あれはまだトロントに住んでた頃
近所に住む悪ガキが
「ハロウィンのパーティーがあるから一緒に行くか?」 って誘ってきた。
その頃は英語もまったく喋れなかったけど、そいつらも毎日しつこくつきまとう俺に、少しずつ仲間意識をもち初めていた。
「みんなでヒーローになろう。」
あっちのハロウィンは気合いが違う。
中には全身包帯だらけの人や、冬なのにボクサーのコスプレを選ぶ人もいたり、クオリティーの高さゆえ
町全体が異様になる。
CLUBの前に集合したら、みんなしっかりヒーロー。
バッドマン スーパーマン
チュンリー タートルズに
俺、スパイダーマン。
鬼寒いなか、一時間列に並んでようやく in da club三千人規模のCLUB。
半端ないスケール。
まずはドリンク。
乾杯して少しして、みんなでタバコを吸いに外のbigテントへ
移動した
のが
そもそもの間違いないだった。
沢山の人がたまるスモーキンエリア。盛り上がって、今日ヤバイね~とか言ってても、
実はよくわかってない。
誰かと話しても
続かせる英語力 なし。
わかるのはDJの音と、すれ違う奴の
「スパイダーマン!!」
だった。
よし。
それらしき事をしよう。
見上げればテントを照らす鉄塔。
何を思ったか
登った。
何を思ったか
「I'm spider man 」
って、 吠えた。
初めてだった。
あんな大きな歓声は。
でも次の瞬間
ばかでかいセキュリティが下から
「get down」
うわ、めっちゃ怒ってる
降りたらすぐ殴られて
つかまれて、
マスクをはがされ
30分前に並んでいた場所に追い出された。
一瞬の出来事だった。
視線が気になりとりあえず、マスクをかぶる。
荷物も靴も全部CLUBの中。
終わった。。
まさか、今来たばっかりであいつらが出てくるわけがない。
帰ろう。
あっ、財布もない。
すると後ろから、いきなり何かを投げつけられた。
「You did it brother」
「お前まじスゲーーよ」「ホーゥ!イエィ~!!」
って
目をきらきらさせながらあいつらが
帰ってきた。
めっちゃ胴上げされて
めっちゃハグされまくった。
いい年こいた奴らが ヒーロー戦隊の服を身にまとい、 抱き合った。
マスクの中は
鼻水と涙でぐじゃぐじゃだった。
そんなこんなで友情が深まり、そのストリートでクレイジーなJapaneseがいるって めっちゃ噂になった、
23の秋。
ハロウィンの思い出。
因みに次の年は
電柱に化けて
背が高すぎでCLUBに入れなかった。