多少お硬く、退屈な話し。
ギターの価格はそもそも何か?
解りやすそうで、解りにくい。
下は、10000円から、上は100倍はする。
世の中「暴利やなあ」みたく思える事も多々あるが、意外なほど、価格ができあがる過程を見ると、妥当性はあるもの。
大雑把に、レスポール的ギターの原価の構成をみてみると。
❶ボディ、ネックの木材。
❷ピックアップ。
❸ペグ/ブリッジ/テールピース
❹インレイ
❺パネル
❻エスカッション
❼電装
❽その他
❾部材の歩留まり、端材コスト
➓加工、組み付け、塗装
❶ボディ、ネックの木材
当然に、良い木材は高い。
市場原理からすれば、良い、木材には人気が集まる。となれば、需要が供給を上回る。
必然的に、高くなる。
ただし、単に希少なだけでも、同じ現象が起こる。まあ、希少なだけ、では需要が生まれないが。
当然に、安いギターには、数の多い木材が使われる。
さらに、大きなポイントは、回転、だ。
在庫の回転を早くしたいのは、どの業界のどのポジションでも同じ。
だから、格安ギターの場合、十分に乾いていない木材だったりする。
在庫を回転させないで木材を乾かす事もコストになる。
伐採者だろうが、加工業者だろうが、本来、直ぐに売れて換金できる在庫を、持ち続けることは、管理費、倉庫代、金利(本来なら売却されて換金できるものを、持ち続けることは、その仕入金額を寝かしている状態になる)、が掛かることになる。
ギターにふさわしい(基準は、よく知らないが)材は涸渇、価格高騰だと言う。
❷ピックアップ
たまに、「専用に開発された」みたいな表現がある。
開発、の定義。
既存のピックアップの部材を使える場合。
いわゆる、フツーのピックアップ。
この場合は、簡単に言えば、マグネットとワイヤー、が原価の大きな要素となるハズだが、恐らく、極端な原価差は出ないと思われる。
極端に高価なピックアップは、
⑴手巻き工賃
⑵音の開発費
の要素が大きいだろう。
手巻き工賃は、まんま、でひたすらワイヤーを手巻きする人件費。
時給1000円として、5時間掛かれば、それだけで5000円。コレは、コストで、あって、これに利益を乗せなければ、成立しない。
これは、単品の直接原価だが、更に大きいのが、音の開発費。
狙った音が出るまでの、試行錯誤。
何個も作り直したりして、コレだ!を作る。
単純に、その試行錯誤に、4カ月。一人が専属で取り掛かったとする。
人件費120万円、間接費、部材費10万円。合わせて、130万円とする。
これが、大量に作って売れる、のであれば良いが、損益分岐2000個を目標として設定すれば、130万円÷2000が、ピックアップ1つあたりの、開発費の償却分となる。
1つあたり、650円。
2000個以上売れれば、2001個以降は、650円は利益になるが、2000個以下ならば、残った数×650円が、まるまる、開発費の損、になる。
このリスクを避ける為には、例えば、1000個を損益分岐とすれば、1つあたり、1300円を原価に乗せなければならない。
すると、当然に、売価は高くなる。
売価が、高くなると、売れる数は減る。
結局、バランスが重要。
650円が1300円。
高いピックアップの差額としては、そんなもんか、と思うかも知れないが、ここには、利益は乗っていない。
製造した結果、1つあたり、4000円でできあがったとする。厳密には、2000個作る場合と、1000個作る場合では、コストが変わってくる。間接費(例えば、電気代や家賃など)、部材費、作る数が少ないほど、間違いなく、1つあたりのコストは上がる。
とりあえず、大雑把で根拠はないが、2000個で4000円、1000個なら4300円でできたとする。
1000個の場合は、4300円+1300円で、5600円。
2000個の場合は、4000円+650円で、4650円。
これを、問屋に、出荷。
利益なしには売れないわけで、例えば25%利益を得るためには、1000個の場合は、7500円くらい。
2000個の場合には、6200円。
問屋は、小売店に、同じく25%の利益で売るてすると、1000個の場合は、10000円。
2000個の場合は、8200円。
小売店は、40%の利益を乗せるとすれば、1000個の場合、16000円。
2000個の場合は、13000円。
当初、開発償却では650円しかなかった、差額が、店頭では、3000円の、差になる。
これが、全く新しいピックアップを作るとなると、開発費に加え、新しい金型の投資額の償却が必要になる。金型1つだって、数十万円掛かったりする。
よって、ピックアップは、専門メーカーに作ってもらい、そこから買う方が、安くつく。
自ら、一から作るとなると、とんでもない、コストになる。
上の、例では一人専属で4ヶ月としたが、3万円とか、4万円するようなピックアップは、もっと、開発に相当の期間が掛かり、かつ、その開発費の大きさから、販売数も少なくなるため、1つあたりの負担が極端に増える。
部材のコスト差は、あるだろうが、開発費の比率が最も高いだろう。
ピックアップに関しては、高い高いピックアップの価格には妥当性はあるだろうが、そもそも、その価格が自身にとって、価格に見合うだけの価値があるかどうか?が重要。
❸ペグ、ブリッジ、テールピース
おおよそ、特殊なものはない。
金属加工の工場で、作られている。
全くの、新しいパーツを作れば、ピックアップと、同じ理屈になる。
特に、金属パーツの場合、試作費が極端に高くなる。
