1954年公開のシリーズ第1作目から数えて通算30作目の国産ゴジラ映画となる『ゴジラ-1.0』は色々と考えさせられる映画でした。なかでも、NHK朝ドラ『らんまん』では主人公の植物への一途な思いを "明るく" 演じた神木隆之介さんが本作で見せた "特攻" できなかった青年の ”笑顔なき" 演技が印象的でした。

 

第二次世界大戦末期の1945年。神木さん演じる敷島少尉が操縦するゼロ戦が「機体故障」を理由に大戸島に着陸するところから物語は始まります。その夜、島の伝説で「呉爾羅(ごじら)」と呼ばれる恐竜のような生物が大戸島を襲います。その翌年ビキニ環礁で行われた米軍による核実験によって「呉爾羅」が変異・巨大化した「ゴジラ」はやがて太平洋に出現し東京に向かいます。そこから日本人対ゴジラの戦いが始まる、というのが大まかなストーリーです。

 

その後ゴジラは東京に上陸して銀座などを壊滅状態に陥れるのですが、この「国難」に対して、駐留連合国軍はソ連軍を刺激する怖れがあるとして軍事行動を避け、自前の軍隊を持たない日本は民間人だけでゴジラと戦うことになります。そしてその戦いの最前線に立つのは先の大戦で生き残った人々でした。

 

たしかに、この映画の時代背景的には、まだ占領下にあって独立国家ではなかった日本には他になす術がなかったのでしょう。しかしながら、今の日本に目を転じてみても、ゴジラとは違う「国難」を前に、時の政府が全くの無力・無能ぶりを発揮する構図は何も変わっていないように私には思えました。一体「ゴジラ」とは何か …。

 

本作の山崎貴監督は、2019年に アルキメデスの大戦 を世に送り出した方でもあります。戦艦大和が米軍機の波状攻撃を受けて転覆、爆沈に至るまでを描く圧巻の冒頭シーンは今でも忘れられませんが、VFX を駆使して描かれるゴジラには、迫力のみならず神々しさすら感じられる瞬間がありました。「山川草木悉皆成仏 (さんせんそうもくしっかいじょうぶつ)」の考え方に馴染んでいる日本人ならではの印象かもしれませんが。