待ち合わせ当日、私は少し早めに到着して

ホテルのロビーで彼を待った。私はいつも彼との待ち合わせに510分遅れる事が多いので、

こんな風に彼を待つというのは初めてだったかもしれない。


お気に入りの、白いオーガンジーのスカートの裾が、ロビーのフラットな黒皮のベンチにふわっと広がっていた。

このスカートは1番好きなもので、トップスも後ろにファスナーがあるタイトなデザインの、

やっぱり1番気に入っているものだった。


かなり楽しみにしてきたのに、なかなか彼が現れない。脚を組み替えるたびにドレープの出方が変わる白いスカートの裾を眺めながら、結局キャンセルになっちゃったら、あんなに泣いたり浮かれたりして準備してきた私ってすごくバカみたいと思った。


いつも待ち合わせ時間の少し前に来ている彼が、

珍しく10分ちかく遅れて現れた。

車で来たらパーキングがわかりにくかったのだという。


フロントでチェックインして部屋に入る。

北欧調の色合いでシックにまとめられた内装、大きなベッド、淡いグレーの大きなソファ、社長のようなデスクとチェアが目に飛び込んできた。

なにより高層階なので、窓の外の景色もすごく綺麗だ。

「うわ〜 すごい」

「ねぇ 今日はゆっくりしましょう。今日は1日ずっとゆっくりできるんだ。」

「うわ〜すごい ミーティングぽい!」

「ミーティング?」

「うん、取材で使われる場所みたい」


「すごいな。50階はなかなかないよね」

「ロビーのテーブルも一枚板ですごくゴージャスでした」


「すごい、仕事みたいできっちりしてる」

「そう?仕事?」

「うん、デスクもチェアも立派でバリバリ仕事できそうじゃない?

冷静に話せそうじゃない?」


「じゃぁキスしよう?」

「ん


tefeさん昨日の夜どんな夢みました?」

「電車から降りそびれて挟まる夢をみました。」

「なんか暗示的だね」

「暗示的と思えば暗示的だし、そうじゃないと思えばそうじゃないし」


「どうする?あとで早めのランチにしてもいいし、部屋で食べることもできるんじゃない?」

「任せます。すごい、なんか清く正しいお友達って感じ」

「どこが?どこからどうみても不倫カップルだよ。

さっきだって、お控えはメールでいりませんか?いりませんね、みたいな感じだったよ?」

「え?」

「わかってるから、フロントの人は」

「あっ、そういうことですね、あは、、」

tefeさんがどう思っても、僕らはどっからどうみても不倫カップルで、それ以外のなにものでもないよ。ドロドロの不倫カップルですよ。」

「そっか

「でもこの間ずっとtefeさんがすっかり彼女って感じだった。」

「わたしは毎回、記憶を抹消してましたから

「僕にとっては彼女って感じだったよ。」

「そうですか

「どうせ向こうにも来ちゃうでしょ?」

「すごい自信ですね、おかしいの」

「うん。ねぇ、僕の赴任先にも来ちゃうでしょ?僕に会いに来ちゃうんでしょ?」


真面目な用事のついでですよ?」

「旧厚をあたためにね、昔の友人と」

「そう、ちゃんと名目もできたから。」


彼はシェードの調節を始めた。

「このボタンだと思うんだけどな。あとでお茶とかしたいですね、ラウンジの方でも。」


「おっ、上がったあがった。

向かいのビルで工事してるのがよく見えるね。」


また軽くキスをした。


「お〜すごいすごい」

高層ビルから向かいの高層ビルの工事風景を見る。

「俺の天下だぞ、っていう光景だね。これはいいなぁ」

「お腹すいてます?」

「少し」

「軽く食べに行ってもいいし。せっかくなんで満喫しましょうよ」

「うん、それにしてもすごい見晴らし。富士山とか見えそう」

綺麗な景色にテンションが上がった私は

思わずスマホで写真を撮った。

「あ、ガラスに写り込まないでくださいね。別にこの写真はSNSに載せたりしませんけど」

写真の構図をあれこれ工夫して、この景色を

なんとかより美しく撮ろうとした。


「キスしましょうよ。」

彼は私を大きな窓の真ん前で捕まえた。

「やだ」

「開放感あるところで。」

「かげにいきましょうよ、工事してるビルから見えると悪いから」

「白いシェードだけ下ろしちゃえばいいでしょ?」

「でも…」

「だって端っこにいっちゃったらなんのためのビューなの?」

「…ほんとに悪い人ですね」

「カップルみたい」

「こんなきちんとして綺麗な場所でキスとかするのはちょっと

ウィーンと白いレースのシェードだけおろす。

そして彼はキスしてきた。

鼻息が荒い。


明るい時間から高層階の明るい光の中でそんなことをするのは照れくさかった。

それに、こんなに素敵な場所で

いきなりセックスしてしまうのは

なんだかもったいなかった。


でも私たちは窓際のソファでキスを続けた。

「ふふっ 今日はここでずっとこうなっていたい。

1日中こうやってゆっくり過ごそうね」

うん」

「ずっと部屋で過ごす?」

「せっかくだから外も見たいです」

「そうしようか。でももう少しキスしよう?」


服は脱がない範囲でひとしきりいちゃいちゃしたあと、

2人で部屋の外に行くことにした。


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