手間、設計費、工作費が、嵩む。
このため、実績あるメーカーの部材を使うケースが多い。格安ギターの場合、実績あるメーカーの部材をコピーした、部材を使ったりする。
例えば、フロイドローズみたく、相当なイノヴェーションでもない限りは、新しいモノは出てこないだろう。
最高級ギターでも、格安ギターと驚くほどコストの違うパーツを使うことは余りないだろう。
❹インレイ
部材も様々。
価格も、割と差が出るが、まあ、極端ではない。
どちらかと言えば、工賃。
複雑な形状のインレイを使うと、工賃が跳ね上がる。
❺パネル
基本、樹脂板を切り抜くだけなんで、よほどに妙竹林な形状にしない限りは、然程の差はでない。
よほどに妙竹林にすれば、受け側のボディの木材も複雑になるため、ダブルで原価が、掛かる。
まあ、コレに、余り極端に拘るギターもないとは思うが。(拘っても余り意味がない)
❻エスカッション
極一般的な、部材、共有部材を使う場合が多い。
同じ樹脂パーツながら、パネル類と違い、新規でパーツを作るとなれば、金型が、必要になる。
設計費と金型費が、掛かり、これは高くつく。
仮に、金型を使わず、削り出すと、目ん玉飛び出すコストになる。
金型は数十万は掛かるし、設計費も掛かる。
パネルも、同様だが、特殊な色にしたりすると、原料となる樹脂チップ代もバカにならない。
小分けして売られているものでもないので、樹脂パーツの、色には、然程のバリエーションが、ない。
❼電装
組み込みの、ブースターとか、特殊なモノになると、開発費が掛かってくる。
コイルタップとか、シンプルなブースターとかは、既に市場に数多くでているため、極端なコストにはならない。
80年代に国産で、数社からでていた、ビッチコピーなと、オリジナルのBCリッチは、相当な開発費が掛かっていたハズだが、回路をコピーするだけ、ならば、市場では、大きなアドバンテージになっていた事になる。
パーツとしては、高品質なラインに、高品質なポッド、スイッチ、ジャック、など、高額品もあるが、まあ、数万円にはならない。
❽その他
ビスやら、ネジ類やら。
❾部材の歩留まり、端材コスト
ここは、価格に大きな影響が出る。
安いギターは、仕入た部材を無駄無く使う。
板から、なるべく無駄無く、端材を出さないようにカットして使う。
基本的に同じ形のモノを、同じ板から切り出した方が無駄な端材が出ない。
例えば、ネックであれば、ヘッド部分、本体部分をそれぞれ別の板から切り抜く、など。
スルーネックは、木材の取りが悪く、高くつく。
また、高級ギターの場合は、在庫の板の中から、さらに選別し、また、無駄を考えずに、よい部分をカットするため、更に高くつく。
板1枚から、ボディ2本分の部材が取れるところを、1本分しかとらなければ、ボディ材の価格は、倍、の計算になる。
➓加工、組み付け、塗装
正確な図面が、ひかれ、CNCルーターで、正確にカットされいれば、精度高くできる。
ただし、CNCルーターも、ピンキリで、高くなればなるほど、精度は上がるが、消耗品は高くなり、コンピュータ制御のプログラミングコスト、アプリケーションも、馬鹿高いものになる。
フジゲンが、高級車や家具の木のパネらル加工を受け負ったりしているのは、売上を確保するためだが、これらの設備投資やノウハウを、広く使う事で、商品ごとの投資償却負担を薄くしている。
フジゲンの加工評価が高いのは、これらの投資を行っているからであり、その投資やノウハウを広く活用しているから、より、コストパフォーマンスが高くなるのだろう。
一方、職人による加工が入る場合は、その職人のウデがコスト要素となる。
例えば、塗装の場合は、重ねる回数や、掛かる時間がコストになる。
組み付けの場合は、求める精度やそのための加工の工数が、コストになる。
これも、需要と供給の、関係で、匠な職人には、それなりの報酬を払う必要がある。払わないと、他社に引き抜かれたり、独立されたりする。
まあ、独立は、リスクが高いが、他社への引き抜きはあるだろう。
なので、職人技は、時間単価が、上がる。
これらの、積み上げが、ギターの価格を作っていく。
もちろん、最高級の木材、最高級のピックアップ、最高の職人を使ったら、可能性は高くなるが、確実に良いギターができるとも限らない。長年の、経験や、連携があって初めて、良いギターが、できるのだろう。
更に、音、が最終目的だとすれば、最高級のギターが、ユーザーの求めている音を、出せるものでもない。弾き易さ、音、については、価格に関わらず、各個人の好みに合わないと、全く価値がない。
細いネックの、シングルコイルが好みの人が、59年レスポールを買っても、ギターとしての目的は達成できないだろう。
超高級ギターの、価格には、そうなるべき妥当な理由はあると思うが、投資目的ではなく、弾いて音を出す機材だとすれば、価値、は結局、弾く人の好みに合うか否か?次第だと思う。
個人的な感覚だが、市販のギターの場合、メーカー規模にもよるが、ギブソン、フェンダーUSAなどを除き、一定のマスプロメーカーであれば、市販価格、60000円から80000円のレンジが、基本ラインになると感じる。
これ以下の価格のギターは、コストダウンの発想がベースになり、これ以上の価格のギターは、より良くする発想のような。
別に、ここでは、具体的なお勧めメーカーがある話ではないが、マスプロメーカーで、新品市販価格が10万円、程度の良い中古や、塗装キズアウトレットで、60000円以下のギターが、個人的には狙い目。