零度ガール | カラッポのマネキン

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ウソと本当のミックスジュース。おいしくどうぞ。

「最後にお願い。タワーに上りたいの」
 駅まできて、私は彼にお願いした。最後だから。断られるのが怖くて必死に彼の目を見た。目をそらしたら断られると思い込んで。
「最後ね」
 肩で大きく深呼吸をした。よかった。ここは途中まで買い物できるモールになっていて、途中から有料のタワーになっている。ショッピングゾーンを手をつないで歩く。あの帽子かわいいね。あのコートもいいね。はじゃぐ私に彼は細くほほえんだ。私ひとりで踊ってもいい。彼と居れるなら。
「私買う!」
 しぶしぶチケットを買われるのも、当然のようにおごってもらうのも、別々に買うのもイヤで、小走りにチケット売り場へ行った。二人用の入場券を買った。入り口を入って専用のエレベーターに乗る。加速する感覚に息を吐いた。
 展望台から見えたのは、白い世界。今日は雨で展望は望めない。そんなこと、ずっと外を歩いてきたのだから知っている。別れて欲しいと言われてから、それを無視してここまで歩いてきたのだから知っている。好きな人ができたんだろう。遠距離なんて、する意味あったのかな。最初から別れてればこんな気持ち知らずに済んだ。
 大きな窓の近くに座って、外をみていた。
 静かに落ちている雨。黙ってみていたら、ゆっくりと白く変化して落ちていった。白く丸い小玉。
 寒さで雨が雪に変わっていた。目の前で雨から雪に変わる世界を見ながら彼に言った。
「ね。私のこと好き?」
 彼は黙っていた。
「好きって言って?」
 涙が出てきて、口の中にはいった。しおっからい。
「言って」
 最後は強要になった。
 彼は口を開いた。それが大きな窓ガラスにうつってみえた。雪に変わりながら。
「好きだよ」
 ありがとう、もう何も言わないで。私は顔を見せず、そのまま下りのエレベーター乗り場まで行った。
 急いで外に出て、空を見上げた。雨が雪に変わっていた。これから、この場所では長い冬がはじまる。
 そんな簡単に変われない。雨から雪のようには。でもきっと。いつか。