講談「柳田の堪忍袋」と、映画「碁盤斬り」 | 講談師 一龍斎貞寿オフィシャルブログ 「じゅじゅブログ」

講談「柳田の堪忍袋」と、映画「碁盤斬り」

草彅剛さん主演、白石和彌監督の「碁盤斬り」を観てきました。

 

 

講談「柳田の堪忍袋(柳田角之進)」を基に、白石監督が初めて時代劇を手掛けられた、という作品。

 

(何を見ても「落語」と書かれているけれど、私は「講談が基」って書きますよー)

 

この映画化の話をはじめて聞いた時、

 

柳田?

令和の今、柳田?

 

ちょっとびっくりしました。

 

ご存じの方も多いと思いますが、

「柳田の堪忍袋」は、清廉潔白すぎる頑なな武士、柳田角之進(格之進)が、あらぬ嫌疑をかけられたことから事件が勃発。身の潔白を証明できない柳田が切腹しようとする、これを止めた娘が吉原に身を売って金を用意。後から柳田の疑いが晴れ、娘は見受けして、めでたしめでたし…(って、そんな単純な話じゃないけど)というお話です。

 

正直、この話は、辻褄の合わないことも多く、また、柳田の武士としてのプライドを守るために、切腹しようとしたり、娘を吉原に沈めたり…というのは、令和の時代、非常に共感を得にくいだろうな、と思っていたんですね。

 

どんなふうになるんだろう。

 

ドキドキしながら観に行ってきました。

 

☆☆☆

 

結論から言うと、

講談「柳田の堪忍袋」と、映画「碁盤斬り」は、違うお話だと思いました。

 

ベースが、柳田の堪忍袋ではあるのだけど、

白石監督が描きたいのは、柳田の堪忍袋の骨子とは違うかな、と。

 

あらすじなどに書かれている通り、映画には、講談にはない部分

「なぜ、柳田が浪人になったのか」

という、エピソード0のところが、かなりのボリュームで描かれています。

結果、映画には「敵討ち」がある。

娘の扱いも、文七元結的、かな。

そうなると、「柳田の堪忍袋」とは違うお話になるかな、と個人的には思いました。

 

講談と映画は別物として

とっても、面白かったです!

 

草薙さんの頑なさ。

「ああ、柳田ってこんな感じだったかも」

と思わせてくれました。

また、清原さんは武家の娘にしか見えない!

清らかで一途な感じがイメージぴったりでした。

でも、なにより素敵だったのは、國村隼さん。圧巻です。

前半、柳田と源兵衛が懇意になっていく様は、もう、震えるほど素敵でした。

 

講談の「柳田の堪忍袋」として見るのではなく、

映画の「碁盤斬り」として見るのが正解だと思います。

予備知識なく見る方が、多分、素直に楽しめると思います。

 

そして、映画を見た人が、

講談や落語の「柳田」に興味を持ってくれたらいいな、と、切に思います。

 

「武士」であることの、苦しさ。

でも、そうとしか生きられない、不器用さ。

 

「武士として生きることは、時に、死ぬよりもつらいこと」

 

これは、赤穂義士伝にも通じるものだと思っています。

 

今とは違う価値観かもしれないけれど、心を打つお話が沢山あります。

ひとりでも多くの方が、講談や落語に興味をもってくれますように。

 

そして、もうすでに、講談、落語好きな方は、

映画「碁盤斬り」…きっと、好きだと思います!

 

現在、公開中なので、ぜひ、ご覧になってみてください♪

國村隼さん、素敵ですよー✨