「僕らはそれで結婚に失敗したってどういうこと?
私は失敗したけど、そっちは仲良くやってるじゃないですか。」
「いえ、僕も離婚寸前ですよ」
「え、だっていつもSNSに仲よさそうな写真載せてるじゃないですか。」
「まぁ、うわべはね。子どものためにさ。」
「そうですよ、お子さんのためにも応援してますから。結婚生活頑張ってください」
ちゃんと一線を引いた他人として、冷たくではないものの、少し他人行儀な感じで言った。
「いや、僕も本気で離婚したいんです。やっぱりパートナーはこっちの相性で選ぶべきだったって思う。」
「...そうなんですね。」
お互い無言になって、なんとなく気まずい雰囲気が流れる。
「う~ん...、私は、...。
...結婚って、前にも言ったと思うけど、
誰とフォークダンスを踊るか?くらいの位置づけなんです。
私はもう結婚とかしないし。」
「そうなんだろうけどさ」
隣に並んで、仰向けになって横になったまま、
またなんとなくお互い無言になった。
「わたし思うんですけど、よく芸術家とかがくっついたり離れたりして、世間からはまったくもう、みたいに言われるけど、ああいうのが自由で良いと思うんですよ。」
「というと?」
「別に結婚とかしなくても、一緒にいたければいればいいし、一緒にいたくなければいなきゃいいと思うんですよね。
一緒にいるにしても、ずっと一緒ってことじゃなくて、
いたい時だけいれば、それでいいんじゃないかな?って思います。」
「...そうかもね」
それは、彼と離れてから、夫に離婚届を書いてもらったり、新しい職場や幼い頃からの趣味のジャンルで新しい出会いがあったりしたことで、
心から思ったことだった。(男女関係に関わらず)
ーーー
でも、後になって、そうじゃなくて私はそもそも
そういう嗜好が強い人間だったことを思い出した。
ある時、彼との関係や彼に撮られた映像の事を考えていたら、突然フラッシュバックのように妊娠出産→結婚→就職→大学→高校と記憶が遡って、
ずっと忘れていた(?)、それとも抑圧していた(?)ことを思い出した。
それをいつか彼が知ったら、あまりの偶然の符号に
驚くか、喜ぶか、それとも少しはショックを受けるかもしれない。
私が彼に惹かれたり、
似たようなアクティビティで妙に意気投合したり
興奮したりしてしまうのには
やっぱり理由があったのだ。
ーーー
「私はもう、離婚できることになって自由になって本当に良かったです。」
「tefeさんはさ、結婚したのは子どもが欲しかっただけでしょ?だから必然の流れだったよね。」
「はい。そういう意味では目的も達成できたし、本当によかったです。それに、良かったと思えて良かった。」
「そうだね、僕も嬉しいよ。tefeさん、なんだかすっきりしてるもん。憑きものが落ちたみたい。」
「そうですか?」
「うん。あぁ、僕も離婚したい。」
「そうなんですね。なんで離婚したいんですか?」
彼は、奥さんに対する不満を話し始めた。
以前に聞いた内容と似たような種類の不満だった。
私の中で、最後に別れ話をしたと思っている時には
彼は“僕は離婚はしません”と言っていて
私も、本気で“それでよかった”と思ったのに、
また以前と同じような愚痴を並べている彼。
でも、育児中の若い夫婦なら誰でも感じるような
内容で、むしろ一緒に育児をしているからこそ
出てくるような不満のようにも聞こえて
実際は仲がいいんだろうなと思った。
※けっこう改まった感じで今後の話をした時の話
↓↓
以前だったら、奥さんに対する彼の話を
けっこう真剣に聞いていたが、
彼と”離れた”今は、
彼の言葉は私の心に残ることもなく、
なんとなく耳を通り過ぎていった。