある。」
私は少しだけ声をひそめた。
「“すみません、もう一度おっしゃっていただけますか?”って聞き返すんだ。
聞こえなかったふりをして。嫌味を言う人って、他人に聞かれたくないから小声で言うんだ。
だから、“もう一度大きな声で言ってみろ”ってお願いされると、顔を真っ赤にして引き下がる。」
Kの目が光った
「……それ、使えそうですね。」
私はゆっくりと笑みを浮かべた
「最後の手は、“ありがとうございます”。」
「えっ、嫌味に“ありがとうございます”ですか?」
「そう。『あなたのおかげで勉強になります』ってね。
嫌味なんぞ、受け取らなければただの空気。
受け取らないで笑えば、相手が一番気まずい。」
私は湯呑を置いて立ち上がった
「毒りんごは食うな、K君。受け取らない者が一番強いんだ。」
Kは深く頷き、そして心の中でつぶやいた
「“どういうことですか?”……次は、試してみよう。」
お釈迦様の悪口を云う男
その男は「あんな人が持ち上げられているのは許せない」と腹を立てていました
男は、お釈迦様がいつも同じ道を歩いていることを知ると人前でひどい悪口を浴びせ
怒らせて評判を落としてやろうと企みます男は道で待ち伏せし、お釈迦様に向かって
汚い言葉で罵倒し続けますお釈迦様は言い返さず、ただ静かに聞いているだけでした
男はやがて疲れ、虚しさを覚えて座り込んでしまいます
その時、お釈迦様は男に問いかけます
「もし誰かが贈り物を持ってきて、相手がそれを受け取らなかったら
その贈り物は誰のものになるだろうか」
男が「受け取らなかった人ではなく、持って来た人のものだ」と答えると
お釈迦様は
「今あなたが私に浴びせた悪口も、私は受け取らなかった。
だからそれはすべて、あなた自身のものになるのだ」と諭したとされています
私は
慇懃無礼とも云われておりますがねー




