さいたま新都心のコクーン2にある島村楽器のピアノサロンに通い始めたのは2021年の夏でした。これまでジャズやクラシックから自分の好きなものを選んで10数曲練習を重ねてきました。ところが今年の3月中旬、2年半近くレッスンをつけてくれた先生が辞めてしまったのです。

 

1月最初のレッスンでその話を初めて聞いたとき、一瞬言葉を失いました。私のアレンジにさまざまなヒントやインスピレーションを与えてくれた先生だったからです。講師を辞めるに至った理由については、音楽に限らず芸術全般の普及促進に関わる仕事に携わりたいという抽象的なものでしたが、少なくとも、次の仕事が決まっている様子は感じられませんでした。島村楽器からは当初、後任選びを始めとするピアノサロン継続のための準備を至急進めます、という連絡がありました。そして3月下旬、4月に入社するインストラクターが後任として5月から稼働します、という正式案内が届きました。

 

テレビ東京の カンブリア宮殿 で島村楽器が取り上げられたのはそれから2週間ほど経った頃でした。その番組の中で、島村楽器では音楽教室の講師(インストラクター)は「正社員」だという説明がありました。てっきり講師はフリーランス、つまり個人事業主(委任契約者)だと思っていた私には意外な事実でした。そしてひょっとするとそれが、前の先生が辞めた要因のひとつでもあるのかなと思いました。正社員であれば収入を始めとして安定した身分が保証されますが、それと引き換えにフリーランスの持つ自由さが制限されます。あくまでもこれは私の勝手な想像ですが、「企画」好きだった先生からするとどこか窮屈さを感じていたのかもしれません。

 

実は、最後のレッスンがあった2月下旬から2ケ月間、私は全くピアノに触りませんでした。弾きたいという気持ちが湧かなかったのです。目標を失った感じでした。昨年末から始めた Cubase による楽曲制作という新たな活動に時間を割くようになったこともあるかもしれませんが、2月までは両者を並行して進めていたのですから、やはり休会になってレッスンがなくなったことが大きかったのだと思います。

 

ようやく今週からレッスンが再開されました。レッスンの最初に選んだのは、ジャズピアニストのジョージ・シアリングが作曲した Lullabye of Birdland(バードランドの子守歌) です。1952年に発表されたこの古いジャズ・ナンバーを、以前から使っている楽譜集のアレンジ譜通りに弾くことが当面の目標です。新しい先生は講師経験がないためか、雑談にはぎこちなさが感じられましたが、曲の中身に入ると指遣いや曲のメリハリ感など的確な指摘がありました。前の先生のときはジャズピアノのアレンジがレッスンに通う主たる目的でしたが、今やアレンジの主戦場は Cubase に移っているので、新しいピアノの先生のもとではクラシック曲中心というのもありかなと感じました。いずれにせよ、ピアノが再開出来て何よりでした。