私をはじめとして、昭和31年生まれの5人が集まった。
何のためにって?
クラス会に決まってんぢゃないの!!
しかも、今日は、仲間のHが、どーせ、ジョー談だと思うけど
「ウルトラマン」に変身できるとかゆー、
「ベータカプセル」なるものを<ン十万円>だか出して買ってきたんだと!!
聞いた全員は、とーぜん
「ばかか?こいつ」
って顔になったさ。
Hにいわせると
「ホントーに変身できるんだって!!!」
実験済みだってゆーんだけどさ・・・
こいつ、学生時代から、大ほら吹きだからな・・・
ところで、今日集まったメンバーは、
私(カラス)、H、A、T、ソシテ紅一点のJ子だ。
車はというと、現在国産最強のパワートレーンを積んだN社のS。
しかし、そのN社のVQ38**エンジン(550PS,64.5kgm)であきたらず、
シリンダのポート研磨、ストローク/ボアアップを行ない、
オリジナル3.8L-V6,ツインターボから5.5Lにエンジン拡大、
出力を約1.31倍(720PS,84.5kgm)と完全にモンスター改造した奴がメンバーにいたんだ。
・・・
攻める場所は、●◆線沿線のS峠の旧旧道だ。
要するに、やばそうなことになったりしたら、交替でウルトラマンになりあって
車や、みんなをお助けするわけ。
運転はABC順で行こうぜ、ということになり、まずAが運転。
何でもハンドルを握ると、性格が変わるとの噂だが、
誰も一緒に乗ったことがないので、実体は知られていない。
実は今回のエンジン改造も彼が一人でやったらしい・・・
改造費は割り勘にしよう、という全員からの申し出も、
「おれの趣味だからいーよ。」
とのことだったのだが・・・
コトッとドアノブをひきストンとシートに腰掛ける・・・
長身でやや細面の彼の高貴な面立ちは、今日のメンバー中、
一番このゴツイ車のフンイキには似合わない・・・・
・・・と思った瞬間・・・・
「キタキタキターーーー!!!!ヒャッホーーーーーぃ」
大きく充血して見開かれた両眼、唇も先ほどとは一変して真っ赤になり
耳まで裂けたように大きくあいている。
真っ白く形よく整った、小ぶりな歯が完璧に並んだ歯列だけが、
先ほどの彼のノーブルな顔立ちのわずかな証であろうか・・・
そこから野獣のような声が彼の頭のてっぺんから出たと思った瞬間、
V-tecギアをマニュアルのように扱い、ローでタイヤを軋ませて発進させた後、
センカンドにギアチェンジし、レッドゾーン目一杯のオーバーレブまで引き上げ、
さらにサードに入れ替え、そのままドンドン加速していく・・・
さすがに他の連中は全員シートに背中がめり込むほどの圧力を感じ、
顔色は土気色。たまりかねたHがウルトラマンに変身。
Aの運転する車をヒョイと持ち上げ、
「おいA、みんな怖がっているぜ・・・そろそろ満足したかい?」
・・・・・しばらくすると、正気になって、しょげかえったAが、
「悪かった・・・・」
と後部座席に移る。
「ところで、これホントにウルトラマンになれるんだねー。」
私、K、は半ばばかにしたように言った。
「だから、いっただろ。本物だって、そして3分間!!注意してよ!!!」
「みんな知ってるさ。じゃ次お前、Hの運転。」
「お助けはJ子ちゃんか?頼むぜ。
ところで、峠まであとどれくらいなの?」
「かーなび、かーなび!!」
「使い方わからんから聞いてんだろ!!」
「上り勾配に差し掛かるまで、20分。そこからサミットまで45分。」
「おれ全部運転するンか?」
「怖いんだろ?」
「ないとはいえんが・・・
最近1時間以上運転したことがない。そこに変なもんが出てきたら、パニくる可能性がある。」
「そりゃー、もっともだ。ゆっくり目で走って、いけるとこまでいく。お助けをおれ(K)がやって、
次、おれが運転、J子ちゃんがお助けするか?」
「私が峠の頂上で、お助けなんて・・・私運転したい!!」
「ショーがない、じゃ2区間連続でおれがお助けするか?
ところで、峠の浮遊している連中は、スぺシウム光線とか効くんか?」
・・・・・・・・
「答えなしか、ま、約束だからやるしかないもな。H、いくぞ。」
Hが運転し始めて、30分ほどすると上りにさしかかった。
予定より10分ほどおそい。
奴は大分ゆっくり運転していたらしい・・・
「かなりごゆっくりじゃないか。」
「しかたないだろ。コースレバ、残りのおれの持ち時間内でサミットまで行く必要が無くなった。」
「やっぱりな。ところで、ホレ、おいでなすったぜ。」
フロントガラスにはそれを埋めつくさんばかりの大きさの顔?肉塊?が張り付いているし、
右の運転席の真横には付かず離れず一緒に走っている飛脚には顔がない。
その他横、リアのガラスにはどこそこから物の怪が飛んできては、手形を残していく。
やりたい放題だ。
「おい、カラス、おっぱらってきてくれよ。」
「ああ、そーだな。」
リアシートを見れば、最初あれだけ景気が良かったAが一番始めに気絶したそうだ。
私は、半信半疑で、ベータカプセルをいじくってみたら、いつの間にやら、ウルトラマンになっていた。
白装束どもは、特大のメジャーを持ってきて口々に
「40m、40m」といってどこかに飛び去っていった。
そういえば、ウルトラマンの、最大身長は、40mということを思い出していた。
「おい、何ボサッとしてんだ、早く始末してくれ。」
Hのきついチェックが入る。
私は例の恰好をしてみると、掌の小指側からひじの曲がり角あたりから、
あの光線が出てきて魑魅魍魎に熱光線を浴びせた。
燃え落ちて行く者、消えゆく者、爆発する者・・・・その他いろんな消え方をしていったが
ほぼ100%退治で来た。
3分たったので、Hの横に座る。
「おい、凄いじゃないか、ありがとう。」
「それはこっちのセリフだ、結構おもしろかった、でっかい、ゲーム機をやっている気分だった。
早速J子が来た。
やつら警戒してか、しばらく全く現れない・・・
そのうち、一体だけ出て来てすぐぱっと消えた。
「何よ今の?」
「偵察機見たいもんじゃないの?
次の瞬間わんさか来るぞ。」
というか言い終わらないうちに先程の何倍と言う数の妖怪がいきなり車を取り囲んだ。
「ねー、何とかしてよ。」
「任せとけ。・・・?あれ・・?」
「どした」
みな口々に聞いてくる。
「ねえってばぁ。車止められちゃって、どっかつれてかれてるよ、これ」
「いや、変身できないんだ。」
Hが、
「おれがやる。・・・あ?・・・どーしてだ・・・?」
「とにかくこいつら、さっきの仲間の敵討ちにきたんだ、おれたち覚悟を決めた方がいい。」
Aが言う。
「覚悟って・・・そんなのいやよ!!!!」
車は、近くにあった、小さな沼地のようなところに、じりじりと引き込まれてゆく。
そこには、
「本日、女人禁制」
と雨ざらしで文字が半ば読めなくなるほどの薄さになった、しかし達筆な文字でそう書かれた
いつの時代かも知れぬ木製の立て札があった。