・・・
家継「これ、誰(たれ)ぞある?」
新井白石「白石これへ・・・」
家継「なんや、白石、おるんやったら、そないに照れんと、近う、まいれ。
そーだんも、よーでけんわ。」
白石「上様、それだけは御容赦を。恥ずかしながら、この白石、家柄いやしく(従五位)、
<寄合>という職は頂戴してございますが、全く無役に等しいのでございます。
上様の御尊顔を拝することができる五千石以上という条件にもはるかに及びません。
本来このように直接お話合いをさせていただいているところを見つかっただけでも
切腹ものでございます。」
家継「さよかー、ちかごろの瓦版を見てると、しょーひぜーとやらがあがっとるし、円安には
なってきとるし、<アベノミクス>マジックもうすれてきたと書いてあったがの。
ワテは、はじめから、ソンナモン、あらへんやろなー、思ーとったら、やっぱり
だんだんそないになってきてしもーたわ、愉快、愉快!!」
白石「あのー、上様、拙者をお召しの件、どのような内容でございましょうや・・・?」
家継「あれ?白石、怒ってモーたンか?あいかわらず、短気な男やなー。いや今回は、ワテが
悪かった。
要件やけど、ほかでもない。江戸城きっての物知りの白石にしか答えられない問題や。
そろそろ、後月見(8月の月見に対してこのように表現することがあります)が近付いて
おるやないか?
それで、わて、父上様(先代将軍:6代家宣)と一緒に江戸市中でどこぞ、月見の名所と
言われる場所で、ユーくりと一晩中月を見ていたいんや。
でも、わて、月の名所は知らんしな、ここは、知らないこと以外、全部知っている、白石に
聞いてみる以外に手はないだろーなー、思ーたんや。」
白石「なりませぬ!!!!!」
家継「なんでやねん!(
我ながらエー突っ込みやんけ!!!)」白石「征夷大将軍様が、月見ですと!!!無数の暗殺者からねらわれますぞ!!ところで
月見でその場にお出ましになるお時間は、どれほどをお考えなので・・・?」
家継「ま、半刻(≒一時間)程かの?」
白石「論外です!!!上様、それだけあれば上様のおからだ、いくつあっても足りは致しませぬ。」
家継「白石、あいかわらす、固いやないけ。」
白石「お役目ですから。」
家継「わかってないねんなー。」
白石「・・・?」
家継「ワテは、見ての通りまだまだ子供じゃ。月見と称して、父上様と遊びたいだけじゃ。」
白石「ははー、そんなことは始めから百も承知でございますぞ。
しかし、上様、征夷大将軍様たるものもはや、御自分一人のためだけの
おからだではないと御心得頂かないと・・・」
家継「白石、ワテは、確かにその何とか大将軍でおます。でも綱吉様、家光様のように御自分で
政務をとっておられた大将軍様とはちゃいます。、
城内にはお主や間部詮房(白石とともに家継を補佐した相模・厚木藩主)がおる。
外には、尾張様(徳川吉通)や紀州様(吉宗)が控えていなさるやろ。
次の大将軍候補には事欠きまへん。
多分、芥子粒のヨーな、ワテが今死んだとこで誰も困らんのや。
幕府の屋台骨はガタつかんのや。だから、父上様と、今!!遊びたいのや。
白石、何とか、してくれへんか・・・」
白石「わかり申した。そこまでお覚悟がお出来でありましたなら、
白石も上様の御意向を無視するわけにも参りますまい。いや、そればかりではなく、
いままで、上様のお気持ち、十分吟味せずむしろ軽んじて参ったやもしれませぬ。
ナニトゾおゆるしを。
とりあえず、今ただちに間部様と相談してまいりますゆえ、半刻ほどご猶予を
頂きたいのですが・・・」
家継「やり方は白石に任せたで。間部とうまいこと取り仕切ってや。」
白石「は。しばし、吉報を・・・」
・・・
間部「ソンナ、おぬし、もうOK出しちゃったのかい?」
白石「はー、上様の勢いと、人情につい負けまして・・・」
間部「だめじゃん(厚木領主)、ダメダシ出さんと。ただのガキンチョのわがままなんだから!!」
白石「ではこれから間部様が再度説得に参られますか?」
間部「そりゃ、むりってもんでしょ、白石さんが一回OK出したんだもの。」
白石「あ~あ、ずるいなー。」
間部「それよか、酒でも、(当時の酒は現在のアルコール濃度の60%程度)少し飲ませて、ちょっくら
危ない目にあわせてさぁ、<ほら上様、だからいわないこっちゃない、今後一切の外出は原則
禁じます>とやった方が納得いくでしょう。」
白石「間部様も案外えげつないですねー。」
間部「結局、白石さんは顔に似合わず優しいお方だとゆーことですな。
先代様の御位牌の運搬のコースは、原案通り白石さんのお考えに従いましょう。」
白石「拙者の案を取り上げていただき望外の喜びであります。
されど、拙者のこと、顔に似合わず優しいなどとは、今後、お捨て置きくださいませ。
