久々にリスト作りに精を出しました。2023年8月号文藝春秋の特集記事『代表的日本人100人』に触発されたのです。フォーマットを決めて粛々と記事内容を打ち込み、不足した情報は Wikipedia を参照して埋めていきました。その結果がこれです。

 

 

 

『代表的日本人(Representaive Men of Japan)』は1908年に出版された内村鑑三の主著です。「はしがき(Prefactory note to the revised edition)」によれば、1894年に上梓された彼の『日本及び日本人』の主要部分を誤りの訂正を含めて再版したものだとあります。そこにはこんな一節が見えます。

 

That I may still help to make the good qualities of my countrymen known to the outside world, ― the qualities other than blind loyalty and bloody patriotism usually attributed to us ― is the aim of this, I presume, my last attempt in a foreing lnguage.

 

我が同胞のよき特性 ― しばしば日本人に帰せられる盲目的忠誠や血塗られた愛国心とは別な特性 ― を外なる世界に伝える一助となること。それが本書の目的である。おそらく、私が外国語で本を出すのはこれが最後であろう。(稲盛和夫監訳)

 

混迷する日本及び世界の現状を前にして「日本人としてどう生きていくか」という問いに答えるため、その指針となるような人物、内村鑑三に倣えば "the good qualities of my countrymen(我が同胞のよき特性)" を持った人物を歴史の先達の中に見出そうというのがこの特集記事の趣旨です。

 

オリジナルの『代表的日本人』では内村鑑三が選んだ5人の歴史的人物 ― 西郷隆盛、上杉鷹山、中江藤樹、日蓮上人、二宮尊徳 ― が紹介されています。これに対し、文藝春秋版『代表的日本人100人』では、24名の有識者がそれぞれ選んだ5人の代表的日本人を、その選考理由と併せて紹介しています。計算上は 24×5=120名となるはずですが、同一人物が選ばれたり6名を選んだケ-スがあったりして、リストにすると最終的には110名になっていました。

 

選考基準や対象範囲は人様々ですが、それぞれの選者が自ら選んだ代表的日本人一人一人について語る思いにはどれも心に沁みわたるものがありました。中江丑吉(保坂正康選)、金子文子(梯久美子選)、竹内理三(本郷恵子選)、岡村勲(国谷裕子選)といった私が初めて知る人物があったり、紀貫之(坂東眞理子選)、庄司薫(御厨貴選)、坂本龍一(宮崎哲弥選)、徳川慶喜(鹿島茂・瀬戸欣哉選)など、これまで私が抱いていた人物イメージを刷新してくれる記述も数多くありました。

 

とりわけ興味深かったのは、田中優子さんと梯久美子さんが、予め男性中心のリストになることを予想し、意識して女性を選ばれたことです。全110名中、女性は23名で全体の2割強ですが、お二人が選んだ9名を除くと女性比率は14%〔(23-9)÷(110-9)〕に低下してしまいます。もしも選考基準のなかに、少なくとも1名は女性を入れるといった条件を課していたら、あるいは、24名中7名という選者の女性比率(29%)を50%にしていたら、歴史の中に埋もれていた女性の代表的日本人がもっと発掘されていたのかもしれません。

 

いずれにせよ、今回の特集記事を読みながらリストを作ったことで、歴史は具体的な人物を通して学ぶのが一番であると改めて感じました。そして、見識や経験は今回の選者の皆さんには遠く及ばないにしても、自分なりの代表的日本人を選んでみることは歴史観を磨くための良い訓練になる気がしました。