終末期になり、看取りのときが近づいてくると、高齢者の心身にはさまざまな変化が表れます。

 

まず、水分や食べ物が欲しくなくなり、食べることへの興味が薄れます。

身体が食べ物を受け付けなくなっている状態です。

 

口から物を食べられなくなったときにどうするかは難しい問題です。

 

人工的に栄養を補う方法には、胃ろう、腸ろう、経鼻経管栄養などの経管栄養のほか、中心静脈栄養、末梢点滴などがあります。

 

かつて病院では、こうした方法を終末期の高齢者に対して勧めることが少なくありませんでしたが、

最近の緩和医療の世界では、人工栄養や輸液は終末期の高齢者にとって、むしろ有害という認識が広まりつつあります。

 

欧米や豪州などでは「死が迫った高齢者に胃ろうを造設するのは虐待である」と考えられています。

消化吸収機能も落ちている高齢者に過剰な栄養や水分を与えれば、むくみや痰の増加による気道閉塞などを招き、かえって苦痛が大きくなるからです。

 

食事や水分をとらずにいると脱水傾向になりますが、このとき、脳内麻薬(βエンドルフィン)が増加して鎮痛鎮静作用が働き、本人は苦痛を感じない状態になると言われています。

 

本人が「胃ろうなどは希望しない」という意思表示をしていれば、私たちはそれを尊重します。

家族が判断しなければならない場合は、医師と相談しながら、本人の苦痛がより少ない方法を検討します。

 

水分や食事をとれない高齢者に対し、「何もしないで見ているのはつらい」という家族もいます。

そういう場合、私は点滴を1日500ml 程度入れるのは悪くないと考えています。

それくらいの量であれば、むくみなどの心配もなく、家族の心も穏やかになり、意味のあることだと思うからです。

 

 

 

 

 

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