深夜の宇宙船 | カラッポのマネキン

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ウソと本当のミックスジュース。おいしくどうぞ。

「狭いね」
「もうちょっと、あと5センチ広くても良いのにね」

 バスの後部座席。1人掛けなのか、2人掛けなのか、1.5人掛けなのか分からない座席に彼と二人で座った。左肩からひじ下まで触れる距離感で、さっき食べたカツオのたたきに乗ってた生ニンニクを思い出し、口をつぐんで鼻で息をした。足の下にタイヤがあるのか、座ると膝が胸の前まできた。
「体育座りみたいだね」
「三角座りって言いませんでした?」
 何それ知らない。笑って吐き出す息が臭くないように、下を向いて笑った。
 バスが動き出して体が左右に揺れる。外は真っ暗なのにバスの中は明るくて、なんだか広大な闇夜の宇宙に浮かぶ宇宙船に乗ってる気がして、ぼんやりした。
「空飛んでるみたいですね」
 彼は言った。「酔ってるよそれは」
 その言葉で私は酔いがさめた。あの人はそんなこと言わない。きっと「どこを飛んでるの?」って笑う。
 降りるバス停になって私はボタンを押した。
「結婚式の招待状、送りますから」
「祝儀はなし」
 なんでですかあと彼の顔を覗き込んだら、悔しいから、と目も見ず言われた。あはは、軽く笑って私は言った。
「酔ってますね、それは」
 バスを降りて闇夜に立った。
 宇宙船は彼を乗せて消えていった。

 きっと私の選んだ道は間違ってない。こっちが私の道だ