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<6代・家宣、位牌移動、原案地図、原案作製:新井白石> ◎赤線が家宣公御位牌の
移動コース1里と四半里(約5km):港区増上寺→千代田区九段下
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●☆から☆に続いています。
●私はホッカイドー人で土地勘がないので、実際の御位牌ルートを地図に書き入れて
(赤線)みました。
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●<御位牌運搬コース:増上寺→九段下:約5km>
増上寺から北上、御成門を経てから内幸町交差点まで北上し左折。
霞が関交差点まで西へ直進、右折。
内堀通りに突き当ったら左折し北進。半蔵門、千鳥ヶ淵を通りすぎて
さらに北上すると丁字路の「九段上」交差点に至り、そこから右折し
わずか東進すると九段下にいたる。
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白石:緊張しますねー。何かあったら、切腹どころでないお家おとりつぶしでショーね。
間部:しかも連座制で一族全員死罪になるさ。
白石:それでは、これで上様の御承認を頂戴いたすということで・・・
・・・・
家継:九段下?名所というのは案外近くにあるもんやのー。
白石、あと、当日、な、周りの者も呼んでやってくれ。酒もかめへんで。
ただし、オナゴ衆はわずかでな。
白石:はは。
・・・・んでもって、当日・・・・
白石:間部様、上様、先代様の御位牌はずっとおひざの上ですな。
間部:そーぢゃな。なにせ、家宣様、いろんな意味で惜しまれてお隠れになったお方じゃ。
当然、息子様にも積もる話が、山ほどあろうぞ。
家継:こら、そこのふたり、そこで何悪いそーだんしておるねん。
ワテも、父上様もさびしゅうてならんやないか。
間部・白石:これは気がつきませんで・・・不調法いたしました・・・
家継:誰ぞ、酒をもて!
まず、普段から予の子守りをしとーてくれてる、ふたりにねぎらいの酒をふるもーて
やってや!!
間部・白石:上様、何をおっしゃいます。ことあらば、われら、上様の楯になるべきところ、酔うて、
御主君をお守りできなかったとあらば子子孫孫の不名誉となりましょー!!!
御家人:それはそうじゃ。上様、とくにその二人は上様の側用人として、常に、皆の模範で
なければならぬ。戸外での、上様がおなりの時は、なお、上様をお守りすべく心構えにて、
気を緩める飲酒などもってのほか・・・
(ほかにも同調者あり)
家継:マテマテ、人の運命などわかるもんやないで。今日はいつもワテのために東奔西走して
くれている間部、白石に酒でも飲んでノンビリしてもらおうと思ーてな、それもあっての
花見の会や。
サムライは、闘う時、おそわれるときはいつも自分の状態がいい時ばかりとは限らないや
ないか?この二人であらば酒を飲んでいようが、ワイのところのかけつけてくれる?
皆の者、そーは思わへんか??
酒を飲んで体が少しきかんくても、自分の雇い主、ろくでもないガキやけどな、を守ろうと
するのが真の武士道と違うやろか??
ワテは<ガキンチョ>で経験もないので間違ったことを言うてはるかもしれへん。
でもな、それで、酒がドーノ、これがドーノと何から何まで一方的に悪しざまに決めつける
狭量さ、 あきれてものも言えへんで!!
いま、間部・白石両名の飲酒を最初にとがめた者、10日間の蟄居閉門。
これに同調した者も5日間の蟄居閉門、申しつける。
両者の者たち、まずはこの場から立ち去れよ!!!」
・・・・
家継:なんや、残ったのはわれら3人と父上様だけじゃ!!
ははは、かえってすっきりしたやないか。三人で、将来を大いに語ろう!!!
間部:上様・・・
家継:なんやねん。
間部:ずーと上様のままでいてくだされ・・・
家継:そーやな、白石が毎年新名所で月見させてくれたらやな!!!
白石:御意・・・
家継:なんや?二人とも泣いておるんか??
白石:拙者は酒がほしくて目からよだれが・・
間部:あ、拙者もでございます。
最後は結局勧善懲悪の時代劇風の構成になってしまいました。
家継がチューネンとは言わずとも、20歳ころまで生きていたらどーなっていたのかなー・・・
とかんがえますと興味が尽きません。
また、大変意外ですが、間部詮房は「猿楽師」から大名になった、日本史上唯一の人間ということを
付記して「大フィクション与太話」のシメとさせていただきます。
ここまでお読みいただいた方、本当のありがとうございました。
カラスのクンセイ 拝
江戸幕府のショート・リリーバー達、
6代・家宣&7代・家継父子はいかにして月見を楽しんだか? 了