この4月に公立高校へ進学した生徒から英語のシラバスを見せてもらったのですが、定期試験毎にサブテキストとして Oxford Bookworms シリーズから1冊ずつ課題図書が指定されていました。いわゆる多読テキストです。試験に出すから読んでおくようにと、学校の授業では扱わず各自の自習に任されているとのことでした。

 

1学期の中間テスト用に指定されているのは "Skyjack!” というハイジャックを扱った、総語数 8,685、グレード Stage3 の物語です。英検2級に相当するレベルの英文ですが、高校受験の模擬テストでは英語の偏差値が常に70を超えていた彼にとっては格好の読み物のようです。多読が目的なので、あまり細部にこだわらず物語の流れや記事の内容を大掴みしながらどんどん読み進めることが大事です。とはいえ、ところどころ引っかかるところがあるようで、先日の授業では、次のような文章に違和感を覚えたと言っていました。

 

物語のなかで、とある国に向かう飛行機がハイジャックされ、深夜に同国の女性首相にその一報が入る場面です。生徒の疑問は、下線部の "I hope it is serious." が「望む(I hope)のであれば "深刻なものでなければいい(it isn't serious)” となるのではないのか」 というものでした。

 

 

たしかに、ここでの "serious" を 「重大な、深刻な」 という意味にとれば違和感を覚えるところです。しかしこの場合は "Are you really serious about this? : 本気で言っているの?” というときの "serious" で理解しないと、続く "If it isn't, " 以下の内容と辻褄が合いません。つまり、「(ハイジャックされたという知らせが)冗談でないといいけど。もし本当でなければ、取り返しのつかないことになるわよ」 といった感じです。日本語では "serious" を 「冗談ではない(=本気である)」 と否定的に捉えた方が自然な訳につながります。このような説明に生徒も納得してくれました。

 

往々にして生徒は、和訳した段階で "ひと仕事終えた" とばかり安心して、それで意味が通るのかどうかまでは踏み込まないものです。それを思うと、英文を日本語にしたときに "違和感を感じられる" のはひとつの進歩といえます。今回のように、和訳の意味が通らないとしたら、単語の意味をはき違えている可能性が高いわけで、それを自己修正(例えば、辞書で意味を調べるなど)して正しい理解につなげる習慣を身に着けられたら、彼の英語力は確実に向上すると思います。