「フランスの○○という街に住んでいるんです。知っていますか?」


もちろん、知っている。



ローマ時代の面影が色濃く残る街。


当時のパートナーと暮らしていた街。


わたしにとっては、因縁の場所だ


どうして、あんなことが起きてしまったのだろう。


—


彼の、低くて明るい声が、


闇に沈みかけた思考をそっと引き戻す


その街が好きではないんです。世界で一番


とは、言えなかった


なぜかと聞かれるのが、怖かった。


まだ生々しい傷に

いまは触れたくなかった


—

それにしても。


パリでもなく、

観光地でもないその街から


こんな場所で出逢うなんて


偶然にしては、出来すぎている。


—



スピリチュアルなど信じない。


運命など感じたこともない


すべては「自分の選択」


クリスチャンでありながら、

そう信じて生きてきた。




本当に、この日までは。