動詞で泣くイギリス人、副詞で泣く日本人 を通してオノマトペの面白さを知ったのはかれこれ5年ほど前のことでしたが、今月の月例読書会の課題本を通してその意味と奥深さを改めて知ることになりました。

 

 

本書の159頁に「動詞枠づけ言語 verb-framed language」と「衛星枠づけ言語」についての説明があります。これは1990年代初頭にアメリカの言語学者レナード・タルミーによって提唱されたものだそうですが、その説明内容を対比表にまとめると次のようになります。

 

 

これを見ると、イギリス人が「動詞で泣く」のは、”衛星枠づけ言語” である英語ゆえに、「どのように」泣くかという "様態" を cry, weep, sob, blubber, whimper のように動詞自体で区別するのに対し、日本語では「ワーワー泣く」 「メソメソ泣く」 「クスンクスン泣く」 「オイオイ泣く」 「シクシク泣く」 のように副詞のオノマトペを使って泣く「様子」を表現するのは "動詞枠づけ言語” という特性によることがよく分かりました。

 

本書では、最新の言語学や脳科学などの研究成果にもとづいて、子供がことばを習得する上でのオノマトペの役割から、何故人間だけが言語を持つのかという問題に至るまで一貫した考え方(仮説)が提示されています。とりわけ、子供のことばが「具象」から「抽象」へ向かう橋渡し役をオノマトペが担っている、という指摘が印象的でした。「記号接地問題」「アブダクション推論」「対称性推論」といった耳慣れない用語が出て来る読みづらさはあるものの、ふんだんに用意されている具体例や各章ごとの「まとめ」によって何とか読み切ることができました。かなり気が早いですが、年末恒例の「2024年今年の一冊」に入ってくる本のような気がします。