セックスのあと、2人してまどろんで、
ベッドに並んで寝たままでひとしきり話をした。

少し休憩したあとシャワーを浴び、身支度をした。

ホテルを出る準備をしていると、

彼が突然「次は何駅に行くの?」と聞いてきた。

駅名を伝えると、

「そこは何の用事で行くんだっけ?」と聞いてきた。


彼とはずっと、お互い干渉し合わないスタイルを貫いてきていて、そのスタイルに私も慣れていたので、

彼に次の行き先を気にされたことは

意外でもあり嬉しくもあった。

 

部屋を出る直前、私は彼に言った。


「なんか、人類の長い歴史と、自分の数十年の人生を考えちゃった。…この年齢の時に、今の特殊な時期に当たるとは思いませんでした。」


「ん?」と不思議そうな顔をする彼。


「まだ体力があって動けて、ある程度自由な生活をするのに困らない年齢の時に、こういう感染症が広がってしまって社会が自粛していて、でも、そんな中でも私達がこうやって遭っているってことです。」


いささか思わせぶりで、まわりくどい表現になってしまった。


彼は曖昧に微笑んだ。


彼に意味が伝わったかどうかは分からない。


“コロナ禍でわたしたちは頻繁に会ってセックスしているね”、という事を、ただ言いたかっただけだ。


『コロナ禍なのに』『コロナ禍のおかげで』『コロナ禍のせいで』、どれも当てはまるし、どれも1つだけでは言い表しきれない。


そして、こういう時期に、私たちが2人とも、まだセックスができる年齢でありセックスができる肉体を持っていて幸いだったとしみじみ込み上げてきたから、

いま言わなきゃと思って発した言葉でもあった。


性的な快感ということだけではなく、

理屈抜きにひとつになりたいと思った相手と

一体感を味わえるから。


私は彼に説明しなかった。


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